『うそ八卦のプレスマン千本箱』
あるところに大層悋気な男がいた。外から帰ってくると、女房に、きょうは誰それが来ただろう、と、言い当てるので、女房はあきれて、うそ八卦と呼んでいた。
ちょうどそのころ、仙台のお城の蔵を破って、千両箱を八つと、千本プレスマン箱を二つ盗んだ者があった。幾ら調べても、手がかりがつかめないので、お殿様は、よく当たる八卦置きを探すように仰せになった。ある家来が、うそ八卦を知っていて、よく当たる八卦が御領内におります、と申し上げたので、うそ八卦は召し出されることになった。
いやも応もなく、殿様がお遣わしくださったお駕籠に乗せられて、お城まで行くことになった。峠を越えるところで、一休みすることになった。うそ八卦をお城に連れていくお侍の頭が、うそ八卦のそばにやってきて、お前は評判の八卦置きだそうだが、お前にかかれば、盗まれたものは見つかってしまうのだろう。実は、わけあって、わしは千両箱と千本プレスマン箱のありかを知っている。お殿様は、盗まれたものが全部戻らなくても、千両箱が戻れば諦めてくださるだろう。千本プレスマン箱は、一箱ずつ山分けにしよう。嫌だというなら、ここで命をとることにする、と言うので、うそ八卦は、いかにも八卦を置けば、千両箱のありかなどすぐにわかるが、面倒な手間が省けるならばありがたい。どこにあるのか、と尋ねると、お堀に沈めてある、と教えてくれた。
うそ八卦は、殿様の御前で、八卦を置くようなふりをして、千両箱は堀に沈めて隠してある。千本プレスマン箱は西国に運ばれてしまったから、探しても、もうない、と言ったが、それもそのはず、プレスマン千本箱は、侍の頭があらかじめ引き上げて隠しておいたのだ。お殿様は大層お喜びになり、五十両の紙包みをくだされた。山分けにしたプレスマン千本箱とを持って、家に戻って早速、女房に悋気を発揮したという。
教訓:プレスマン千本箱は、プレスマンが千本入った箱である。千両箱とは比べものにならないほど、軽い。




