綴られた想い 【月夜譚No.300】
手紙の文面に思わず噴き出した。
早朝で誰もいなくて良かった。少女は口元を押さえて、下駄箱の前にしゃがみ込んだ。
今日は日直の当番で、いつもより早く登校した。靴を履き替えようとして下駄箱の蓋を開けると、上履きの上に一通の封筒が置いてあった。多分、昨日の放課後に誰かが入れていったのだろう。
この状況は、例のあれだろうか。まさか自分の身にそんなことが起きるとは思っていなかったので、ドキドキしながら封を開ける。
その場で目を通したのだが、つい笑わずにはいられなかった。
それを書いた本人には悪いが、文章があまりにも遠回し過ぎて、下手なポエムみたいになっている。小論文の読解よりも難解で、何年か後には黒歴史になるだろう。
(――まあ、でも)
息を整えた少女は、改めて手紙に目を落とす。
真剣に書いたのだろうということは伝わってきた。頭を抱えながら慣れない文章を綴ろうとしている姿が目に浮かぶ。
最後に書かれた名前を指先でなぞると、自然と笑みが漏れた。
こんな形になるとは想像もしていなかったが、返事は決まっている。
少女は嬉しさに満ちた心を躍らせて、彼はどんな顔で登校してくるだろうと考えを巡らせた。