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ひだまりのねこの現実恋愛シリーズ

超絶美少女でめちゃくちゃモテる幼馴染が僕を好きすぎる


「ごちそうさま。忠太(ちゅうた)、そろそろ学校行こうぜ!!」


「今お弁当冷ましているからちょっと待ってて。あ、じゃあ美琴、悪いんだけどその間に食器軽く流しておいてくれると助かる」

「了解、私の分までいつも悪いな。忠太の作る弁当はマジで世界一だからな」


 パタパタと足音がして、僕の頭に茶色のショートボブが重なる。僕よりも背が高い美琴は、いつもこうやって僕の頭に顔を乗せるんだ。幼いころに飼っていた大型犬を思い出す。


「ちょ、美琴? そんなにくっ付いていたらやりにくいんだけど?」  

「いいじゃないか減るもんじゃないんだし。特等席から忠太がお弁当用意するのを見ていたいんだよ」


 う……そんな風に言われたら駄目とは言えない……っていうか食器洗い……いえ、何でもないです。

 

 

 僕と美琴は家が隣同士でいわゆる幼馴染なんだけど、両親同士も幼馴染でめちゃくちゃ仲が良い。


 どれぐらい仲が良いかというと、僕が生まれた時、両家の父親の名前、忠彦と光太から一文字取って、忠太って名付けたくらい。


 でもさ……それなら忠光(ただみつ)で良くない? なんだよ忠太(ちゅうた)って。ほぼネズミじゃん。忠光も将軍みたいだけど、将軍 VS ネズミなら将軍だよね?


 ちなみに美琴は、母親たちの美沙と琴美から一文字取ったんだってさ。


 

 美琴の両親がしばらく仕事で海外へ行くことになったので、その間僕の家で暮らすことになったんだけど、僕の両親も続けて海外へ行くことになってしまったから、結果的に今は同じ屋根の下、二人で暮らしているというわけだ。


 それは良いんだけど――――


『早く孫の顔が見たいわ~』


 両家の親たちはニマニマしながらそんなことを言ってくるし、美琴は美琴で、


『なあ忠太、何人欲しい?』


 なんて聞いてくるから困ってしまう。



 二人とも今年から地元の公立高校へ通っていて、当然毎朝一緒に登校することになるんだけど……



『うわあ……綺麗な人……』

『うわっめっちゃ可愛い……もしかしてアイドル?』


 行き交う人の視線は決まって美琴に釘付けになる。


 そう――――美琴は超絶美少女なのだ。


 子どもの頃から街を歩けばしょっちゅうスカウトに声をかけられるし、本人がその気ならトップアイドルにでもなれると思うくらい。本人はまるでその気が無いみたいだけど。


『あれ? 一緒にいるの……弟?』

『え? あ……本当だ、全然見えなかった』


 一方で僕はと言えば、気付いてもらえるだけマシというレベルの地味さで、背も低いし見た目も普通だし、スポーツも苦手だったりする。


 我ながら釣り合いが取れていないと思うけど、美琴はそんなこと気にもしないし、僕に対する好意を隠そうともしていない。


 だから、僕は皆に無視されたって、陰口を叩かれたって気にしないようにしているんだ。世界一幸せなんだから、それぐらい我慢しないと罰が当たるからね。




「おはよう!!」


 二人で教室に入るとクラスメイトの視線が集中する。


 最初の頃は大変だったんだよね……。今はだいぶ受け入れてくれたみたいで、直接何か言ってくる人はいなくなったけど。


 僕の席は教室の一番前。もちろん男子で一番背が低いからなんだけど。


 美琴は当たり前のように僕の隣の席に座るけど、そこは美琴の席じゃない。 


「美琴の席は一番後ろでしょ」

「そんな悲しいこと言うなよ。この席の主が来るまでだからさ、少しでも一緒にいたいんだ」


 ああ……今日は苦手な運動科目がある日だけど頑張れそうな気がする。


 でもさ、その席の主……美琴の後ろでずっと待ってるんだけどね……。




「白川美琴さんはいるかい?」


 休み時間、教室にやって来た男に女子だけではなく、男子も騒然とする。


 藤堂 修斗(とうどう しゅうと)、サッカー年代別日本代表にも選ばれているスーパー高校生だ。180センチを超える恵まれた体格と爽やかで甘いマスク。すでに海外クラブからのオファーも来ているらしく、マスコミの取材を受ける機会も多い、わが校きっての有名人の一人。


 そんな有名人が美琴に何の用だろう……?




「私が白川美琴だが?」


「初めまして、かな? 知っているとは思うけど、A組の藤堂 修斗だ。よろしく白川さん」

「……知らんな」


 素の返答に爽やかな笑顔が若干固まる藤堂君。


「あはは、そうだよな。く、クラス違うし」


 知らなかったことに地味にダメージを喰らっているみたいだね。僕なんて日常茶飯事なのに。


「それで何の用なんだ? 私は忙しいんだ」


 美琴は休み時間のほとんどを僕と過ごすことに使っている。家に帰ればいくらでも一緒にいられるのに……と思わなくもないけど。


「大事な話があるんだ。放課後時間を――――」

「断る。話があるなら今ここでしろ」 


 今まで断られたことがないのか、目を白黒させている藤堂君。


「わ、わかった……実はドイツのチームと契約することになったんだ。それで前から気になっていた君にパートナーになってほしいと思っている。出来れば一緒にドイツに――――」

「断る」


 クラスメイトから悲鳴が漏れる。藤堂君に誘われたことに対するものなのか、断ったことに対する悲鳴なのかはわからないけど。


「な、なんで? 自惚れているわけじゃないけど、俺、結構人気があるし、契約金だって億単位なんだぞ? 数年後にはもっと稼げるようになるし、日本代表のエース候補にだってなってる」


 だよね……普通に考えたらすごい話。


「え? だって私には忠太がいるから」

「チュータ? なんだそれペット?」

「あはは、違う、私の彼氏だ」


 バーンと指を差してくる美琴。


 そう言ってもらえるのはとっても嬉しいんだけど、巻き込まれると主に僕がダメージを受けるから!! う……藤堂君の視線がめっちゃ痛いんだけど。


「失礼ながら白川さんのような素敵な女性には俺の方が相応しいと思う。絶対に幸せに出来るし」


 くそっ、いつもそうだ……僕を見た男たちは勝ち誇ったように見下してくる。


「私を幸せに? 無理だな。ちなみに聞くが、兵頭、お前はサッカーを捨てることが出来るか?」

「兵頭じゃなくて……藤堂だ。俺がサッカーを? そんなこと出来るわけがないだろ?」


「そうだろうな。私にとって忠太はお前にとってのサッカー以上の存在、つまりそういうことだ」

「馬鹿な、そいつに何が出来るって言うんだ?」


 たしかに僕はサッカーも出来ないし、億なんてお金も稼げないけどさ……でも――――



「忠太は私を幸せにできる。リフティングは五回が最高だし、サッカーの才能も恵まれた体格も無いし、人気も名声も高額な収入だって無いけどな、お前と違って100%私を好きでいてくれるんだよ。その事実が私をこの上なく幸せにしてくれるんだ!!」


 美琴……全部その通りなんだけど、なぜか僕も被弾しているような気がするんだ。


「お、俺だって――――」

「すべてを持っているお前には絶対に無理だ。藤堂、お前は逆立ちしても忠太には絶対に勝てない。スタートラインですでに勝敗は決しているんだ諦めろ」


 僕は……勝ったのだろうか。あのスーパースターに?


「そうか……持っているからこそ得られないものもあるんだな。悔しいけど今回は諦める。忠太君、せいぜい逃げられないようにしっかりと掴まえておくんだな。キミには負けたけど、他の男が相手なら遠慮はしないからね」


 藤堂君はがっくりと項垂れて教室を出て行った。


 迷惑料だと言って、サッカーのペアチケットをくれたから、意外と良い奴なのかもしれない。




 帰り道、少し気になったから聞いてみる。


「ねえ、美琴、もしも僕と藤堂君の立場が逆だったら……」


 もし僕が持たざるものではなく、全てを持っていたら美琴は藤堂君を選ぶのだろうか……?


「なんだ、そんなこと気にしていたのか? 仮の話をしても仕方ないが、たとえどんな忠太でも私は忠太を選ぶよ」


 一片の曇りもない瞳が眩しいのは夏の日差しのせいかな。


 額に浮かぶ汗がまるで後光のようにキラキラと輝いて、僕の女神は優しく微笑みかける。

 


「それにだ、忠太は何も持っていないと思っているかもしれないが、私の気持ちを独占しているじゃないか。それだけでは足りないだろうか?」  

 

 何も持っていないと言ったのは美琴で、僕はそこまで思ってはいないんだけど、不安そうな表情を見せられてしまうと何も言えなくなってしまう。


「ううん、僕は世界で一番の幸せ者で、一番の財宝を手にした選ばれた男だと思っているよ」

「そ、そうか……ふふ、そうか……」


 噛み締めるように繰り返す美琴に愛しさが止まらない。


「でもさ美琴、僕にだって誰にも負けない強みがあるんだけどな……」

「そんなもの必要ないだろ? 忠太はそのままで世界最高なんだから」


 何を言い出すんだとキョトンとする美琴。わかるよその気持ち。美琴は誰と比べる必要なんてないし、そのままで最高だと僕も思うから。


「でもこれだけは譲れない。僕が美琴を想う気持ちは誰にも負けない、絶対に」

「忠太……私を萌え殺す気か?」


 しまった……美琴に変なスイッチが入ってしまったかもしれない。藤堂君のことがあったからちょっと言い過ぎたかも……。


 繋いでいた手から腕を組んでピッタリ密着してくる美琴。瞳が潤んで顔も赤い。


「なあ忠太、チューしようぜ」


 いつも思うんだけどさ、ただ忠太とチュー言いたいだけなんじゃないか美琴?


「家に帰ってからじゃ駄目なの? ここじゃ人目もあるし……」

「馬鹿野郎、人目があるから良いんじゃないか。忠太は私のものだって知らしめるんだ」


 マーキングですか美琴。そんなことしなくても誰も取ったりしないと思うんだけどな。


 内心そんなことを考えつつも、可愛い美琴のおねだりを断れるはずもなく……。



「忠太、家チューは別腹だからな?」


 そんな口を尖らせなくたってわかってますよ。




「晩御飯は何にしようか? 美琴の好きなモノ作るよ」

「カレーが良い!! 忠太、カレーにしようぜ」


 またカレーか……週三ペースなんだけどよく飽きないね?


「わかった。じゃあ夏野菜ゴロゴロ夏カレーにしようか」 

「良いね、あ、肉は鶏肉で」  


 了解、チキン夏野菜カレーね。



 家の近所のスーパーに寄って買い物をする。


「なあ忠太、これ買って行こうぜ、スタミナ付けないと……だろ?」


 意味深な笑みを浮かべる美琴。


 ウナギか……高いけどまあ買えないこともないか……


「よし、買うか……って、カレーはどうするんだよ?」

「チキン夏野菜カレーウナギ乗せで良いだろ。ふふ、今夜は朝まで寝かさないぞ」


 明日は週末で学校が休みだからな……体力付けておかないと朝まで持たない。











 今夜は徹夜で新作ゲームをやることになっているから!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] もう、ごちそうさまとしか言いようがない。 ナイス幼馴染みストーリー! (σ゜ω゜)σ
[良い点] いやもう、ゲームだけで済むわけないじゃないですか! ラブラブであまあまで最高でした! ごちそうさまでしたぁ〜。
[一言]  めっちゃラブラブ。♥️♥️  この二人、尊いです❗( ☆∀☆)
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