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初仕事はいかがですか?

カンジさんはお腹が空いて気が立っていてカチンときたようですが、私はまあまあとカンジさんをなだめ言いました。


「もちろんもちろんです。今、到着されたばかりですものね。出来上がるのを待っていますから大丈夫です」

「エレさん、優しいっすね」

「そ、そんなことは……できるまで、シーソーででも遊んでいましょう」

「わかったっす」


木製の遊具でギッタンバッタン遊びながら、小半時間ほど待ったでしょうか。その間、イケメン店員がこちらの様子をちらちら見ながら、キッチンカーの中で開店準備を着々と進めています。


ただ気になることが。


『アメリカンドック』だったはずのノボリが、『カラアゲ&モチモチポテト』に変わっているではありませんか。


「メニューが変わったんですね」


ですがOKです。唐揚げもポテトも大好物ウェルカムでございます。


「そこの二人! できたぞ!」


カンジさんにお支払いを任せて、私は商品を受け取ります。カップには山盛りの唐揚げとポテトが刺さっています。


「いただきます」

「ハラヘッタあぁ」


二人でベンチへと戻り、そして唐揚げをひとつ、頬張ります。はふはふ食べると、中からしみ出たじゅわあっと肉汁が口の中いっぱいに広がります。


「うんまっ」


思わず、叫んでしまいました。


私はキッチンカーへと視線を向けました。店員さんが相変わらずむすっとした顔でこちらをガン見しています。


(美味しいかどうか、お客さまの反応を見ているんだわ)


かく言う私もおもてなし係として、お客さまの反応は常に気にかけております。


私は、キッチンカーの方へと、親指をぐっと立て、グッジョブをしました。すると、イケメン店員さんも、その不機嫌そうな顔はそのままでも、同じようにグッジョブを返してくれました。


「美味しい」


隣を見ますと、カンジさんがうまいうまいと言いながら、ペロリと食べ終わっています。


私はそれを横目で見ながら、パクつきます。ポテトも原材料はただのジャガイモのはずなのにすごくモチモチしてて食べがいがあります。


「美味しいですね。カンジさん、奢っていただいたもので恐縮ですが、これも良かったらどうぞ」


私が差し出すと、カンジさんは目を輝かせて、「いいんっすか? わーい」と言い、ポテトを三本、ひょいっと取り上げました。


その時。

驚くことが起きました。


キッチンカーの店員さんが、大声で叫んだのです。


「おいっ! 自分のものは自分で買って食えよ! この愚民がっっ」


さっきからのイライラが爆発したのでしょうか。私たちがその激怒に呆気にとられていると、店員さんはくそっと言い捨て、窓をバシンと閉め、そして帰っていってしまったのです。


まだ、二人分しか売っていないのに、です。


「なんなんっすかね、あの態度」

「前回はそうでもなかったのに、今日はすこぶる機嫌が悪かったです」

「唐揚げは美味かったっすけど、店員が感じ悪うぅぅ」


私とカンジさんはその後、城下町に繰り出し、買い物を楽しんだ後、城へと戻りました。



さて。ここら辺で私のお仕事の話をしましょう。


おもてなし係を拝命し、速攻でお受けいたしました、数日後。


廊下でうろうろしていました私は、レオポルドさんに呼ばれ、執務室へとやってきました。


レオポルドさんの執務室は、リュミエルさまの私室から離れているので、執務室に足を運んでもリュミエルさまにお会いする機会はほとんどありません。


あちこち飛び回っている。聞いてはおりましたが、執事としてリュミエルさまにお付きであられるレオポルドさんにすら、なかなかお会いできずにおりました。


「初仕事です。心して掛かるように」

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