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おもてなし係とは?

「ナントカ殿下?」

「リュミエル殿下です。この国の第二王子だそうで」

「それがまだ俺は会ったことがなくて……一応、俺の雇用主だから、挨拶くらいはしとかねえとって思ってるんっすけどね」

「私もなにかお仕事をいただければ良いんですが。なーんも特技がないっていうか……こんなんじゃ私、追い出されますかね?」

「いやあ大丈夫じゃないっすかね。俺みたいな見習いでも雇ってもらえたんっすから」

「ではなにかお仕事をあつらえてもらえないか聞いてみますね」


お仕事中にお邪魔して、すみませんでしたと席を立ちます。そして中庭をぐるりと探索し、城へ戻りました。



リュミエルさまに拝謁できたのは、私がこちらへ飛ばされてから、一週間ほどのちのことでした。


お声がかかり、なにか失礼があったら手打ちかも、などとぶるぶる震えながら御前へと進みます。そして私はそこで正座をし、三つ指をつきながら頭を下げ、ご挨拶を申し上げました。


「この度は、なんの縁もゆかりもない私めを、こちらのお城に住まわせていただき、誠にありがとうございます。また、手厚い衣食のご配慮、大変に痛み入ります。殿下には感謝しかございません」


そして顔を上げました。


当のリュミエル殿下は、天井から垂れ下がった御簾の向こう。


「すまんが、今着替え中だから」


と、カーテンをシャッと引いておいでです。顔はハッキリ見えませんが、お優しい声で話されます。


「わけもわからないうちに外の世界から連れてこられ、大変難儀な思いをしたな。元の世界に戻る術が見つかるまで、ここで面倒をみてやる。だが、給金を出す以上、なにか役に立ってもらわねば困る。その方、名前は?」

「サワダ エレと申します」

「ではエレ、おまえはなにが得意なのだ?」

「はあ。これといって特にありませんで。すみません」

「前職はなにを?」

「OL……事務はもちろんですが、会社にお越しいただいたお客様にお茶を出したり、お茶菓子を用意したり」

「わかった。では、おまえをこのアレーラ王国、リオネルシア城のおもてなし係に任命する!」

「ははあっっ!」

謁見は無事に終了しました。けれど、おもてなし係とは?

「わからぬことがあれば、執事のレオポルドに聞くとよい」

その言葉の通りに、私は執事のレオポルドさんの下につくこととなりました。


レオポルドさんは、リュミエル付きの執事歴8年、26歳。背のすらっと高い、雇われスラリーマンです。内面からにじみ出る賢さと物腰の良さ。


もちろんステキな顔立ちです。リサさんが、その冷徹さがキュピーンと癖になるカッコ良さと仰っていました。


「はあ、まあ、そうですか」


遠巻きに見つめるには良いかもしれませんが、私から見れば直属の上司。冷徹との噂、本当であれば尻尾を巻いて逃げ出したいところです。


さっそくレオポルドさんにご挨拶に向かいました。


「よろしくエレ。以下同文」


以下同文? 初対面で? 冷徹というより予想の遥か上をゆく、相当なめんどくさがりやさんですね。


「どうぞご指導ご鞭撻のほど以下同文。よろしくお願いします」

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