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ここでぐっと堪えて帰らなければなりませんね?


「なぜだ! なぜ、リュミエルのもとに帰るのだ!」

「一世一代のお仕事が無事に終わりましたので……」

「この前の話はどうなった。考えてくれたのだろう?」

「もちろんでございます。ただ、王家のおもてなし係は私には荷が重すぎますゆえ」

「サラの歓迎会は大成功だった。素晴らしい宴だったと満足して帰っていった。しかも、滞在中もなにかと気を配ってくれて、とても居心地が良かったと喜んでおったのだぞ。エレは立派にそして有能に、仕事をやり遂げたのだというのに。もっと自分の実力を評価するが良い。だからこそ、この城で……」

「ありがたきお言葉でございますが、有能なお方は私以外にもいらっしゃいますので」

「そんなものはいない!」

「リュミエル殿下が、」

「リュミエルは許可するに決まっている。俺は国王だぞ! 弟リュミエルは首を縦に振るはずだ。だから、エレ! この城に留まってくれまいか」


荷物を入れたボストンバックを持つ手に力が入ります。


ここで、断れずにYESと言ってしまったら、今後どのような地獄を見ることになるのでしょうか。


アラハムさまがサラ王女と結婚し子が生まれ家族となり、お幸せにおなりになる。私はひとり、ここでその光景を羨ましく見つめながら朽ちていく。考えただけで、ぞっとしてしまいます。自分が不幸になることは目に見えていますから。


「私はリュミエルさまに拾っていただいた身でございますし、リオネルシア城には知り合いもおりますので」

「庭師のあの男か! カンジと言ったな!」


アラハムさまの口から出た名前に驚きはありましたものの、はい、と答えました。


すると、みるみるお顔の色がすぐれなくなっていったアラハムさまの口から驚くべき言葉が飛び出してきたのです。


「あの男が好きなのかっ? カンジ殿を愛しているのかっ?」


これはピンときました。それが理由であるならば、きっともう引き止めることもできずに、帰郷することにも許可をいただけるのではないかと、安易に考えてしまいました。


「は、はい。私の片想いですが……」


そう答えてしまったのです。


(カンジさん、ごめんなさい。少し利用させてください)


「そ、それで一刻も早く帰ろうと……していたわけなのか」


恐る恐るアラハムさまのお顔を見上げますと。

なんと唇をギリギリと歯で噛みしめているではありませんか。


太い眉は釣り上がり、眉間には深い皺が刻み込まれています。ふるふると頬は震え、握っていた拳も。


「あの男が……好きなのか……だから、キッチンカーに同乗してくれるという約束も、なにかしらの理由をつけて反故に……」


はっとしました。


「シートベルトとエアバックのことでございますね」

「エレ、ちょっと来てくれ」


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