表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/28

婚約者……ですか……?


アリサルビア城に到着し、お部屋に通された私はさっそく、仕事の準備に掛かります。


「エレとやら。ようお越しくださった。ワシはカナダじゃ。頼んだぞい」


国王の右腕の右腕の右腕、右手の小指第二関節ほどに値する人物であるカナダさんが、もの寂しげな雰囲気の頭頂部をものともせず、ペコリペコリと頭を下げてきました。


まあ! いわゆるおじさまと言われる年齢でも、褐色の肌だと一見、イケイケなサーファーに見まごうてしまいます。


「私は澤田絵令です。よろしくお願いします。さっそくですが、今回のおもてなし案件はどのようなものなのでしょうか?」

「それがだな……とても難しい依頼なんじゃ」

「と申しますと?」

「しっ! こちらへ」


カナダさんは辺りをキョロキョロと見回しながら、ちょいちょいとオイデオイデをします。廊下の片隅にじり寄っていき、そこでコソコソと話をし始めます。


「実は今回、この城に招待したのは……隣国、サンデルチ王国の第一王女なんじゃよ」

「えっっ!」


私は声を上げてしまいました。


「ななななんですって!」

「声を荒げるでない! どこの誰が聞いておるかわからんからの」

「すみません。でもまさか、王女さまがいらっしゃるとは……」

「王女といえど、陛下の幼なじみじゃ。まあ婚約者でもあるがの」


ドガンと衝撃が走りました。こここここ婚約者?


そうですか……


いえ、そうでしょうとも。


国王ともなれば、もちろん婚約者ぐらい、いらっしゃることでしょう。


「サラ王女(へぇ〜サラって言うんだあ、スカした名前!)をお迎えする宴のおもてなし(別にもてなさんでもいいんじゃね?)をお願いしたい。エレ、予算はどれだけかかっても(太っ腹だなおい!)良い。サラ王女が気持ちよーく(は?)帰っていただくように、手はずを整えてくれ(めんどくさっ)……なんだかんだ」

「は、はい」


カナダさんの言葉はもはや、私の内面の声により掻き消されてしまい耳に入ってこず、私は曖昧に頷くしかありませんでした。


気持ちがどんと落ち込んでしまったのです。

なんとか返事はしましたが、心が暗くなっていくのを感じます。


(婚約者いるんだったら、私にまで優しくしなくてもいいのに……)


部屋へと戻り、カーテンを開けて窓ガラスを開け放ちました。新鮮な空気を吸って、気分をリフレッシュしたくて。


「なんか身分差や諸事情わかってたけど……婚約者がいるなんてちょっとショックでした……」


窓からは広い中庭が見えます。もちろん、リオネルシア城にも広大でバラ園を含む、素敵な中庭はあるのですが、このアリサルビア城にはさらに大きな庭園がございます。


私がくぐった正門から、いったいどれほど馬車で進んだでしょうか。


このままでは日が暮れて朝になってしまいますね、この馬車は夜行ですか? とまで走って走って走りまくって、ようやく到着したお城は、やはり大きく立派で、国王が住まわれるに値する、豪華絢爛な建物でございました。


そんなお城の一室。


「はあ〜あ」


窓際で深くため息をついてしまいます。


サラ王女がいらっしゃるまで、あと二週間。あまり猶予はなく、色々と手配をしなければなりません。


「やる気が全然出ないです……(´・ω・`)」


私が窓際で、黄昏ておりますと、そこへ。


プップ〜とクラクション。

あのキッチンカーが現れました。庭園の砂利道をジャリジャリいわせながら、ゆっくりと入ってきます。


「アラハムさまのキッチンカーだわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ