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これは恋なのでしょうか?

「それはそうとエレ。私からの使いのダンケがおまえの仕事ぶりにいたく感動しておったぞ。よくできたおもてなしだったと、褒めておった!」

「ありがたき幸せにございます」

「いったいどのような魔法を使ったのだ? リュミエルも大満足しておったぞ」


下げていた頭を上げ、私は首を傾げてみせました。


「それがまだリュミエルさまにはお目通りが叶いませんで。ですが、リュミエルさまにもお褒めいただいたことは至極光栄にございます」


満足です。評価も上々です。


帰り際、私はこの際、かねてから機会があれば訊いてみようと思っていたことを申し上げました。


「国王陛下にお尋ねします。あのキッチンカーでございますが、シートベルトは付いておりませんね? なぜでしょうか?」

「? なんだそのシートベ……とやらは」

「やはりそうでしたか」


シートベルトを知らないあたり、こちらの国の道路交通法はアテにはならないようです。


「は? 免許? なんだそれは? 車校? 車検? このアレーラにそんなものはない。得体の知れないものをそのように矢継ぎ早に言うでない。混乱するではないか」


混乱してるのは私の方ですが、はい、わかりました。もちろん、エアバックも無搭載でしょう。

命一番。私は今後、安全基準を満たしていないキッチンカーに乗ることは避けねばなりません。


ではまたお会いできましたら、お声かけくださいとその場を辞したのでした。


✳︎


「エレ、覚悟を決めなさい」


レオポルドさんがいきなりそうのたもうたので、私はつられてうっかり握り拳を天へと突き上げるところでした。

が。


「はい? なんの話すか?」


最近、私はレオポルドさんにかなり心を開いており、話し言葉も少々フランクになってきております。ですがどうやらその件については大目に見てもらっているようです。


「国王陛下からのお達しだ。リオネルシア城だけでなく、国王陛下のおられるアリサルビア城のおもてなし係を請け負って欲しいとのこと」

「えええぇっ! それまた急すね。びっくらこいたーーー」

「エレ。言葉には気をつけなさい」

「これは大変失礼致しました」


フランクにし過ぎたようです。出る杭は打たれるものでございます。


「で? どのようにすれば良いんすかね?」

「アリサルビア城へと向かいなさい。詳細は国王陛下の右腕の側近リアッサさん……の右腕のサライさん……の右腕のカナダさんを尋ねてみるのだ」

「右腕の右腕すぎて、右腕と言えど、右手小指第二関節あたりのお方でしょうか? かしこまりまったで候!」


そして、私は意気揚々と身支度を整え、アリサルビア城へと向かったのでござる。


実は国王陛下直々の勅令と聞いて、胸がときめいております。なぜなら、アラハムさんにお会いできるから。


もちろんキッチンカーでお会いできるのも嬉しいのですが、さらにお側で仕事ができるなら身に余る光栄の至り。


どうしたのでしょうか。私、恋でもしてしまったのでしょうか?


ですが、お相手は一国の国王。身分違いも甚だしく、いっかいのOLには叶わない恋なのです。


自分の立場くらい理解しております。

ですから、アラハムさまを『推し』の域にとどめておきましょう。


私は芽生えそうになった恋心に、ぎゅむっとフタをしました。


「辛くなどありません……仕事をさくっと終わらせて、さっさと帰りましょう」


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