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視察だったん?

額に大きな手がそっと触れ、そのまま私の頭を撫でていき、髪を何度も何度もすきます。


「倒れた時に頭など打ってないと良いのだが……」


オロオロと心配する、アラハムさん。

いえ、そうでした。アラハムさんではございません。

彼は、このアレーラ王国の国王、アラハイラム国王陛下でございます。


アラハイラム→アラハム

(こんなにもわかりやすい省略なのに、私としたことが全然気がつかなかった……ってか安直すぎん?)


と、ツッコミたいのをぐぎぎっと我慢し、目を開けるタイミングを見計らっておりました。


それに。なんだかんだ言っても、時すでに遅し。


私はこれまで、アラハイラム国王陛下をただのキッチンカーの店員と思い込んで、なんだーかんだーやってしまっているのです。


(やばーいまじでやばーい……国王陛下に対して、金をくれ! ってな……詰んだわぁ)


けれど、国王陛下は金金金のことはなんも触れずに、しつこいくらい「エレ、エレ、どうか目を覚ましておくれ」と懇願してくるではないですか。


これはもう覚醒することやむなし、そう思い、目をそろっと開けました。


「エレ! 目を覚ましたか! どこか痛いところはないか? 俺が側にいながら、受け止めることができずにすまなかった」


心配顔に、きゅうんと垂れ耳が見えてきました。


「だだだ大丈夫です」


けれどまったく大丈夫ではございません。


「それよりも……国王陛下とは存じ上げずに、今までの失礼極まりない不遜な態度、どうか……どうか平にお許しください」


弱々しい感じで今にもガクって死にそうな感じの口調で言いました。


「なにを言う。エレはなに一つ悪いことなどしてはいない。逆におまえは、客が殺到して困っていた俺を助けてくれたではないか」


そこでひとつ疑問が湧いてきました。


(あのファンクラブの方々は、国王陛下のお顔を見たことがないのでしょうか? それとも国王陛下と知ってのファンクラブ入会なのでしょうか)


あまりに訳がわかりなさすぎて、考えがまとまりません。


私はよろよろと起き上がり、ベッドの上で平伏すると、

「国王陛下」

「アラハムでよい」

「ではアラハムさま。お教えください。なぜこの国のキングが、キッチンカーの経営を?」


回りくどい言い方は得意ではございません。ストレートに訊いてやりました。

すると。


「ああ。それはだな。アレーラ王国の民の様子を見ておるのだ。地方への視察の一貫だ」


ほっほーなるほどー。視察かあ。へー。視察ね。ちゃんと国王としてのお仕事はされているということですね?


「キッチンカーに乗ってあちこち行ってだな。その地方の売り上げによって民が飢えてはいないかどうかを確認しておるのだ。ひとつの目安になるからな」


へえー。おさすがです。でもどうでしょう? 一部のファンクラブが見境なく惜しみなく金を出しちゃってますからね。チュロスを20本も購入し、両腕に抱えて帰っていった、女性ファンの顔を思い浮かべます。


その視察、正解ですかね?


「だがそれも正体を隠した隠密行動ではあったが、エレにはバレてしまったな……このことはどうか内密にしてくれ。身バレすると動きにくくなるからな」


いやいやファンクラブのみなさんに追い回されている時点で、もうすでに動きにくくなってません?


「わっかりました」


一国の政治には疎い私です。目の前におられる国王がどのようにこのアレーラ王国を治めておいでなのか。一介のOL平民が知る由もございません。


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