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ドキドキするのはなぜでしょうか?


ゴミまみれになりながら、ここでなにをしているのかと言いますと、もちろん調理室にやってくるであろうアラハムさんをとっ捕まえて、ぎゃんぎゃん言わせ、真相を吐かせようという魂胆です。


王室御用達であれば、国王陛下の城のキッチンはもちろん、きっとこの城の調理室も使っているはず。


(少し臭いますが、真実を暴くには、うってつけの場所です。フタを2センチほど開ければ、)


フタをそっと頭で上に押します。できた隙間から覗き込みます。


「ふふん。ここなら誰にも見つからずに調理室の様子を……」


と、その時フタがカパッと開き、なにかが飛んできて頭に当たった衝撃と同時に、そこに立っているお方と、目が合いました。


人は驚きすぎてしまうと、フリーズするのですね。

私もそうですし、フタを開けた彼もまた。


「…………」

「…………」


ポイ捨てで頭に乗ったのはバナナの皮。その皮がスライムかヒトデのように顔へと垂れてきて、そしてスローモーションのように落ちていきます。


芳醇で南国フルーティーな香りに包まれながら、私ははっと我に返りました。


その間に向こうさまのフリーズも溶けたようで、ようやく。


「え、エレ、そこでなにをやっているのだ?」


私は焦りました。あなたを見張っていたのですよ、死んでくださいバキューンなどと影の組織のように、ニヒルに言うことなどできやしませんから。


「ああああアラハムさん……こんにちは。ご、ゴミ箱の掃除をしていたら、急にこのゴミ箱が暴れ出してですね。取っ組み合いのケンカになり、ちぎっては投げちぎっては投げしていたら、そのうちにがぶうっと飲み込まれてしまい……」

「そうか! ではそなたを助けねばなるまいっ」


ゴミ箱のフタをがばっと取り、やあっ! っと盛大に向こうへと放り投げました。


そして、私はぐいっと立たされて、お姫さま抱っこでゴミ箱から救い出されました。


「あ、アラハムさん、ああありがとうございます」


おかしなことでございます。嘘から出た斜め上の展開。


アラハムさんは、お顔を真っ赤にされながらも、私をぐっと強くお抱きになっておいでです。その太い腕、その力強さに、私の心臓はどどどっと駆け上がっていきました。


直ぐ近くには、アラハムさんの凛々しいお顔。ぽわわんな目で見ても、鼻はそびえるように高く、太い眉、そして長い睫毛に覆われた、エメラルドのように美しい翠の瞳。


もちろん気づいてはおりました。いえ、私が現在かなりゴミ臭いということではなくてですね、アラハムさんが国宝級のイケメンであるということです。

チュロスを共に売った仲間でございますから気がつかないはずがありません。


ですが、私にとってはそれは遠い存在。そう思っておりました。


それなのに! 大接近です! 胸が高鳴るのも仕方がないのでございます!


ドキドキと顔が火照って熱くなってきました。


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