8
向こうは犬さんを見ていたようだが
私が見ているのに気づいて
顔を下に向けてくれた
「私はフィシャナー、イルワナ国軍3番隊の隊長をしている。あなたは話せそうだろうか。怪我は無いか?」
低い目の声で、おそらく私のためにゆっくりと
話しかけてくれた。
「あ、ありがとうございます。私は山吹 舞と申します。
えっと、話せます、大丈夫です」
そう答えるとまたぎゅーっとされた事に気づく
ちらっと上を見ると犬さんが
「な、名乗りを、、ヤマブキマイト、やまぶきまいと、」
と呟いている。
あっ名前が、変わってる
「あの、ヤマブキ マイ、が名前です」
と言うと
「や、やまぶき、まっまい、、、殿」
バッサバッサバッサバッサ
?この音さっきからなんなんだろう
そう思って周りを見ようとすると
またぎゅっとされ上を向く
「私はアルベルト ふぁ...アルベルト レオトルドだ。」
目を見つめられながら名乗られる。
ああ、私ってば助けていただいた方の
お名前を聞いてもなかった
外国風な感じだし、後ろが家名かな?
「レオトルド、さ「アルベルトと呼んでくれ」」
チラッとみる。
ジッと見られてる。
「...あ、アルベルト、さん?」
バッサバッサバッサバッサ
わかったかもしれないこの音。
首を逸らして腕から抜け出るように下をみる。
正確に言うと彼の後ろら辺を。
と、ブンブンと見てるだけで風圧を感じる程
左右に振られている尻尾が、、、
やっぱり。
彼の尻尾が服や周りに当たる事で
音が鳴ってたみたいだ。
やっぱりルイに似ている。
ということは、顔はあまり変わってないように
見えるけれど、喜んでくれていると
思って大丈夫なのかな?
「アルベルト...お前まだ名乗ってもいなかったのか
一度彼女を下ろしたらどうだ。その感じだとまだ何も話していないだろう」
熊さんの声にそちらを向く
「嫌です!いや、隊長、彼女は足首を怪我しています。なので私は彼女を離しません。」
「「嫌です!」って〜っはっはっ、ひ〜。隊長、
とりあえずまだ平地まで距離があります。それまでは
怪我している彼女に移動は困難でしょう。このまま
アルベルトに彼女を運んでもらいましょう。」
「怪我をしているのか。出血などを伴わない今すぐの治療は必要ない程度なのだな?わかった。
ヤマブキ殿、すまないがこの地を抜けるまではこのまま
アルベルトと移動してくれ。
ここを抜けてから怪我を見て、話をしよう。」
3人で話した後、フィシャナーさんが話してくれた。
この後のこともとりあえず知れてありがたい。
移動するというか、抱えられているだけなので
申し訳ないが、、、
「わかりました。あの、アルベルトさん、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。」
バサバサバサバサバサバサバサバサッ
「ああ、あなたの事は離さない。安心して全て任せてくれ。しっかり掴まっていてくれると嬉しい」
「はっはい、お世話になります」
「...腕を首に回すと辛いだろうか。」
「いえ、大丈夫です。失礼しますね。っと、
邪魔になりませんか?」
「ああ、もう少しくっついてもらえると嬉しい」
「わかりました。」
腕を回したので、どちらかというと上半身は縦抱っこ
というか、腕に座らせてもらってるような状態だ。
さっきより顔も近くなって恥ずかしいので
言われた通り彼の胸と首元ら辺に顔を伏せるように
くっつく。
私のほうが背が低いので
もうほぼ全身くっついてしまうようで恥ずかしいが
移動するって言ってたし、おんぶしてる時は
くっついた方が負担がマシだと聞いたことがある。
お世話になる身としては恥ずかしがってる
場合ではないだろう。
「・・・・、他と合流して街まで戻るぞ。」
フィシャナーさんが声をかけ、また移動となった。