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45話 Raid Battle:Sun Eater&Moon Chaser2

後字報告、ありがとうございます! 大変助かります!


※書いたら出るの法則ってあるんだな、と思いました。

   †  †  †


 ――イクスプロイット・エネミー“双獣王(そうじゅうおう)(エイリアス)(よう):スコル”が、夕暮れに染まる西の地に現れた。


『――時は来た! 約条に従い、我らの力返してもらいに来た!』


 天をつんざく荒々しい女の声が、響き渡った。体長一〇メートルは下らない、白金色の狼は太陽に燃える真紅の双眸に怒りを宿し、続ける。


『“双獣王・影・陽:スコル”、日輪を喰らいてすべてを噛み砕かん! 我らが眷属よ! 戦いの時は来た! 叫べぃ! 我らはここにいると!』


   †  †  †


 スコルの言葉に、まず答えたのはセント・アンジェリーナから南。バーラム大森林に現れた漆黒の巨狼だ。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


《――偉業(イクスプロイット)ミッション『Raid Battle:Sun Eater&Moon Chaser』への移行確認》

《――イクスプロイット・エネミー“フェンリスウールヴ”召喚――成功》

《――アビリティ《フェンに棲まう巨狼(フェンリスウールヴ)》発動》

《――見よ、“鉄の森(イアールンヴィズ)”は心の臓の赤に濡れ、魔犬(ガルム)を産み落とす》


 ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぅ! とフェンリスウールヴを中心に赤錆色の森、“鉄の森”が拡大しバーラム大森林を飲み込んでいく。その赤錆色の森の中から溢れ出すのは、無尽蔵たるガルムの群れだ。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゥ!!』


 ガルムたちが、疾走する。広がり続ける故郷たる“鉄の森”から、喰い尽くさんと聖女の街へ――。


   †  †  †


 次はセント・アンジェリーナから北、半透明の蒼白き巨狼がその姿を現した。


『グルゥ……!』


《――偉業(イクスプロイット)ミッション『Raid Battle:Sun Eater&Moon Chaser』への移行確認》

《――イクスプロイット・エネミー“ヴァナルガンド”召喚――成功》

《――アビリティ《血河の狼精霊(ヴァナルガンド)》発動》

《――見よ、魔犬の魂を喰らい荒々しき精霊はより強大なる力を宿す》


 蒼白き巨狼、ヴァナルガンドの周囲に集まるのは黒い炎――この地で死んだガルムたちの魂だ。ガルムたちの魂は蒼白き輝きに溶けて消え、ヴァナルガンドを燃やす薪となる。

 蒼い軌跡を残し、ヴァナルガンドは疾走。その蒼白く燃える足跡を残し、ヴァナルガンドは同胞の想いを燃料に、命を燃やす――。


   †  †  †


 次は、南西――銀色の毛並みに胸元を血の赤に染めた巨狼が現れる。


『ガ、ハ――――!』


《――偉業(イクスプロイット)ミッション『Raid Battle:Sun Eater&Moon Chaser』への移行確認》

《――イクスプロイット・エネミー“マーナガルム”召喚――成功》

《――アビリティ《日と月を喰らう犬狼(マーナガルム)》発動》

《――見よ、今宵最強の魔犬は帰還を果たす。己に死を与えし者に、復讐を果たさんがために》


 ガチ、ガチ、とマーナガルムは歯を鳴らす。そこにあるのは、憎悪だ。今宵一晩、同族のために冥府から蘇りし最強の魔犬は、復讐を果たすためにその姿を溶けるようにかき消した。


   †  †  †


 次は、北東――フローズヴィトニルが、傍らの小さな影に頬を近づけた。


『いってくるね! レっさん!』

「……ああ」


《――偉業(イクスプロイット)ミッション『Raid Battle:Sun Eater&Moon Chaser』への移行確認》

《――エネミー“フローズヴィトニル”は拘束(ゲルギャ)をここに解かれる》

《――イクスプロイット・エネミー“フローズヴィトニル”へと進化――成功》

《――見よ、悪よりもっとも遠き幼き魂は、ひとつの約束を胸に戦場を駆ける!》


『いっくよ、オイラたち!!』

『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


 イクスプロイット・エネミーへと進化したフローズヴィトニルは、己の分身三体と共に駆け出した。それを見送り、“五柱の魔王”の一柱、序列第五位魔王“血塗れの頭巾(レッドフード)”は忌々しげに吐き捨てた。


「……もはやシステムメッセージさえ、お前を“悪”と認めてないじゃないか。チビ狼」


   †  †  †


 そのシステムメッセージは、一斉に《英雄(PC)》たちの元へ届いた。


(さい、あくだ……!)


 壬生黒百合(みぶ・くろゆり)の中で、坂野九郎(さかの・くろう)だ。集まった戦力にではない――自身の眼前に出現したHP(ヒット・ポイント)バーに、だ。


《――レイドボス:()()()()()()()――》


()()()()!?)


 だとしたら、最悪だ。今の連続したシステムメッセージの中で()()()()()()()()()()()()


(そういうギミックかよ!)


 黒百合は、既に駆け出していた。セント・アンジェリーナの街、その建物の上をパルクールして先を急ぐ。コメント欄は、完全に祭り状態だ。


■うっげええ!? イクスプロイット・エネミーのバーゲンセールかよ!?

■マーナガルムまで復活してんじゃねぇか! 冗談じゃねぇぞ!

■どこから手ぇ、つければいいんだよ!?

■つか、まずいって! ハティどこだよ!?

■ガルムの群れが、南から地響きと共に向かって来るんですけどぉ!

■本陣、本陣! 指示を頼む! 収拾がつかねぇ!


 一部、PCプレイヤーキャラクターもハティの存在に気づいた者がいる。優先順位の決定が必要だ、特にハティの発見は最重要課題になる。


(スコルとハティのHPバーが共用ってことは、片方だけ倒しても戦闘不能にならないギミックだろ、これ!?)


 敵側のレイドボス、最強戦力が不死身というのは笑える状況ではない。その上で他に四体のイクスプロイット・エネミーにも対応しなくてはならないのだ。


“黒狼”『ディアナ、ディアナ』

“銀魔”『はい、こちら本陣です。情報があるなら、お願いします』


 黒百合の秘匿回線に、落ち着いた声でディアナ・フォーチュンが受け答えする。その声に、黒百合も呼吸を整えた。自身の焦りを表に出さず、澄んだ声で対応してくれる――それだけで、こちらもいくらか冷静になれた。


“黒狼”『今から思考入力で、カンペを作る。それを読み上げて。大丈夫、こっちの戦力は充分に揃ってるから』


 黒百合は、思考する。敵側のシステムメッセージから敵の戦力の予想、それに対するこちら側の対抗手段の指示――それに、ひとつひとつディアナが相槌を入れてくれる。


“銀魔”『はい、はい……はい。わかりました。クロちゃんは?』

“黒狼”『『囮』になる』


 黒百合は、城壁を蹴る――そして、黒面蒼毛九尾こくめんそうもうきゅうび魔狼(まろう)”の蒼黒の狼頭を展開。蒼い刀身の大太刀へと乗り、南西へと飛び出し――!


『グ、ル、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「ん、そう来ると思った」


 その眼前に唐突に姿を現したマーナガルムに、黒百合は純白の打刀・百合花を抜いて迎え撃った。


「他のイクスプロイット・エネミーと戦っている時に、乱入されたらたまらない。ここで倒すよ、マーナガルム」


   †  †  †

エクシード・サーガ・オンラインのシステムメッセージさんは、とても空気を読んでくれるのです。


【双獣王側戦力】

アビリティ《フェンに棲まう巨狼(フェンリスウールヴ)》でガルムを無限召喚

アビリティ《血河の狼精霊(ヴァナルガンド)》でガルムが倒された分だけ強化

アビリティ《日と月を喰らう犬狼(マーナガルム)》で一晩だけ復活、かつて自分に《超過英雄譚(エクシード・サーガ)》を使用した相手に対して攻撃力強化

アビリティ《悪評高き狼(フローズヴィトニル)》でアイテム奪取&強化、遊撃で敵補給線に痛打


……シナジー、ひどいですね。



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― 新着の感想 ―
[一言] 緒戦の最優先事項はヴァナルガンド撃破、 次点でクエストクリア条件の片割れであるハティの発見かな? 本音で言えば防衛戦だから『面』と『数』を揃えた無限の兵力で攻めてくる フェンリスウールヴを最…
[一言] どれか一つでも対処ミスったら詰みますねこれ。
[一言] クソゲーを強いてくる系レイドバトル(白目) 対処出来ずに処理能力パンクしたらリカバリ不可って感じですなぁ……
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