表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/182

12話 私の夢の叶え方(前)

 壬生黒百合(みぶ・くろゆり)壬生白百合(みぶ・しろゆり)の〈聖女の墓所〉での配信から一週間後――。


■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!


 長剣と盾を装備した“聖女の守護者”“鉄壁”ゴドウィン・ウォッシュボーンとエレイン・ロセッティが足を止めて打ち合う。


 受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)――。


『これは、以前のクロと同じ状況でしょうか!? 互いに一歩も引かない打ち合いです!』


 “聖女の守護者”とエレインの戦いを、『実況』と書かれた名札をつけた白百合が声を張り上げる。その隣で伊達眼鏡をかけた、『解説』という名札をつけた黒百合が訂正した。


『正確には違う。わたしのは《受け流し(パリィ)》、相手の攻撃の出掛かりのタイミングに()()()ダメージそのものを無効化する。エレインの《ウエポン・ガード》と“聖女の守護者”の《シールド・ガード》はそれぞれ武器と盾で相手の攻撃を()()()ダメージを軽減するアーツ』

『あれ? そうなるとダメージが――』

『それは、見てればわかる』


 クイっと伊達眼鏡を指先で持ち上げ、無表情で黒百合が戦いに集中するように促す。それを受けて、ようやく白百合は事態が動いていたことに気づいた。


 受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(シールド・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)受け止め(ウエポン・ガード)――!


 ――異常な光景だった。一三〇センチ半ばのエレインと全長三メートルほどの騎士鎧、その打ち合いで圧倒的巨漢の方が先に体勢を崩し始めたのだ。


『え? どういうことです!? 解説のクロさん!』

『《ウエポン・ガード》と《シールド・ガード》。アーツの違いが出た。“聖女の守護者”の《シールド・ガード》は盾に設定された受け値分ダメージが軽減される。対してエレインの《ウエポン・ガード》は武器の攻撃力分ダメージを軽減する。だから純粋に盾の受け値を超えた上に敵の長剣以上の攻撃力が武器にあるから一方的に削り勝っただけで――』

『待って待って待って!? クロ早口過ぎない!? 表情と同期してないのか口も動いてないよ!?』

『解説が間に合わないから『ゾーン』を用いた思考入力に切り替えてる。良い子のみんなは字幕に切り替えてね』


■解説に『ゾーン』使い始めたぞ、この子!?

■VR使いこなしすぎぃ!?

■情報量でブン殴られるぅ!!


『種は簡単。エレインは《エンチャント・ウエポン》で武器の攻撃力を上昇させている。だから相手の受け値を超えるだけの威力と攻撃力を超えるだけの防御を併用できる。これはこの間の第一回突発トレント乱獲大会でエレインだけがトレントの極上の枝を五本獲得して魔法アーツが使用可能なバスタードソードを新調できたからこそ。エレインは極上の種も二個ドロップしていたからやはりハック&スラッシュで最強なのはリアルラックだという証明だと思うずるいよねずるいよアレだけ狩って極上の種出なかったんだけど――』

『ストップストップ、ダダ漏れになってるよ』


 白百合の静止に、ピタリと文字情報の洪水が止まる。それと同時にため息混じりに黒百合の口が動いた。


『――危ない。でも、そろそろ終わり』

『え?』


 黒百合の言葉と同時、エレインが大きく後方へ跳んだ。左足を前へ。純白のバスタードソードを視線の高さに、前のめりな刺突の構えを取った。


《――エクシード・サーガゲージが、満たされました》

《――“聖女の守護者”は、称号《英雄候補》並びに《英雄》を所持していない状態での通常攻撃では倒せません》

《――《超過英雄譚(エクシード・サーガ)英雄譚の一撃(サーガ・ストライク)》の使用条件が開放されました》

《――《超過英雄譚:英雄譚の一撃》は、アーツや通常攻撃に合わせ発動。単体対象に特大ダメージを与える《英雄》用アーツです》

《――《超過英雄譚:英雄譚の一撃》を使用した攻撃で、“聖女の守護者”のHP(ヒット・ポイント)を0にしましょう》


《――キミよ、過去の英雄譚を超え、新たな英雄譚を紡ぎたまえ》


「見てろよ、クロ! アタシの方がガツンって目立ってやる!」


 ヴン! と純白の魔法陣がエレインの剣の切っ先に出現――ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴン! とそれは瞬く間に剣身を覆い尽くした。


「アーツ《シャイン・セイバー》、アーツ《トラッシュ》――」


 巨大化する、光の剣。それを“聖女の守護者”は剣を頭上に構え、迎え撃つ!


『――アーツ《カウンター》』

「――《超過英雄譚:英雄譚の一撃》改め!」


 エレインは、()()()()。その場で繰り出す刺突が光の刺突となって――。


「コンボ:クルージーン・カサド・ヒャン!!」


 ――轟音は極めれば、無音に等しい。体格で大きく勝りながら圧倒的な間合いの差に敗れた“聖女の守護者”が、光の中で解れるようにかき消えていった。


「よし、次来い!」


■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ! エーレ! エーレ!

■エーレ……あ。


 ここからが本番、と会心の笑みでエレインがテンションを跳ね上げさせ、視聴者のエールがそれを突き上げる。だが、それは唐突に遮られることになった。


   †  †  †


《――リザルト》

《――チュートリアル:英雄の試練、クリア》

《――聖女の試練を乗り越えたPCプレイヤーキャラクターエレイン・ロセッティは称号:《英雄候補》を獲得》

《――偉業ポイントを一〇獲得》

《――アイテムドロップ判定。守護者の長剣、守護者の核、ナイトソウルを取得》

《――クリア報酬五〇〇サディールを獲得》

《――リザルト、終了》


   †  †  †


「…………」


■あー……ドンマイ。

■クロちゃんのアレ、本当に低確率引いたからなぁ。リアルラックだけじゃなくて前提条件のいくつかもクリアしてたっぽいし……。

■しゃーない、格好良かったよ、エレちゃん。


「やーだぁ!! アタシも(エイリアス)倒すぅ! 倒すのぉ!」


 やだやだやだ、と地団駄を踏む姿には、さきほどまでの凛々しさはまったくない。潤んだ目で駄々っ子になったエレインに、実況席から黒百合の声が届いた――チュートリアルが終わったからだ。


『次はディアナの番。戻っておいで、エレイン』

「うー! うー! うー!」

『……一分で戻って来れたら、ケーキ奢ってあげる』

「――本当!?」


 泣いたなんとやらが、というノリでエレインが走り出す。そこで画像が途切れると同時、実況席の横に一分間のカウントダウンが表示された。


■手慣れてるなぁ、クロちゃん。

『妹がいる、慣れたもの』

『……あたし、さすがにあんなじゃなかったよ?』


 秘匿回線で『後で家族会議ね』『断固拒否する』とやり取りする兄妹は、まだ視聴者には見えない画像に視線を落とす。

 そこには新調したばかりの武器を胸に、精神集中するディアナ・フォーチュンの姿が映っていた。


“白狼”:『で? 実際どうなの? いけそう?』

“黒狼”:『手伝える分はやり切ったさ。後はディアナさん自身の問題だ』

“白狼”:『そっか……なら信じるしかないね』

“黒狼”:『ああ』


   †  †  †


《――チュートリアル:英雄の試練、最後のチュートリアルとなります》

《単独で“聖女の守護者”と戦っていただきます》

《――英雄に至る試練を受けますか? Y/N》


「…………」


 ディアナは、一瞬だけ迷ってYを押した。入ってきたはずの扉が消え、祭壇とその中心に置かれた石棺――聖女の墓所が、そこにはあった。


 そして、音もなく現われたのは黒曜石の石像だ。まるで黒いローブに覆われたような石像は、長い杖を構えて告げた。


『――未来ノ英雄ヨ、ソノ力ヲ示セ』


《――チュートリアル:英雄の試練。“聖女の守護者”“闇払い”ヘンリエッタ・ラスキンとの戦闘を開始します》


「…………」


 呼吸を整え、ディアナは武器を手に取る。それに、視聴者たちのコメントがざわめいた。


■あれ? 長杖じゃない……?

短杖(ワンド)か? つーか、二本?


 そう、ディアナは両手に短杖を一本ずつ構えていた。それは見る者が見たら、こう思ったかもしれない――まるで、()()()()()()()、と。


「――行きます」


 深呼吸をひとつ、ディアナは決意と共に“聖女の守護者”へと挑んだ。

エレちゃんは格好可愛い枠。



気に入っていただけましたら、ブックマーク、下欄にある☆☆☆☆☆をタップして評価をお聞かせください! よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ