表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/182

閑話 ミニシナリオへの考察

※誤字修正、ありがとうございます!

   †  †  †


■これはさすがに無理じゃなぁ……

■エクシード・サーガ・オンラインは人類には早すぎた……?

■いやぁ、あれPV用に加工してたとは思ったけど引き伸ばしてたとは予想の斜め上ですよ


「はいはい。ま、これはあくまで一例だから。エクシード・サーガ・オンラインは、ここまで魔境じゃないから」


 壬生黒百合(みぶ・くろゆり)とヴラドの戦い、その一部始終の動画を流し終えパンパンと手を叩くのはモナルダである。現在、エクシード・サーガ・オンラインに参入したい、というバーチャルアイドルたちへのプライベートでの講習会を行なっている最中だった。


「クラン『ネクストライブステージ』に関してはオープンβから云々以前の話だから。特にクロとエレに関しては、eスポーツのプロ級だと思ってもらっていいわ。シロは――また違う意味での化け物だけど」


■あの白百合(しろゆり)って子が、本格的にVRFPSに進出したら勢力図塗り替わるって……

■クロって子がオールマイティなのに対して、シロって子は特化型だもんね。こっちに居てもらいたいわ……

■このゲームに関しては、魅せプ方面はよっぽどじゃないと駄目じゃなぁ


 唯一、ディアナ・フォーチュンは平凡なプレイスキルだが、それを補って余りある歌唱力がある。バーチャルアイドルとしては、ゲーム面でもアイドル面でも隙のない布陣と言えた――冷静にそれが分析できるあたり、講習を受けに来たバーチャルアイドルたちも場馴れしているが。


「ま、公式配信者がコレだから。魅せプ方面というより、成長方面で魅せていくのが無難だと思うわよ。プロのアタシとサイネリアでも張り合おうと思わないもの」


■確かに。そのあたりは質より量で、ワイワイやってみせるエンジョイ勢がいいかもね

■エクシード・サーガ・オンラインはハック&スラッシュゲーじゃからな。レアドロップを目的とした動画配信だけでも充分盛り上げられるのがいいのぅ。「レアドロが出るまで終われません」動画とか、このゲーム向きじゃろ?

■プロにはプロの、アイドルにはアイドルの魅せ方があるからそっちで勝負だね


 バーチャルアイドルは、古今東西ゲームの上手さだけがゲーム配信の面白さ(でき)を左右はしない。時にはプレイスキルの低さで視聴者を楽しませる、という方法もある。ようは視点の違いだ、少なくともこの場に集まったバーチャルアイドルたちはそれを理解していた。


■もうひとつ、エクシード・サーガ・オンラインは考察動画でもイケると思いますね

■考察動画? なに、エクシード・サーガ・オンラインの情報動画ってこと?

■そうです。都市伝説系とか歴史系とか、昔からあるじゃないですが? それと同じで世界観考察ができるなら世界観考察動画もイケるんじゃないかなって


「ふうん、確かに面白そうよね。世界観、結構練られてるし。例えば、今思いつくならどんなのがあるの?」


 モナルダが感心したように問う。なるほど、ゲーム考察系配信動画。それは切り口として面白い、と。


■例えば……そうですね。現在、非公式情報系サイトに挙げられたミニシナリオだけでも三桁をくだらない数が同時並行で動いてるんです。このミニシナリオの発生条件って、大きく分けるとふたつになるんです

■ふんふむ、ふたつというと?

■ひとつはPCプレイヤーキャラクターの行動によって起こる能動型とも言うべきミニシナリオになります。ほら、モナルダさんが享楽都市オーレウムのカジノで借金作ったじゃないですか?


「アア、ソンナコトモアッタワネ」


■動画配信したじゃろうに、往生際が悪いの

■アレは見事だったわ……人間ってあそこまでプライド捨てると借金しても怖くないのね……

■話を元に戻しますよ―。借金を作ったモナルダさん、装備一式も差し押さえられて闘技場でエネミーと戦わされたじゃないですか。あれって実はカジノで借金を作るミニシナリオでしか戦えないエネミーばかりなんです


 スロットにハマって莫大な借金をこさえたモナルダは、結局借金返済ミニシナリオのフラグを達成、レアエネミーと戦い確定ドロップのレアアイテムの入手に成功している――そう考えれば、借金というマイナスのフラグを踏まないと入手できないPCの行動結果による能動的なミニシナリオと言える訳で。

 これは例えば、狩人ハーンを助けることに成功したおかげでマーナガルムや大嶽丸(おおたけまる)と戦うミニシナリオになったのと同じ流れだ。


■もうひとつが世界観やNPCノンプレイヤーキャラクターの行動によって自動的に起こる受動型のミニシナリオになります。今、神聖都市アルバで行われている高位吸血鬼ヴラドが聖女を狙うミニシナリオがそれに当たります

■ふむふむ。受動型はエクシード・サーガ・オンラインの歴史、世界設定を学んで紐解くと確かに事前に把握できそうじゃな


 この能動型と受動型のミニシナリオにとって大きな差は、発生タイミングをコントロールできるか否か、となる。


■能動型の場合、発生させるタイミングのコントロールは簡単ですね。起こるような選択や行動はしない、それだけで起きませんから。モナルダさんもカジノで借金をこさえなければ大丈夫です


「もう終わったの! 次はないのよ、勝つんだから!」


■あるな

■ありますよねぇ

■あるじゃろ

■うちの『姉』、自分のリアルラックの低さ知らないんです……六面体ふたつの時、出目の平均値、知ってます?


 知ってるわよ、失礼ね。五でしょう? とモナルダはサイネリアのコメントにプンプンと怒る。総員、スルーした。


■対して、受動型はほぼ自動で始まってしまいます。それまでにフラグを建てて関わっておくか、開始後に加われるフラグがあるかで大きく違うでしょう

■今回のヴラドだと、聖女と謁見することじゃろう?

■そうなりますね、受動型であるため参加条件はかなり緩めに組んでいるはずです


 能動型の場合、フラグを建てたほんの数名――最悪ひとりでもいい。あくまでミニシナリオ、本筋のシナリオではないという言い訳があるしよほどメインに関わらない限り、二度と受けられないというものでもなく、繰り返し他の者も受注可能なものが多い。


■今回のヴラドの者は、このまったくの逆です。よほどメインに関わっているからか一回しか起きない。だから、条件が緩いんですね

■メタ的な視点からによる推理だね、好みが分かれるよ?

■そこはあくまでメタ目線は隠して世界観側からアプローチすればいいかと――


 ならば、今回の場合はどうだろうか? ヴラド――かの“夜の国ラント・ディア・ナハト”で名を残す伝説の将。その消滅以来、初めて歴史の表舞台に戻ってきた高位吸血鬼。


■なにか、があるはずです。今までの能動型ミニシナリオと違い、受動型ミニシナリオの典型ですから。()()()()()()()()()()()()()()()、そこに世界観的設定的目的があるはずなんです


 その意見にモナルダは、納得を得る。確かに面白いアプローチよね、と。


「歴史を題材にした物語の醍醐味よね。同時期に起きた、まったく違うはずの点と点、それを想像という線で結ぶ、と」


 そして、これがエクシード・サーガ・オンラインというVRMMORPGの場合、攻略情報にもなる……うん、これは確かに面白い試みだと思う。


「ねぇ、それを試しに今回やってみる気ない?」

■ヴラド戦に参加するってことですか?

「ええ。公式配信者が動いてる案件だもの、世間の注目度は低くないわ。それでそれなりの『再生数()』が取れるならそれをメインでやれる子も出るはずでしょ?」


 隙間産業、ブルーオーシャンは多ければ多いほどいい。重要なのは求める視聴者がいるかどうか、だ。


「腕に覚えがある子なら、その検証動画を確かめてみた、とかもできるもの。いんじゃない――まずは、小規模で動いてみましょう」


 それがクラン《百花繚乱》の初陣――これが後に、エクシード・サーガ・オンラインにひとつの『流れ』を生み出すことを、彼女たちはまだ知らない。


   †  †  †

自分、歴史ものや都市伝説系のゆっくり動画も大好きな派です。



気に入っていただけましたら、ブックマーク、下欄にある☆☆☆☆☆をタップして評価をお聞かせください! よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヴラド氏のイケメン具合というか生き様に百花繚乱全員がどハマりしてファンクラブ化したら草が生えるが……まあ無いか 隙間産業は狙っていかないといけませんよなー。ライブホースアイスクープ業界故に…
[一言] そう。ここは一つの世界。 だからそれぞれの行動にも、何かの意味がある。 そこがわかるとは将来が楽しみな子たちですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ