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64話 こんなに美味しいものは生まれて初めてです……

 ネネコとの主従契約を無事に終えた。

 さて、次はどうしようか。


 まずは、ネネコの身だしなみを整えるところから始めるか。

 今はオンボロの服を着ているだけだし。

 俺はそう思ったが……。


 ぐう~。

 腹の音が聞こえた。


「し、失礼しました……」


 ネネコが顔を真っ赤にする。


「ふむ。腹が減っているのか?」


「は、はい……。すみません……」


「そうか。ならば、飯にするか」


「え?」


「行くぞ」


「は、はい!」


 ネネコは元気よく返事をした。

 俺は露店で串焼き肉を買ってやる。

 以前、レオナたちに買ってやった串焼き肉だ。

 彼女たちの現況もそのうち確認するつもりだが、今はネネコの件だ。


「ほら、食いな」


「よ、よろしいのですか?」


「遠慮することはない。腹が減っているのであれば、好きなだけ食うがいい」


「しかし、アタシは奴隷です……。そんな上等な肉をいただくわけには……」


 上等?

 そこらの露店で買っただけの肉だぞ。

 味は悪くないのだが、高級肉というわけではない。

 奴隷のネネコは、これまでろくな食事を与えられていなかったようだな。


「気にするな。それよりも、早く食べろ。冷めるだろう?」


「は、はい。いただきます! わぁ……」


 ネネコはその小さな口で精一杯、齧り付く。


「美味いか?」


「はい……とても……こんなに美味しいものは生まれて初めてです……ぐすっ」


「泣くほどうまいのか?」


「はいっ……本当に……ありがとうございます……ぐずん」


「そうか。それは良かった」


「……はい」


 その後、ネネコは泣きながら夢中でその肉を食べ続けた。

 俺もいっしょに食べる。


「ふう……。満腹だ」


「ありがとうございました。この世のものとは思えないすばらしい味でした」


 ネネコは大げさだな。


「もういいのか?」


「はい。たくさんいただきました」


 と言いつつも、彼女はまた別の露店を見ている。

 彼女の視線の先にあるのは……。


「ああ、そうか。飲み物を忘れていたな。すまない」


「いえっ。別に……」


「少し待っていてくれ。すぐに戻ってくる」


 俺は再び露店に向かう。

 そこで果実水を2つ購入してから、ネネコのもとに戻ってきた。


 ……むっ。

 何やら酔っぱらいが彼女に絡んでいる。

 少し目を離しただけでこれとは。


「ひっく。うぃー。獣風情が、こんな大通りで何してやがんだぁ?」


「ひ……。す、すみません」


 ネネコがペコペコと頭を下げる。


「おめぇみてえな獣臭え奴がいると、みんなが迷惑なんだよぉ。獣は路地裏で這いつくばっているのがお似合いだぜぇ」


 酔っぱらいはそう言って、ネネコを足蹴にしようとする。


「そこまでだ」


「あん? なんだてめえ……」


 男が振り返りつつそう言うが、その言葉は途中までしか出なかった。

 なぜなら、俺が男の目の前にパンチを繰り出したからだ。

 寸止めだが、そこそこの迫力はあったと思う。


「俺の奴隷が粗相でもしたか? 文句があるなら俺が聞こう」


 ネネコを奴隷として酷使するつもりはない。

 しかし、対外的には奴隷として扱っておいた方が無難だろう。

 社会の構造や価値観を変えるのは大変な労力を伴う。


 俺は最強を目指すので忙しいのだ。

 社会活動に時間を割いている暇はない。

 まあ、戦闘だけなら喜んで首を突っ込むがな


「あ……。い、いえ……」


 男は酔いが一気に醒めたようで、青ざめている。


「どうした? 文句があるのかと聞いているのだ」


 俺は拳を引っ込め、代わりに男の首根っこを掴む。


「ありません……。その子は何もしていません……。すみませんでした……」


「ふん。分かったのならば、さっさと消えろ」


 俺は男を無造作に投げ捨てる。


「は、はいい!!」


 男は一目散に逃げていった。

 やれやれ。

 この国の獣人差別はなかなか深刻なようだな。

 どうしたものか。

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