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22話 採取を終えて

 フィーナの薬草採取に同行した。

 無事に薬草採取を終え、ミドルボア3匹というお土産つきで村に帰ってきた。

 フィーナの父ダインが出迎えてくれる。


「フィーナ、無事に薬草は採取できたようだな」

「うん。これを見てよ。リキヤさんのおかげで、安心してたくさん採取できたよ」


 フィーナが袋いっぱいの薬草を見せて、そう言う。


「それはよかった。これでお母さんの病状も、本格的に落ち着きそうだな。……ところで、リキヤ君。そのミドルボアはいったい?」


 ダインが俺のほうを見て、そう言う。


「ん? ああ。フィーナが採取をしている間、周囲を警戒していたのだがな。少しヒマだったので、近くにいたやつらを狩っておいたのだ。村のみんなで食べよう」


 俺はそう答える。


「食料はいくらあっても余るということはない。非常に助かる。……それにしても、ミドルボアは本来は片手間に狩れる魔物じゃないのだが……。村の男たちで狩ろうとすれば、5人は必要だ。それに、ケガをある程度覚悟しなくてはいけない」


 ミドルボアに5人か。

 村の男たちは、あまり強くはないようだ。

 まあ、ブラック盗賊団の討伐作戦のときから感じていたことではあるが。


「それは大変そうだな。今までは、少人数で移動中にミドルボアに遭遇したらどうしていたんだ?」

「必死に逃げるしかない。村まで帰って来れれば、複数がかりで狩るか、せめて追い払うくらいはできるからな」


 なかなか綱渡りな生活だな。

 イノシシの足から逃げ切れるかは微妙だし、逃げ切れたところで村人たちで追い払わなくてはならないとは。


「ふむ。……それなら、村の周りに堀や塀でもつくるのはどうだ? イノシシ程度の侵入は防げるだろう」

「なるほど、それはよさそうだ。……しかし、人手が不足している。日々の生活でいっぱいいっぱいなのだ。リキヤ君が狩ってくれたこのミドルボアにより、少しの余裕はできるだろうが……」


 まあ、堀や塀は、直ちに食い扶持に繋がるわけじゃないからな。

 長い目で見て、安全や安心を得ることができるのは大きいとは思うのだが。


「よし。せっかくだし、俺が堀と塀をつくってやろう」

「さ、さすがに悪い気が……。ビッグボアの討伐に、ブラック盗賊団の討伐。フィーナの薬草採取に同行してくれ、さらにはミドルボア3匹も提供してくれる。これ以上の恩を受けても、返せるものがないのだが……」

「遠慮するな。いい鍛錬になる。それに、フィーナが今後安全に暮らしていくために必要なものだしな」


 俺はそう答える。

 フィーナは、俺の女だ。

 自分の女が不自由なく暮らしていけるように取り計らうのは、男として当然の行為だ。


「リキヤさん……。ありがとうございます」

「ありがとう。深く感謝する」


 フィーナとダインが、そう言って頭を下げる。


「いいさ。今日はもう夕方だし、明日から取り掛かる。まずは、今日の夕食のイノシシ鍋に期待しているぞ」

「ああ。村の者たちで協力して、おいしいイノシシ鍋を用意しておく。楽しみにしていてくれ」


 ダインがそう言う。

 彼は俺たちから離れ、村の者たちに指示を出し始めた。


「私は、さっそく薬草の調合に取り掛かります。はやく、お母さんを楽にしてあげないと」

「そうだな。それがいいだろう。もし力仕事があれば、遠慮なく言ってくれ」


 俺はそう言う。


 その後、フィーナの調合を少し手伝っているうちに、夜になった。

 薬は一晩寝かせる必要があるらしい。

 彼女の母親が元気になる姿を見るのは、明日に持ち越しだ。


 そんな中、ミドルボアの肉を使ったイノシシ鍋が夕食として振る舞われた。

 村は、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 ミドルボアの肉は、ビッグボアには若干劣るが、なかなか悪くない肉だ。

 この世界の生物は、強ければ強いほどおいしかったりするのだろうか。


「ふう。食った食った」


 タンパク質をたくさん摂れば、それが筋肉に変わる。

 何も戦うだけが鍛錬ではない。

 食べることも、また鍛錬なのだ。


「リキヤさん。この後は……」


 フィーナが顔を赤くして、モジモジとそう言う。

 これ以上を女性の側から言わせるのは粋じゃない。


「わかっているとも。今夜も寝かせないからな」


 俺はそう言って、フィーナとともにベッドに向かう。

 その後の夜の運動会は、非常に盛り上がったとだけ言っておこう。

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