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21話 薬草の採取の護衛

 フィーナとともに薬草の採取に出発した。

 山の中を2人で進んでいく。


「それで、薬草はどのあたりに生えているんだ?」

「そうですね。私とリキヤさんが初めて出会った場所にも生えています。しかし、この前採取したばかりなので今はあまりないかもしれません」


 俺の問いに、フィーナがそう答える。

 初めて会った場所か。

 フィーナを襲っていた盗賊たちを撃破した場所でもある。


「そうか。他にいい場所はないのか?」

「ええと。あるにはありますが……。少し危険な魔物がいるのです」


 フィーナが歯切れ悪くそう言う。


「ふむ。その魔物は、ビッグボアよりも強いのか?」

「いえ。さすがにビッグボアよりは小さく弱いです。ミドルボアという、中型のイノシシです」

「なら問題ないだろう。もとより、ビッグボアより強い魔物だろうと俺は勝つがな!」


 ビッグボアは、正面からの力比べの相手としてはそこそこではあった。

 しかし、戦いの相手としては正直物足りない。

 まっすぐ突っ込んでくるしか能がなかったからな。


「リキヤさんは、本当に頼りになります。ではお言葉に甘えて、少し危険なところに向かうことにしますね。ちゃんと、守ってくださいね?」

「もちろんだ。俺の女になったからには、フィーナの安全は保証するさ」


 そうして、俺たちは森の中をぐんぐんと進んでいく。

 山を登っている方向だ。


 さらに歩く。

 既にかなりの距離を歩いている。

 俺はもちろん問題ないが、フィーナの足腰もなかなかしっかりしているな。

 やはり、山村育ちだけあって鍛えられているようだ。


 そんなことを考えつつ、ときには雑談しつつ、歩いていく。

 しばらくして、少し開けた場所に出た。


「ここです。幸運なことに、今はミドルボアはいないようですね」


 フィーナがあたりを見回しつつ、そう言う。


「そうか。少し物足りないが、まあ仕方ないな」

「ふふ。リキヤさんは、戦うのがお好きなのですね。私は採取をしますので、周りを警戒しておいてもらえますか?」

「ああ、わかった」


 フィーナの言葉に従い、俺は周囲に意識を張り巡らせる。

 …………ふむ?

 少し離れたところに、中型の生物の気配がいくつかあるな。

 あれがミドルボアだろうか。


 こちらに気づいていないようだ。

 今のところ、こちらに向かってくる様子はない。


「ふんふふーん」


 フィーナは、鼻歌を口ずさみつつ薬草を採取している。

 のんきだな。

 いや、俺を信頼してくれているのか。


 一番近くにいるミドルボアを倒しておこうかな。

 この位置関係なら、他のミドルボアにフィーナが襲われることもないだろうし、万が一そうなっても俺が駆けつけるほうが早い。


 俺は気配を殺しつつ、近くのミドルボアに接近する。

 やつまで数メートルのところまで来た。

 やつはまだ気づいていない。


「おらよっ!」

「ブモオッ!?」


 俺は肘鉄を無警戒のイノシシの脳天に落とした。

 やつは悲鳴をあげ、そのまま倒れた。


 まあ、これぐらいの生物ならこの程度だよな。

 戦いにすらならない。


 気配を殺さずにあえて正面から戦ってもいいが、どの道戦いというよりは作業に近いものになる。

 大した鍛錬にならない。

 ここは効率よく狩ることを優先しよう。


 鍛錬には繋がらないが、単純に食料にはなる。

 フィーナや村の人たちも、また喜んでくれるだろう。

 捕縛した盗賊たちの当面の食料を確保する必要もあるし、狩っておいて損はない。


 その調子で、合計3頭のミドルボアを狩っておいた。


「ふー。たくさん薬草が取れました。リキヤさん、警戒ありがとうございます」


 フィーナも無事に採取を終えたようだ。

 採取用に持ってきた袋に、薬草がパンパンに入っている。

 彼女がこちらに向かってくる。

 俺の近くに倒れているミドルボア3匹を見て、目を見開く。


「リ、リキヤさん? いつの間にミドルボアを討伐されたのですか? 戦いの音などは聞こえませんでしたが……」

「ああ。待っている間にちょちょいとな。戦いというよりはただ効率的に狩っただけだから、物音もほとんどなかったはずだ」


 気配を殺して近づいて、脳天に肘鉄を食らわせるだけの作業だからな。


「ミ、ミドルボアを物音も立てずに狩るとは、さすがはリキヤさんです。力に加えて、そういう技術もお持ちなのですね。本当にすごいです」


 フィーナが目を輝かせてそう言う。


「まあ、これぐらいはな。それよりも、これもまた村の食料の足しになるだろう。フィーナの薬草とともに、持って帰ることにしようか」

「そうですね。3匹のミドルボアとなると、台車が必要かもしれませんが。……えっ?」

「ん? 何か言ったか?」


 俺はミドルボア3匹を持ち上げ、フィーナにそう問う。


「いえ。何でもありません。リキヤさんなら、ミドルボア3匹ぐらいは大した重さじゃないんですね。なかなか慣れません」


 フィーナが苦笑しながらそう言う。


 そんな感じで、薬草の採取は無事に終了した。

 俺とフィーナは、ミドルボアというお土産つきで村に戻り始める。

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