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第91話 揃いましたー

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

ライドとオードの耳の形に関する表現を消しました。お好きな形でご想像くださいm(_ _)m

 最初の溜め池に着いてすぐ、ここじゃない、とニャルクさんに言った。

 水神さんに見せてもらった光景は澄んだ水だったけど、ここは少し濁ってる。各牧場に水を送る為の水路にろ過用の魔石を埋め込んでるらしく、行き届くまでには飲めるぐらいまで綺麗になるそうだけど、こんな色じゃなかった。何よりあの水には魚が泳いでた。ここの溜め池には藻を食べる魚を泳がせてるけど、上から見る限り種類が違う。

 ここじゃない、もっと他の場所だと言えば、ニャルクさんに首を傾げられた。


「ですが、トールレン町には4つの溜め池以外水を溜めている場所はにゃいそうですよ」

「だとしたらもっと他の場所……。近くにある池とか湖とかないですか?」

「湖にゃら、ほれ、一月前に水を引いたという山間の湖があるじゃろう? あそこじゃにゃいかの?」


 そういえばそんな話してたな。


「新しい水路を確認したいんですけど、行ってみていいですか?」


 イニャトさんがエルドレッド隊の人達に聞いてくれたら、エルゲさんが頷いてくれた。

 大人数で動き回るわけにもいかないからと、エルゲさんが大半の隊員に町を警護するよう指示をしたから、水路に行くのはエルゲさんとアーガスさん、イヴァさん、ライドさんとオードさんだ。

 距離はそこまで遠くないからすぐに辿り着いた。落ちないよう気をつけながら覗き込んでみる。水は綺麗だけど、魚の姿はなかった。


「ここが水神様に見せてもらったところかの?」

「いやぁ、違いますね。ここって家畜に水を飲ませる為に造ったって聞きましたけど、最近はずっと使ってるんですか?」

「ちょっと待っててください……。……ニャオさん、ここにはろ過用以外にも魔石を使ってて、必要にゃ時に魔力を流し込めば湖にある水門が開いて、充分にゃ水が溜まれば閉じるそうです。今は動作確認も含めて、週に1回開門して家畜に飲ませてるみたいですよ」


 ニャルクさんが近くにいた町民に聞いてくれた。


「しばらく区画を限定して使った後、問題にゃければいずれは他の家畜の牧場や人間用にも使おうと考えておるようじゃよ」

「人間用……。水質には問題ないんですか?」

「水質? 透明にゃら飲めるじゃろ?」


 あ、気にしない質なのね。了解しました。


「ともかく、ここでもないみたいです。湖って行くとしたらどれぐらいかかるか聞いてもらってもいいですか? ちょっと行ってみ」


 たいです、と続けようとしたら、急に吹いてきた冷気が顔を覆ってきて言葉が詰まった。足がもつれて体が傾く。

 慌てるニャルクさん達とアーガスさん達が視界から消える。派手な水飛沫を上げて、水路に落ちてしまった。

 予想していた以上に水路は深かった。目測だけど、5メートルはあると思う。城壁部分は檻みたいな造りで魔物の侵入を防いでて、底には一定の間隔を開けて魔石が埋め込まれてる。あれでろ過するのか。

 てゆーか物凄い恥ずかしいんだけど。え? この歳になって川に落ちる? あんなに派手に? 信じられなさ過ぎて上がりたくないんだけど。あ、清ちゃん大丈夫かな。

 腰に下げてた竹筒を見れば、蓋が少し開いていた。やばいやばい、迷子になるとこだった。


「清ちゃん、大丈夫?」


 覗き込んでみれば、いつもなら少し顔を出してくれるんだけど、奥に引っ込んだままだった。怖かったんかね? ごめんね?

 恥ずかしいけど、いつまでも沈んではいられないから上がるしかない。そう思って泳ぎ始めたら、水中に浮かぶたくさんの粒に気づいた。

 1ミリもない、小さな小さな白い粒。目をこらせば数え切れないほど揺れているそれにピンと来た。


「卵?」


 竹筒の中で清ちゃんがずるずると動く。嫌がっているのがわかった。急いで蓋をして、異物が入らないようにする。


「ごめんな。もう上がるけな」


 一声かけて、水面に急ぐ。ドボンと水面がはじけて、青蕾と紫輝が飛び込んできた。


「ニャオー、だいじょうぶー?」

「ねー、なんかいっぱいいるよー?」


 紫輝がどんどん近づいてくる。青蕾はキョロキョロと周りを見た。


「水から上がりよ! (はよ)!」


 掴まえようとしたら、するりと逃げられてしまった。


「ちかづいたらだめー!」

「あっちいけー!」


 青い魔法陣が青蕾を、紫の魔法陣が紫輝を包んで輝き始める。2人はすいすい泳ぐと、卵を向こうの方へと飛ばしてしまった。


「ニャオー、はやくいこー?」

「ニャルクにいちゃんたちこまってるよー?」

「……そうやね。行こうか」


 今のどうやったの? とか、どこでそんなこと覚えたの? とか、聞きたいことはたくさんあるけどさ。

 まあ、ありがとね。


「早く上がろう。ここにおったらいけんわぁ」

「うん、みんなまってるよー」


 そう言って、前足で服を掴んでくる紫輝の喉をくすぐれば、グルグルと気持ちよさそうに鳴いた。その隣で、青蕾が卵を飛ばした方をむぅ、と睨みつける。


「ねーねーシキー、ニャオー、あいつらもどってくるよー?」


 え? と顔を向ければ、確かに飛ばしたはずの卵の大群が水流に乗って戻ってきてた。まあそうなるよね。


「青蕾、紫輝、早く上がろう。水門と閉じてもらわんとどうにもならん」

「「えー?」」

「ほら急いで。うちらだけじゃどうにもならんから」


 2人を抱えて水面に向かおうとしたら、水中に魔法陣が浮かび上がった。やばい、と思ったけど、よく見れば漣華さんの魔法陣だった。よかった。

 にしても小さくない?

 30センチほどしかない魔法陣からポンと放り出されたのは、なんと赤嶺だった。続けて橙地、黄菜、緑織、藍里がポンポン出てくる。なんで?


「あー! セイライとシキいたー!」

「ほんとだー!」

「なにしてんのー?」

「おみやげあるー?」

「あそぼーよー」


 赤嶺達が寄ってくると、青蕾と紫輝も一緒になって私の周りを泳ぎ始めた。嬉しいのはわかるけど、今それどころじゃないからね?


「お前達、遊ぶんなら陸に上がってからにして! ここ危ないけぇ!」

「あぶないのー?」

「なんでー?」

「なんででもよ!?」


 早く仔どもらを水から上げないと大変なことになる!


「ねーねーセキレイたちー、このちっちゃいつぶつぶをさー、だれがいちばんつぶせるかきょうそうしようよー」


 そんなことを青蕾が言った。なんでそうなるのさ?!


「うん、やるー!」

「ニャオしんぱんねー」

「ぼくいちばーん!」


 こっちの焦りになんか気づきもしないで、赤嶺達は流れてくる卵に向かって泳いでいってしまった。止める間もなく、仔どもらの体をそれぞれの体色の魔法陣が包み込む。

 一番手は赤嶺で、真っ赤な弾丸になって卵に突っ込んでいった。次は黄菜。尻尾を振って卵が群れてるところを叩いていく。

 青蕾と紫輝は並んで泳いで、魔法陣に卵を当てて潰していった。藍里は体の周りに渦を作って卵を巻き上げて、そこに飛び込んだ橙地がドリルみたいに回りながらすり潰した。

 緑織はいつかみたいに口から水の玉を吐き出してまとめて潰しにかかったけど、勢い余って水中から飛び出してしまった。陸にいるみんなはいきなり出てきた水玉にびっくりしただろうなぁ。

 大量に流れてきてた卵を1粒残らず潰し終えた仔ドラゴン達が帰ってきた。


「ねーねーニャオー、だれがいちばんつぶしてたー?」

「ぼくだよねー?」

「あたしだよー?」

「おなかすいたよー……」


 ねーねー、ねーねー、と聞いてくる仔どもらに、はたしてどう答えたもんか……。潰すのは見てたけど、誰が何粒までかはさすがにわからんよ……。


「みーんな優勝。みんな一番だよ」

「えー? なにそれー?」

「いちばんはぼくなのにー」

「んにゃんにゃ、みんな一番よ。ほら、ニャオがドベ。ニャオは1粒も潰せてないけぇ、一番ドベじゃ」

「ドベってなーにー?」

「一番下って意味よ」

「あははー! ニャオドベだー!」

「ドベニャオだー!」

「はいはい、ドベのニャオの言うこと聞いて、水から上がっておくれ。ニャルク兄ちゃん達がおるけな」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」


 はあ、やっと上がれる。早く卵のことみんなに説明しないと。

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