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第87話 聞き込み

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

閑話第7話の漣華のセリフに矛盾があった為、少し変更しました。

『✕✕▽□! □▽○◎!』

『▽△✕……?』

『□◎○✕▽△□✕……』

『✕△□◎○! □□✕!』

「……えっと、翻訳頼めます?」

「大体予想はついてるでしょう?」

「簡単に言えば、掌紋の保有者来たーーー! じゃよ」

「ああー、予想通りっすわ」


 ヴァラカン牧場のお嬢ちゃんが店内に向かって叫んだら、奥から両親らしき男女が出てきてまた叫ばれた。その声に飛び出てきたお祖父さんっぽい人にも叫ばれた。早朝からすまねぇ。

 鼠獣人一家はひとしきり騒いでから私達を店内に招き入れてくれて、窓際に設置されたカウンター席を勧めてきた。腰かけてテーブルを見ると、可愛いイラストが描かれたメニュー表があった。軽食も出してるんだな。


「お前さんがダッドの妹のダリアかのう?」


 出されたラッシーみたいな飲み物をごくごく飲んで、イニャトさんが聞いた。女性が頷く。うん、目元なんかそっくりだ。代金は受け取ってもらえなかった。


「儂らはダッド一家と取引契約しておってな。作った果実をハノア農園で売ってもらっておるんじゃよ。最近ダッドがお前さんのことを心配しておったから、ちと来てみたんじゃ」


 そう言えば、ダリアさんはぽかんと口を開けて旦那さんと顔を見合わせた。旦那さんも目をぱちくりさせてる。


「突然訪ねてすみません。事前にお知らせするべきだったんですけど、ちょっと手違いがありまして……」


 ニャルクさんが頭を下げたから、私も倣う。夫婦とお祖父さんがぶんぶんと首を横に振った。


『✕、✕□△△』

『○○、△□◎△』

「んにゃんにゃ、気にするでにゃい。儂らが勝手にしたことじゃからの。儂はイニャトじゃ。こやつは兄のニャルクで、こっちがニャオ。ニャオはこの世界の言葉を喋れんから、用があるにゃら儂らを通しておくれ。儂らとは話せるからの」

「床にいる犬がバウジオで、青いドラゴンがセイライ、紫がシキです。ほら、挨拶しにゃさい」

「ばっふばっふ!」

「セイライだよー」

「シキだよー」

「「よろしくねー」」


 腹這いになってるバウジオと、バウジオの背中の上でじゃれ合ってた仔ドラゴン達が挨拶すれば、大人達はビクビクしながら、お嬢ちゃんは目をキラキラさせて挨拶を返してきた。

 ヴァラカン牧場はお祖父さんのタロゴさんが牧場主をしてるらしくて、長男のマーカドさんが後継者として勉強しつつ、妻のダリアさんと娘のジアーナちゃんがお手伝いしてるってイニャトさんが翻訳してくれた。ニャルクさん達の喋り方だと、ジアーナちゃんの名前はジアーニャになっちゃうけど、青蕾達が正してくれるから助かる。

 早速魔物の被害を受けた牧場について聞いてみたら、2つ隣にあるトガイ牧場を教えてくれた。食用牛を飼育する牧場で、襲われたのは2日前、数は5頭。マーカドさんも見に行ったらしいけど、お腹の肉がごっそり失くなってたんだとか。なんじゃそりゃ。


「では、そっちに行ってみようかのう。マーカドよ、忙しいとは思うが、口利きしてもらってもよいか?」

『◎、○△』

「うむ、ありがとうの。ほれ、行くぞお前さんら」


 イニャトさんに言われて席を立つ。頭を下げるダリアさんとタロゴさん、笑顔で手を振るジアーナちゃんに見送られて、トガイ牧場に向かった。




 ▷▷▷▷▷▷




 トガイ牧場とヴァラカン牧場は二区画しか離れてないみたいだけど、さすが牧場と言うだけあってそこそこ距離があった。

 20分ぐらい歩いて、ようやくトガイ牧場が見えてきた。開店直前だったみたいで、牧場主達はかなり忙しそうだったけど、マーカドさんが私達の説明をしてくれたらすんなり受け入れてくれた。

 お店の準備に戻るマーカドさんを見送って、トガイ牧場の牧場主であるレンシュナさんに向き直る。女性の牧場主だ。

 レンシュナさんによると、襲われた家畜はそれなりに年を取った牛ばかりで、腹部の肉が削ぎ落とされたみたいに失くなってたらしい。歯形は見当たらず、傷口を見た人達の中には本当に魔物の仕業なのか疑う人も出てきてるんだとか。それぐらい、異様な傷痕ってことだよね。

 死骸を確認したいと言ったら、既に火葬したと返された。まあしょうがないね。魔物っぽい毛とか足跡もなかったらしい。

 話を聞き終えた後、ソフトクリームを買ってテラス席でみんなで食べた。食用牛をメインに扱う牧場だけど、デザートのメニューは豊富だった。青蕾と紫輝が雛鳥みたいに口を開けて待つもんだから笑っちゃったよ。道行く人にここでもガン見されるし。見せもんじゃないのよ私達は。

 トールレン町は外側に円を描くみたいに牧場を配置していて、中央に商店街が密集してるから、昼食はそこで食べた。豪勢にステーキだ。3センチはありそうな分厚いステーキが人数分運ばれてきた光景はしばらく忘れられそうにない。しかも頼んでない牛、豚、鶏の肉食べ比べ大皿とデザートまで来た。間違いじゃないのかニャルクさんに聞いてもらったら、なんと私と仔ドラゴン見たさにいろんな客がどんどん入ってきてるからそのお礼って言われた。私らはパンダかっての。美味しかったけどさ。

 竹筒にいる清ちゃんにはデザートの桃を1欠片あげた。家では釣った魚の切り身をあげてるんだけど、ここにはないからね。食べるかわからないけど、ないよりいいでしょ。

 午後から話を聞きに行った、豚を飼育してるファラテラ牧場とイン牧場も、トガイ牧場と同じだった。3つの牧場の共通点は、若い家畜は被害を受けてないってこと。なんなんだろうね。


「あれ?」


 牧場主にお礼を言ってイン牧場を出ようとした時、ふと目に映った物に違和感を覚えた。


「ニャオさん、どうされました?」

「いや、この水路って地図に載ってましたっけ?」


 真新しい水路を指差せば、ニャルクさんが首をかしげた。


「いえ、地図にはにゃかったと思います。最近どこかから引いてきたんですかね?」

「ふむ、聞いてみるわい」


 たった今出てきた扉を開けて、イニャトさんが聞きに行ってくれた。で、すぐに戻ってきた。


「この水路の元は近くの山にある湖らしい。より綺麗にゃ水を家畜に飲ませようと工事しておったようで、つい一月前に完成したと言っておる」

「そうにゃんですね」

「ありがとうございます、イニャトさん」

「これくらいどうってことにゃいわ。ほれ、ギルドに戻る前に夕飯にしよう」


 話を聞くだけなんだけど、移動時間もあったからそこそこ遅くなったな。さすがに脚が疲れた。


「明日になったら漣華さんを喚びましょう。これ以上の収穫はなさそうだし。あ、商店街に戻りがてらお土産のお肉いっぱい買いましょうよ」

「「おにくー!」」

「ばっほいばっほい!」

「そうじゃな。喚ぶ前にヴァラカン牧場にも寄って、牛乳も買うていかんか?」

「いいですね、寄りましょう」


 はしゃぐ仔ドラゴン達から目を離さないよう気をつけながら、肉やらベーコンやらハムやらをたくさん買った。いい町だし、漣華さんに頼んで定期的に買いに来るのもいいね。

 ギルドに戻る時も散々見られた。仔ドラゴン達がお肉の歌なんか歌い始めたもんだから余計に目立ったなぁ。もう好きなだけ見りゃいいよ。金は取んないからさ。

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