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第86話 ヴァラカン牧場へ

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 早朝のギルドの居心地は最悪だった。

 ニャルクさんとイニャトさんがそれぞれ属するギルドの受付に行ってる間にバウジオ達とご飯を食べてたら、まーあ冒険者やら商人やらから見られる見られる。トールレン町の人達からしたら私達一行は異質そのものなんだろうけど、居心地が悪過ぎた。

 幸い青蕾達を警戒して近づいては来なかったけど、遠巻きにヒソヒソしながらチラ見されたら誰だって嫌な気分になると思う。実際私はなったし、バウジオはくぅ~んと鳴いてしまった。


「ニャオさーん、戻りましたー……、って、どうしたんです?」

「いや、なんでもないです。大丈夫です」


 戻ってきたニャルクさんが椅子に座る。朝食は畜産の町らしく、ボリュームのあるベーコンサンドとヨーグルトだ。


「おーい、戻ったぞ~」


 イニャトさんも手を振りながら戻ってきた。椅子に飛び乗ってメモを見せてきた。杖のギルマスに確認してくれた牧場の名前だな。その隣にニャルクさんが町の地図を広げる。


「被害を受けた牧場は3つで、ファラテラ牧場とイン牧場とトガイ牧場じゃ。初めから順に、豚、豚、食用牛を担当しておるようで、4頭前後が襲われたらしい」

「えっと……。ああ、ここです。全部町の西側に固まってますね」

「この町もペリアッド町みたいに城壁が囲ってますけど、西側には門がありますか? 魔物が入れそうな場所は?」

「1ヵ所あるのう。しかし、門番はちゃんとおるから入っては来れんぞ? もし異変があればギルドにすぐ連絡が入るからのう」


 ふむ。じゃあ門からじゃなく別の侵入ルートがあるわけか。でもどこだろう?


「川が流れてるんですね。ずいぶん大きい」

「大抵の町や村は川に沿って造られるからのう。生活に水は必須じゃよ」


 まあそうだよね。


「ところでニャオよ、お前さんどちらかのギルドに登録せぬか?」

「え、登録?」

「そうじゃ。ペリアッド町にはあそこの斧のギルマスの好意で登録証にゃしで出入りできよるが、他の町に行くにゃらさすがに持っておいた方がいいと、先ほど杖のギルマスに言われてにゃあ。掌紋を見せればお前さんの素性はわかるが、他の者達から反感を買いかねん」

「そうですね。今までは僕達の連れということで通してきましたが、この先何があるかわかりませんし、登録しておいた方が無難でしょう」


 ニャルクさんが頷いた。確かにこれから先、2人がいない時にどこかの町とか村に立ち寄らないことがないとも言い切れないもんな。じゃあ登録すべきか。


「わかりました、私も登録します。商人ギルドの方がいいんですけど、ここでできますか?」

「いや、登録するにゃらペリアッド町の方がいい。普段世話ににゃっておるんじゃから、他の町のギルマスを頼るのはちと、な」

「そ、うですね。じゃあペリアッド町に戻ったら登録します」

「手続きについてはその場で教えますね」

「はい、お願いします」


 人も増えてきたからちゃっちゃと食べ終えてギルドを出る。いきなり飛ばされたから紫輝達のハーネスはもちろん持ってない。ちと不安。


「青蕾、紫輝、よーく聞いて。この町はいつも行きよる町じゃないけえ、走り回ったり大騒ぎしたらいけんよ。町の人達がびっくりするけな。うちらから離れんようにして、大人しくするんで? わかった?」


 ギルド前で、地面に片膝をついて2人をじぃっと見つめて言えば、はーい、と元気な返事か返ってきた。


「ニャオたちとずっといっしょにいるー」

「かってにどっかいかなーい」

「……通りすがりの人が美味しそうな林檎パイ持っとったら?」

「「ちょうだいっていうー」」

「うーん、駄目ー」


 駄目だなこりゃ。犬用でもいいから首輪を買うべきかね?




 ▷▷▷▷▷▷




 ニャルクさん達と話し合った結果、最初はヴァラカン牧場に行くことになった。ダッドさんの妹さんがいるし、顔合わせとかないと。それが終わったら、家畜を殺された牧場を回る予定。

 ヴァラカン牧場は南西の方角にあるらしく、乳牛を担当しているんだとか。

 トールレン町はたくさんの牧場が協力し合って家畜を育ててるみたいで、西側では豚を、南側では牛をって感じで、区画ごとに世話する動物を分けてるらしい。それぞれの家畜の専門家が集まってた方がいざって時に動きやすいみたい。元いた世界じゃあ見ないやり方だ。

 とりあえず様子見、と首輪なしで歩かせた青蕾達は意外と大人しくて助かった。このままだったら余計な買い物しなくて済む。紫輝なんかイニャトさん乗せて得意げな顔してら。青蕾はバウジオに跨がるニャルクさんの後ろに飛び乗って町並みを眺めてる。優雅だね。


「そういえば、なんで清ちゃんを連れてきたんです? あの時木桶に戻してたはずですけど」

「おお、レンゲ殿が連れていけと言ったんじゃ。じゃからお前さんのマジックバッグとキヨを慌てて準備したんじゃよ」

「漣華さんが……。なんでです?」

「それはわからん。ただ連れていけとしか言われんかった」

「そうですか……」


 なんなんだろう、漣華さん。無意味なことはしないだろうけど、気になるな。

 目を丸くする町の人達にガン見されながら30分くらい歩くと、地図に印をつけておいたヴァラカン牧場に着いた。立派な店構えで、柵の向こうにはたくさんの牛がいる。乳牛って言ってたな。


「ここで間違いにゃいです」

「そうか。ではニャオ、頼んでいいかの?」


 紫輝から降りたイニャトさんが、入り口の扉についてる鐘を前足で指した。開店前だから鍵がかかってるし、2人じゃ届かないもんね。

 下がる紐を掴んで振れば、チリリリン、と気持ちのいい音が鳴った。少し間を置いて、パタパタと駆けてくる音が聞こえてくる。カチャリ、と鍵が開いて出てきたのは、ダッドさん一家の女の子組に顔立ちが似た鼠獣人の少女だった。

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