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第74話 王都の流行

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 ギルドの片づけは30分ぐらいで終わったから、ハノア農園に向かった。ギルドに立ち寄る前に覗いた掲示板に、〈水神の掌紋〉保有者ギルドから姿を消す?! みたいな張り紙が貼ってあるってイニャトさんに教えてもらったから、ダッドさん一家に無事を伝えに行かないといけない。アースレイさん達も紹介しないとね。

 ハノア農園にはたくさんの人が買い物に来てて、私達を見て道を開けてくれた。何人かは仔ドラゴン達と香梅さんの姿にビクついてたな。申し訳なし。

 店先から覗き込むとラミラさんがレジ打ちしてて、ナーヤちゃんとステアちゃんが袋詰めしてた。保管室から在庫を補充してきたマイス君が私達に気づいてくれて、ラミラさんに声をかける。

 顔を上げたラミラさんはにっこり笑ってナーヤちゃんに何か言った。元気よく返事をしたナーヤちゃんは私達に手を振ってから、お店の奥の扉に入っていって、ダッドさんを連れて戻ってきた。


「仕事の邪魔になっちゃいましたね……」

「いやあ、問題にゃかろう。ほれ、出てくるぞ」


 お客さん達に頭を下げながらダッドさんが出てきた。しかもラミラさんと、どこからかロイ君とメルク君も現れて、五つ子もぞろぞろと。店いいの?


「あの、お店いいんでしょうか? お客さん待ってますよね?」

「大丈夫ですよ。ほら、周りを見てください」


 ニャルクさんに言われて見回せば、お客さんはみんな笑顔だった。口々に声をかけてくる。イニャトさんから、おかえりって言われてるって教えてもらった。


『◎◎△~♪』

『◎◎△~♪』

『◎◎△~♪』

『◎◎△~♪』

『◎◎△~♪』


 五つ子に囲まれた。初対面の兎人姉弟と香梅さんごと。香梅さんのこと怖くないのかね? 私達と一緒にいるから安心って思ってくれてるなら嬉しいけど。


「お前さんら、新しく儂らと一緒に住むことににゃったシシュティとアースレイ姉弟じゃ。グリンブルスティのコウメと、ネメアン・ライオンの赤仔もおるぞ」

「みゃう?」

「ブルルッ」


 仔ライオンを地面に下ろせば、ぽてぽてと五つ子に近づいていった。ナーヤちゃんとステアちゃんが子ども特有の甲高い声を上げて喜んだけど、初抱っこはマイス君に奪われた。


『✕○▽、□□!!』

『□✕□△?!』

『✕✕~、◎○〜♪』


 仔ライオンを抱っこして逃げ回るマイス君を、ナーヤちゃん達女の子組が追いかける。そこにロイ君達男の子組も加わって、仔鼠の駆けっこ大会が始まってしまった。うちのおチビきょとんとしてら。そこに仔ドラゴン達とバウジオまで参加してもうしっちゃかめっちゃかだ。お母さんと買い物に来てる他の子ども達が羨ましそうに眺めてる。


『✕! □▽✕▽!』


 ラミラさんが一喝すると、五つ子はダッドさん達の前に整列した。おかえりバウジオ。仔ドラゴン達や、お前達は並ばなくていいんだよ?


「さて、顔は見せたが、この後はどうする?」


 イニャトさんが聞いてきた。


「そうですね……。お風呂の道具一式を追加で買いたいです。アースレイさん達もお風呂好きなんで、今ある分だと足りないですから」

「では、前に行ったお店に行きましょう。シシュティさん、アースレイさん、石鹸類はルーサの香りの物でいいですか?」


 ニャルクさんが聞いてくれたら、2人は頷いてくれた。

 ダッドさん一家とお客さん達に別れを告げて、町の中心に戻る。前に行ったノーエル雑貨店に寄って、体用石鹸と洗髪用石鹸を数個ずつ購入。近くに服屋があったから、ルームウェアみたいなラフな服ほしさに入ってみた。仔ドラゴン達と仔ライオンは、バウジオと香梅さんに任せてある。


『◎○、△□?』


 シンプルなデザインの服を見比べていたら、アースレイさんに声をかけられた。指差された先を見たら、なんとケット・シー用の服が売られていた。


「ニャルクさん! イニャトさん!」


 離れた場所でマフラーとか手袋を見ていた兄弟猫を呼べば、2人と一緒にいたシシュティさんもこっちに来た。


「どうした?」

「大声出したら駄目ですよ。他にもお客さんいるんですから」

「すみません、でもこれ! 見てください!」


 ちょっとばっかし声量を落としたけど、興奮を隠し切れなかった。言葉は通じてないけど、アースレイさんに笑われた。


「お、儂ら用の服じゃにゃ」

「いろいろありますねぇ」


 ニャルクさん達は普段服を着ていない。ケット・シーはそれが普通らしいけど、最近増えてきてるらしい。店主によると、王都にいるファッションデザイナーみたいな人が白いケット・シーに服を着せてみたら大層話題になったんだとか。


「ニャルクさん達も買いましょうよ。ほら、このベストなんかいいんじゃないですか?」

「ニャオさん、僕達は別に……」

「ニャルクよ。これはおそらく止まらんぞ。いるいらんを言い合うよりは、何着か買うてしまった方が早う終わる」

「……ですね」


 なんか聞こえてくるけど、譲らないよ私。マジックバッグとか買う時こっちの意見聞いてくれなかったじゃん。譲らないよ私。

 結局、私とアースレイさんとシシュティさんの服を3着ずつと、ニャルクさんとイニャトさんのベストを2着ずつ買った。もっとほしかったけど、着なれないからって言われたから我慢する。

 もういい時間だから、そろそろ帰ろうかね。

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