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第67話 拾いました

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

ルビを振るのを忘れてましたが、猪の名前はこうめさんです。

「で、連れて帰ってきたと?」

「はい……」


 緑織達のところに戻ってきたら兎人姉弟が帰っていて、私を捜しに出る寸前だった。

 目が合った瞬間離れたことを窘められたと思ったら、足元にいる毛玉に気づかれて現在叱られ中。いや、声を荒げられてはないけど、やりたくなかった靴を履いて正座を自主的にやらないといけない気分になるぐらいには怒られてる。


「ニャオさん。それがどんなに危険な魔物かは教えたよね? 異世界から来た君にもわかるように話したつもりだったんだけど」

「ええ、はい。それは重々理解したんですけど……」

「だったらどうしてこんなことになるんだい? 襲われて追われてきたんならわかるけど、君連れてきたよね? 君の意思でここまで連れてきたよね?」


 アースレイさんが剣の柄をカリカリと掻く音が聞こえる。まさか斬りかかってはこないよね? そんなことないよね?

 助けを求めてシシュティさんをチラ見するけど、香梅さんの陰から頭だけ出してこっちを見てる。目を真ん丸にして毛玉を見てる。駄目だなこりゃ。


「余所見しない」

「はい」


 ピシャリと言われてアースレイさんに向き直る。どうやったら怒りを鎮めてくれるんだろう……。あれ、緑織どこいった?


「ねーねー」


 あ、真横にいた。私の後ろを覗き込んでる。


「あんただーれー?」

「みゃうっ」

「なまえはー?」

「みゃうぅぅ~」

「どこからきたのー?」

「みゃおぅ!」


 話せてんの? あんた。


「ほら、おいで」


 アースレイさんから隠れて縮こまっていた毛玉を抱き上げて膝に乗せる。緑織がぽてぽて正面に来た。


「初めまして、緑織ちゃん。僕はライオンだよ~」

「ライオンー?」

「そうだよ~。ネメアン・ライオンっていうんだ~。よろしくね~」

「よろしくー!」

「みゃうっ」


 仔ライオンを膝の上に仰向けに乗せて、前足を持ってジェスチャーさせれば、緑織が元気に返事をした。ライオンなのはわかるけど、ネメアン・ライオンって確証はなかったんだよね。まあアースレイさんのセリフでわかったけどさ。


「そこ! 遊ばない!」

「はい! すいません!」


 話は終わってないよ! と怒られてしまった。


「まったく……。幼体とはいえ、ネメアン・ライオンを拾うような人間がいるとは思わなかったよ。親が近くにいたらどうするつもりだったんだい?」

「それは、まあ、正直あんまり考えてなかった、です……」

「もっと用心しないか! そんなんじゃあいつ怪我をするかわかったもんじゃないよ!」

「はい、おっしゃる通りです……」


 こんな風に怒られるの久しぶりだなぁ。なんか、怒り方が前の世界の職場の先輩に似てる。いつまで経っても方言が抜けないのをちくちく言われたっけ。しまいには、頭の中で考えることも全部標準語にしなさい! って怒鳴られたんだよなぁ。その顔が怖くて今でも従っちゃうんだけど。


「他のことを考える余裕があるんだね」


 おっふ、気づかれた。


「いえ、あの、すみません……」

「君にはSSランクの魔物がついてるのは知ってるよ。あの魔物達に喧嘩を売る命知らずはそういないさ。君が持つユニークスキルが強力なのももちろん知ってる。だけど君自身が注意しないと危険は減らないんだ」

「はい……」

「今の君にSSランクの仲間はいない。仔ドラゴンだけだ。こんな状態で君は満足にユニークスキルを使いこなせるのかい? 目の前に恐ろしい魔物が現れたとして、戦えるのかい?」

「いやぁ、無理です……」

「だったら! 君の為にも、ミオリちゃんの為にも、大人である君がしっかりしないといけないんじゃないかい?」

「はい。ごもっともです……。あの、アースレイさん……?」

「なんだい?!」


 一層声を荒げるアースレイさんにわかるように、横を指差す。怒り顔のままそっちを向いたアースレイさんはきょとんとした。

 まあそりゃそうか。お説教前に地面に降ろした仔ライオンがとことこ歩いてった先は香梅さんで、寝転んだ香梅さんのおっぱい飲んでるんだから。シシュティさんも信じられないものを見るような顔してるし。


「お腹空いてたんですねぇ」

「……だからって、自分を殺そうとした魔物の仔どもに乳をあげるかな」


 温厚にもほどがあるよねぇ。だけど、おっぱいが出るってことは香梅さんの仔どもがいるはずだよね。でも一度も見てないってことは……そういうことか。


「あれ? 自分を殺そうとしたって……。あの仔ライオン、アースレイさん達が戦った魔物の仔どもなんですか?」


 そう尋ねれば、アースレイさんは頷いた。


「早めに戻ったのも、君達を呼びに来たからなんだよ。見せたいものがあって」

「見せたいもの?」

「ああ。姉さん」


 シシュティさんがパッとこっちを向いた。


「さっきの場所に行こう。ネメアン・ライオンの幼体も連れて」

『◎○』


 おっぱいを飲む仔ライオンを眺めてた緑織がこっちに来た。仔ライオンも飲むのをやめて振り返る。香梅さんが立ち上がった。


「香梅さん、また緑織をお願いしていいですか?」

「ブルルッ」

「ありがとうございます。緑織、お前もお願いして」

「はーい。コウメちゃん、おねがいねー?」

「ブルルルッ」

「はい、お前はこっち」


 緑織を香梅さんに乗せてから、仔ライオンを抱き上げる。背中をぽんぽん叩くとゲップが出た。


「ニャオさん、コウメさん、ついてきて」


 アースレイさんが歩き出す。緑織を乗せた香梅さんが続いて、次に私と仔ライオン。最後はシシュティさんだ。


「周りには充分注意するんだよ。何が隠れてるかわからないから」


 はい、と頷いて、左手に仔ライオンを抱え直すと、右手を短剣の柄にかけた。

 いつでも抜けるようにしとかないとね。

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