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第7話 頼もしい相棒

誤字報告ありがとうございます。

修正のシステムに感動しました。

 そうと決まればまずは血抜きだ。

 近くの木に絡みついていた蔓を使って鶏の脚を縛り、低めの枝に吊るして短剣を取り出す。

 儀式に使う道具のようにも見えるけど、誰も見ていないから咎められはしないよね。

 スッと首を切り落とした直後、やばい、と思った。

 血が出ればもちろん臭いも出る。血の臭いが風で流れれば、嗅ぎつけた肉食の獣が寄ってくる。傷を負った獲物を逃がすほど、野生動物は馬鹿じゃない。

 傷口を塞ごうと慌てて布を探すけど、着ている服しかない。マジックバッグにもハンカチは入っていなかった。

 どうしよう、こんなことしてる間にも血が滴って……ない?

 鶏の真下に血溜まりはなかった。それどころか、切った首からは1滴の血も垂れてない。

 鶏の首を確認する。実用性のある短剣には見えないけど、切れ味はいいらしく、断面に引っかかった痕はない。

 ちらっと、足元に置いてあるもう1羽の鶏を見る。左手で持ち上げて、首をスパン。うん、血は出ない。

 切りつけた瞬間、青緑の刀身が赤く染まった。驚いて見ていると、ほんの数秒で元の色合いに戻っていった。


「血抜き、できた?」


 羽を毟って、内蔵を取り出す。ある程度の血が出るかと思ったけど、手につくことすらなかった。


「血抜き問題は解決だね」


 短剣に向かって、ついにっこり笑ってしまった。

 火起こしには弓ぎり式を試してみよう。近場から適当な木材を集めて、短剣を使ってそれらしい形にしていく。……いたるところにへし折れた木があるのはレッドドラゴンみたいな魔物が暴れた痕だろうか。助かるけど。

 枯れたセイタカアワダチソウみたいな植物があったから、もこもこ部分を拝借する。同じ植物の茎部分を鳥の巣みたいに丸めて置いておく。弓につける紐はフードの物を代用すればいいか。ちょっといいお店で買ったお気に入りだけど仕方がない。

 政叔父さんと山に登った時、雨に降られて体が冷えたことがあった。ガタガタ震える私を岩場の陰に入れた政叔父さんは、今みたいに火を起こして温めてくれたっけ。あの時の火は凄く綺麗だったなぁ。

 木の枝を組んだ後、政叔父さんの手の動きを思い出しつつ、弓を何度も素早く引く。初めてだったからなかなか上手く行かなかったけど、1時間ぐらいかけてやっと煙が立つところまでこぎ着けた。

 厚い葉っぱで掬った火種を、鳥の巣もどきにはめ込んだ火口に落として息を吹きかける。パチパチと音が鳴り始めて、ボウッと火が点いてから組んだ木の中に差し込む。

 パキパキと木が燃えていく音がする。うん、上出来。

 次は火が消えないよう気をつけつつ、鶏肉を焼く準備をする。

 燃え移らない位置に3本の枝を斜めに差して、先端に近い部分を交差させて蔓で縛る。火を挟んだ反対側にも同じ物を作れば支えの完成だ。

 芯の強いまっすぐな枝で鶏肉を串刺しにして、支えの上に乗せる。後はじっくり焼けばいい。

 鶏皮に焼き色がついて、既に美味しそう。

 ああ、待ち遠しい。

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