第60話 久しぶりのテント
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「えーっとねー、ニャオとおいちゃんがおはなししてたらねー」
「うんうん」
「ニャオのおててがピカッてひかってねー、ニャオもピカッてひかってねー」
「そっかそっかー。それでー?」
「きれーっておもったからちかづいたらねー、あたしもひかってねー」
「ほうほう。その後はー?」
「もりにいたのー」
「森にいたのかー」
これって誘拐になっちゃうのかなーごめんねー美影ママー。
水神さんには教えてくださいってお願いしただけで、連れてってほしいとは頼んでないんだけどなぁ。てゆうか、どうやって移動させたんだろう。
「とりあえず、少し歩いてみようかな。緑織、ついてきて」
「どこいくのー?」
「川を探すよ。危ない魔物がいなけりゃいいけど……」
「かわー?」
すぐに夜になるから、身の安全だけは確保したい。この世界に来たばっかりの時に世話になった巨木みたいなのがあれば一番いいけど、期待はできないな。
周りを見ながらどっちに行くか考えてたら、緑織がぽてぽて歩き始めた。
「ニャオー、こっちー」
「え? どこ行くん?」
「かわこっちだよー」
え、ほんとに?
「なんでわかるの?」
「みずのおとがするー。フクマルおいちゃんのとことおんなじおとだよー」
ドラゴンだから耳がいいのか? なんにせよ助かった。これで闇雲に歩き回らずに済む。
「ありがとう緑織。案内しておくれ」
「はーい」
緑織について歩いていくと、細めの川が見えた。周りは開けてて見晴らしがいい。今晩はここに泊まろうかな。
「よし、緑織ちゃん。今日はここで私とキャンプしましょう」
「キャンプー?」
「キャンプってのはね、テントを張って、焚き火を焚いてお肉焼いたりお魚焼いたりして、寝るまで楽しく遊ぶことだよ」
「やるー! キャンプやりたーい!」
「はい、じゃあまずはテントを張りましょう」
いきなり飛ばされはしたけど、幸いマジックバッグは持ってるんだよね。で、中にはもちろんあれが入ってる。
「じゃーん! フアト村で買ったテントー!」
「きゃー!」
パンパカパーンッて感じでテントを取り出せば、緑織が翼をパタパタさせて喜んでくれた。
……まあ家ができた以上使う必要がなかったから出してないだけなんだけどね。
「緑織、私はテントを張っておくから、川に魚がいないか見てきてくれる?」
「わかったー」
小さい川だし、危ない魔物はいないだろうな。いや、いてもらっちゃ困るんだけど。
ちっちゃな緑からあんまり目を離さないようにしながらテントを設営する。といっても、広げて魔力を流すだけだから簡単だ。
ちらっと見たら、緑織は川の中に入っていた。だけど半分も浸かっていない。かなり浅いんだな。
「緑織ー、深いところに行ったら駄目よー」
「はーいブクブクブク……」
尻尾で返事を返した緑織は、お尻を上げた勢いで顔を川に突っ込んだ。大丈夫かな、あれ。ちゃっちゃとキャンプの準備をして呼び戻そう。
久しぶりに出したけど、傷んだところは見当たらない。本当にいい品だなぁ。今度フアト村に寄ることがあったら果実を持っていこうかな。
火の魔石と“バンパイアシーフの短剣”を取り出してから、マジックバッグをテント内に置く。ニムザの実はいくつか持ってるけど、これはいざって時に取っておきたい。
川面に浮かんだ緑織のお尻が泳いでいるのを確認してから、近くに落ちている枝を集める。火はニャルクさんがくれた魔石があるから簡単に点けられるけど、燃やす物がないとね。
集めた石で囲いを作って、その中に拾った枝を組んでいく。少し離れたところに追加する枝を用意してから、火の魔石で点火した。
パチパチと火が爆ぜ始める。よし、と声に出して立ち上がって、緑織がいる川を見た。
「……何あれ」
川縁に何かいる。いや、何かじゃない。魚が跳ねてる。
そーっと近づいてみると、15センチくらいの魚が3匹ピチピチしてる。しゃがみこんで首を傾げてたら、バシャッと水が跳ねる音がして、もう1匹追加された。
「ニャオー、おさかないたよー」
呼ばれて川に目を向ければ、楽しそうな顔をした緑織が尻尾の棘に魚を引っかけていた。そしてこっちに尻尾を振ると、5匹目の魚が飛んできて足元で跳ねた。
「……いいね」
食料ゲット。
▷▷▷▷▷▷
「おさかなおいしーねー!」
「うん、美味しい。緑織のおかげやわぁ。ありがとうな」
「えへへ~」
川魚に毒持ちはなかなかいないと思ったけど、念の為内臓を綺麗に取り除いてから丸焼きにして2人でぱくり。調味料系はある程度マジックバッグに入れていたから助かった。いい塩気で美味しい。緑織の分は身をほぐそうと思ってたんだけど、焼き上がって串から外した瞬間丸齧りされてしまった。問題なく食べられてるから、まあよしとしておこう。
「ねーねー、こっちはー?」
2匹目を食べ終えた緑織がくんくんと鼻を鳴らす。甘い匂いの元は、焚き火で焼いてる焼き林檎だ。
小腹が空いた時用にいつも持ってる林檎を、砂糖とバターとシナモンに似た香辛料シューヌで味つけして、薫製を作る時に使ってるクエリンの皮で包んで焼いてる真っ最中。
ちなみにシューヌを使った焼き林檎と使ってない焼き林檎、両方用意してる。私はシナモン大丈夫だけど、緑織が苦手だったらいけないからね。
「じっくり焼かんといけんから、まずは魚を食べような。林檎はデザートにしよう」
「デザート! たのしみ~!」
林檎はたくさん植えてるけど、焼き林檎にするのは初めてだな。家に帰ったらみんなにも作ってみよう。
魚を食べ終えて、地面でお絵かきしたり鬼ごっこしたりして遊ぶこと3時間ほど。わくわくしながら見つめてくる緑織の前で、クエリンの皮をめくってみた。
「わぁ~、いいにおーい!」
すーん、とめいっぱい匂いを嗅いだ緑織が期待の眼差しを向けてくるもんだから吹き出してしまった。ふーふーしてある程度冷ましてから、葉っぱのお皿に置いてあげた。
「熱いけぇゆっくり食べてな。火傷するよ」
「わかったー」
って、返事したそばからかぶりついちゃったよ。まずい、と思ったけど、熱さなんか気にならない様子でぱくぱく食べてる。火を吹くぐらいだから火傷しないのかねぇ。
「これおいしー! もっとたべたーい!」
「はいはい、これあげるからねー」
自分の分の焼き林檎をお皿に置けば、すぐ様かぶりついた緑織にまた噴き出す。
「こっちあじちがうねー? なんでー?」
「それはシューヌを使っとるんよ。どう?」
「うーん、あたしはさっきのほうがすきー」
ほうほう、緑織はシューヌはあんまり、か。
「これは焼くのに時間がかかるから、また明日シューヌが入ってないの焼いたげるね。あと、緑織にお願いがあるんやけど……」
「なーにー?」
口の端についた林檎の欠片を拭い取って味見する。あ、美味しい。
「ギルドのおいちゃんから、冒険者を2人捜してほしいって頼まれたんやけど、この森におるみたいなんよ。緑織は私より耳がいいから、何か聞こえたり、見えたりしたら教えてくれるかな?」
「うん、いーよー」
そう言って、緑織はにかっと笑った。
「ありがとー! 助かるわぁ~」
「クルルルッ」
頭を撫でたら喉を鳴らされた。この音好きなんだよねぇ~。
それから1時間ぐらいして、うとうとし始めた緑織をテントに寝かせてから、川に近づいて掌を濡らして合掌した。
水神さん水神さん。緑織が怪我をしないように、魔物を遠ざけていただけませんか?
掌が温かくなって、掌紋から漏れた光がリボンみたいに宙を舞うと、テントを中心に半径10メートルぐらいの円を描いて、消えた。
結界かな。うん、これなら安心だね。
ありがとうございます、とお礼を言ってから立ち上がって、ふと首にかけていたお守りを見た。
たぶん、私の宝石には漣華さんが魔力を込めてくれてると思う。だとしたらこの状況もわかってるはず。
なのにまだ合流できないってことは、何か異常があったんだろうな。私達がいるところがわかればユニークスキルを使って迎えに来てくれるだろうし。
パンッと両頬を叩く。福丸さんの森に自力で帰るのは無理。だったら迎えが来るまで私が緑織を守らないと。弱いけど。
腰に差してた短剣を手に取る。鞘から抜けば、青緑の刀身が月光を反射した。
これも近々、本来の意味で使うかもしれない。
覚悟を決めろ。星峰直央。




