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第54話 虹

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

今さらですが、第42話に桃と蜜柑の売価をつけ足しました。


桃→1玉480エル

蜜柑→1袋450エル


になります。

読み返す必要はありません。


ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。


一度投稿しましたが、ルビを振り忘れてたので追加しました。

「ふぃ~、終わった~」


 洗ったばかりの毛布を干して、ぐいーっと背伸びをした。

 物置木(ものおき)、と呼んでいる物置用の木と、のん木、と呼んでいるハンモックをかけた木に結んだ洗濯紐に干した毛布を数える。私の分と、ニャルクさんとイニャトさんが一緒に使ってる分、バウジオの分、それと1、2、3、4……。


「あれ、1枚足りない」


 もう一度数え直すけど、7枚しかない。8枚洗ったはずなのに……。


「……さては」


 家の方を振り返れば、幹の向こうにピャッと橙色の影が隠れる。足音を立てないよう、そろりそろりと近づいて……。


「悪戯っ子はここか?!」

「ピャウッ!」


 一気に踏み込んで掴まえたのは、橙色の仔ドラゴン。干すはずだった毛布を丸めて抱え込んでいるのが見えて、予想はしてたけど脱力した。


橙地(だいち)~、また洗い直しじゃん……」

「きづかないニャオがわるいんだもんねー」

「もー、罰としてお手伝いしなさい!」

「やだ! ぼくもっとあそぶもん!」

「だーめーでーす! お手伝いしないと今日の林檎兎にしてあげないからね!」

「やーだー!」


 泥だらけになった毛布を左手に抱えて、逃げようとする橙地の尻尾を右手で掴んでせせらぎの方に引き摺っていく。

 ……視界の端に見えた毛布が足りない気がする。そーっとそっちに目を向けたら、2枚足りない。干していたはずの場所の真下に、黄色と青の団子が落ちてる。


「~~~黄菜(きいな)! 青蕾(せいらい)!」


 叫べば、黄色と青がピャッと跳ねた。


「お前達も洗うの手伝いなさい! じゃないと林檎丸齧りだからね!」

「ピャッ! おてつだいする、するからー!」

「あたしおはながいいー」

「しれっとハードル上げないでくれるかな?!」




 ▷▷▷▷▷▷




「おーい、戻ったぞ~」

「ただいま、ニャオさん」

「ばっふばっふ!」

「戻りました。変わりないですか?」


 ペリアッド町に果実を卸しに行っていたニャルクさん達が帰ってきた。


「おかえりなさ~い……。ご覧の通りです……」

「あらら」


 私の惨状を見て、ふふ、と福丸さんが笑った。

 家と物置木とのん木の真ん中にべったりと座った私の周りを駆け回る、カラフルな7つの影。3週間前に孵ったばかりの仔ドラゴン達だ。そして散らばる毛布の残骸。


「守れなかった……。無念……」

「いやいや、今日は1枚だったんじゃろ? 上出来上出来」

「先週は3枚でしたもんね」


 ニャルクさんがマジックリュックを下ろすと、赤い仔ドラゴンの赤嶺(せきれい)と紫の仔ドラゴンの紫輝(しき)が駆けていった。


「おかえりー! おみやげはー?」

「おみやげおみやげー!」

「これ、待たんかお前さん達」

「はい、どうぞ」


 マジックリュックを開けたニャルクさんが取り出したのは、仔ドラゴン用に特別にあつらえてもらったハーネスだ。

 こっちの世界にはハーネスなんてないから、バウジオがつけている犬用マジックバッグを元に、ペリアッド町の革細工の店にオーダーしていた物が出来上がったらしい。

 わざわざハーネスを用意したのにも理由はちゃんとある。

 仔ドラゴン達がよちよち歩きを始めた頃、ギルマス達に紹介しようと思って町に連れていったら、テンション上がりまくりで大変な目に遭った。

 あっちに走りそっちに走り、レストランに入り込もうとする仔や道行く主婦におやつをねだる仔と、まーあ暴れる暴れる。

 最終的には〈水神の掌紋〉で水神さんにお願いして、仔ドラゴン達をしゃぼん玉みたいな水玉に入れて浮かべてもらってどうにか凌いだ。もちろん顔だけ出した状態でね。

 ギルマスにはもちろんぶちギレられた。


「これなーにー?」

「お前さん達が町に入る時に使うもんじゃよ。これをつけねば入ってはいかん」

「このひもはー?」

「僕達が持つんですよ。あにゃた達が迷子ににゃらにゃいようにね」


 兄弟猫に質問する赤嶺と紫輝に、思わず感心してしまった。


「はぁ~、流暢に喋れるようになったもんやねぇ」

「言葉を理解するドラゴンは結構珍しいんですよ」


 ぅお、福丸さんいつの間に真後ろに?


「ドラゴンは頭がいい魔物ではありますが、全てが人間や他の魔物と会話ができるわけではありません。ようは、相手にしている種族が会話をしていることに気づけるかどうかなんです」

「会話してるって気づけたら、その言語が喋れるようになるんですか?」

「鳴き声を言葉として聞くようになりますからね。ですが、この仔達のような幼さでここまで喋れるのは本当に珍しい。母親譲りなんでしょうね」


 体をよじ登る緑の仔ドラゴン緑織(みおり)と、藍の仔ドラゴン藍里(らんり)を優しい目で見つめながら教えてくれた福丸さんに相槌を打つと、漣華さんが帰ってきた。ママドラゴンの美影(みかげ)さんも一緒だ。


「ただいま、私の可愛い虹。いい仔にしてた?」

「おかえりママー」

「おかえりなさーい」


 仔ドラゴン達に囲まれた美影さんについ笑みが溢れてしまう。

 卵が孵った時、仔ドラゴン達の色を見て虹みたいって言ったのを覚えてて、喋れるようになってからそう呼ぶようになったんだよね。

 ……仔ども達と自分に名前をつけてほしいって言ってきた時はどうしようかと思ったけど、まあわかりやすくていいよね。

 鮮やかな景色にうんうん頷いてたら、漣華さんが近づいてきた。


「おかえりなさい。美影さんはどうでした?」

「うむ。なかなかに筋がいい。この調子で行けば、妾と共に狩りに出る日も近いじゃろうな」


 今朝早く、漣華さんは美影さんがどれくらい戦えるのか見てみたいって言ってどこかに連れていってしまった。この様子だと、期待通りって感じかな?

 満足そうに笑う漣華さんに、美影さんがぴたっと寄り添う。


「レンゲ姉さん、また狩りを教えてね」

「ああ、もちろんじゃとも」

「ニャオさん、仔ども達を見ててくれてありがとう」

「いえいえ」


 美影さんを撫でてたら、イニャトさんがぽてぽて歩いてきた。赤嶺も一緒だ。


「ニャオよ、ハーネスもできたことじゃし、来週は一緒にハノア農園に行かんかの? マイス達が会いたいと言っておったぞ」

「ああー……」


 えーっと、美影さんを連れてきたのが1ヶ月前で、卵が孵ったのが3週間前。その1週間後ぐらいに仔ドラゴン達を町に連れていって騒動が起きて、納品前に私だけ漣華さん達と先に帰って以降ずっと留守番してるから、約3週間マイス君達と会ってないんだよね。

 今は週に1回まとめて卸してるから、来週町に行くとしたら1ヶ月ぶりになるわけか。


「そうですね。来週は私も農園に行きます。イニャトさん達にずっとお任せしてたから、ちょっとは働かないと」

「働くも何も、この果実そのものがお前さんのおかげじゃろうに。儂らが町に行っとる間も収穫してくれて助かっとるんじゃぞ?」

「でも、卸しとかになると話は別でしょ? イニャトさん達だって家にいる時は収穫してくれてるんだから、私も頑張らないと」


 そう言えば、イニャトさんはにゃほほほほ、と笑った。

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