第44話 お土産と絵本
ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。
文字が詰まって読みづらかったので行間にスペースを入れてみました。
明日は閑話を投稿予定です。いつもの人達かは未定です。
ぺリアッド町の本屋は大通りから奥に入った道にあった。
扉を開けるとカランカランと音がする。入り口近くのレジで若い店員が頭を下げた。
「では、僕は植物図鑑を探してきます」
「儂は愛読書の新刊がにゃいか見てくるわい。ニャオはどうする?」
「私はいろいろ見てみたいです」
「そうか。何かあればすぐに呼ぶんじゃよ。バウジオ、離れるでにゃいぞ」
「ぅぉふ」
奥の方に歩いていく兄弟猫を見送って、バウジオの頭を撫でた。
「じゃ、頼むよ相棒」
「ぅぉふっ」
適当に店内を回って、気になる背表紙の本を手に取って捲っては棚に戻す。
それを繰り返す内に絵本コーナーに来ていたみたいで、子どもが数人静かに絵本を読んでいた。
絵本か……。
子ども向けの絵が多い本なら読めなくても楽しめるかも。
表紙を見せるように陳列されている本の一冊に、見覚えのある魔物が描かれていたから驚いた。
「あれま、福丸さんと漣華さん」
このシルエットはどう見てもあの2人だ。熊は別個体かもしれないけど、ドラゴンの方は漣華さんで間違いない。
パラパラと捲ってみれば、子どもが読みやすいように配慮された柔らかい色味で描かれていて、なんだかほんわかした。
「バウジオ、これ買おっか」
「ぅぉふ」
表紙を見せたらぶんぶんと尻尾を振られた。
よし、決まり。
▷▷▷▷▷▷
本屋を出る頃には日が傾き始めていたからそろそろ森に戻ることにした。
「いい本があってよかったです。これにゃら毒草の見分け方も完璧ですよ」
「イニャトさんの樹木魔法じゃあ毒か毒じゃないかはわからないんですか?」
「儂のはあくまで樹木じゃからのう。草木魔法にゃらわかるんじゃが」
へぇ、違うのか。
帰る前にグーロを捕まえてくれた福丸さんへのお土産を買いたいと言えば、ニャルクさんが蜂蜜をメインに売っている屋台を教えてくれた。この前もここで一瓶買ったらしく、既に福丸さんが気に入ってるから丁度いいだろうとのことで、6000エルする高級品を二瓶購入した。
漣華さんにも買いたかったけど、福丸さんほど桃に情熱注いでるようには見えなかったから何にしたらいいかわからなかった。だから保留。
ぺリアッド町の門に着くと、何やら騒がしい。人混みを縫うように歩いていけば門の外に漣華さんがいて、4人組の冒険者パーティーと何かを話していた。
「何やってるんでしょう?」
「うーむ、あれは……。のうニャルク」
「ええ……、イニャト……」
ニャルクさん達が2人だけで頷き合う。なんにもわからん。
とりあえず、漣華さんのところに行こう。
「おーい、漣華さーん」
「こ、これ?! やめんかニャオ!」
「ニャオさんやめて! 今は駄目ですって?!」
手を振って声を張ると、兄弟猫が慌て出した。周りにいた冒険者や町民達もぎょっとした顔で振り返ってくる。なんなのさ?
そこそこ距離があったけど声は届いたみたいで、口を大きく開けていた漣華さんがぱくんと閉じてこっちを見た。
「おお、そなたら。遅いではないか」
人混みを抜けて門番に会釈をしてから町を出る。冒険者パーティーを見れば一様に顔が強張っていて、1人は尻餅をついていた。
漣華さんが私の額に鼻を擦りつけてくる。
「紙のにおいがする……。本屋にでも寄ったか?」
「はい、これ買いました」
マジックバッグから例の絵本を取り出すと、表紙を見た漣華さんは目をぱちぱちさせて、くはは、と笑った。
「そうかそうか、それを買うたか」
「知ってるんですか?」
「いや、その本そのものは知らぬ。じゃが妾達のことを描いていることはわかる」
絵本をマジックバッグにしまう。手続きを終えたニャルクさん達が駆け寄ってきた。
「あの、レンゲさん。何かありましたか?」
「何か、と問われれば特にはない。そなたらが出てこなんだから待っておっただけじゃ」
出てこないって、日だってまだ沈んですらないんだけど。
「用が済んだのなら帰るぞ。ほら、乗れ」
かがんでくれた漣華さんの背中によじ登る。イニャトさんは恐る恐る登ってきたけど、ニャルクさんとバウジオは足元で立ちすくんでいた。
「どうした、乗らんか」
「いえ、あの……。僕達は陸を帰りま」
「乗せてやろうか? 首根っこを咥えて」
「お邪魔させていただきます」
ニャルクさんがピョンと漣華さんに飛び乗ると、バウジオもどうにかこうにか登ってきた。私達全員で引っ張り上げて、落ちないように首とか腹を腕と前足で抱え込む。
「行くぞ」
翼を大きく広げて、漣華さんは空に舞い上がった。最初の時ほど怖くない。だけど……。
「「ニャアァァァァァァァッ!!」」
「ヒャイーーーーーーーーンッ!!」
「落ち着いて! 大丈夫だから!?」
「やかましいのう……」
結局、漣華さんが森に帰りつくまでニャルクさん達が黙ることはなかった。間近で悲鳴を聞き続けたから耳が痛いよ……。




