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第40話 マジで?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 上昇している間は風の抵抗とか羽ばたきでかなり怖かったけど、水平飛行に移ってからはわりと余裕ができた。飛行機が心底苦手で、移動には常に車か船を選んでいたから、今の自分の落ち着き具合にびっくりだ。フードは風圧でとっくに脱げていて、髪が乱れまくっている。


「ニャオ、あれを見よ」


 漣華さんが顎で地上にいる牛の群れを指した。


「グアンナじゃ。肉は美味く皮は人間共の防具に使われる。特別高価というわけではないが、いるか?」

「いえ、結構です」

「向こうにはウムガルナがおるな。ここいらでは珍しい。奴の皮は装飾として好まれる。肉も美味いぞ」

「いえ、大丈夫です」


 ウムガルナって、グアンナを狙って今まさに食いつこうとしてる蛇のことだよね? 蛇革の財布とか近所のおばちゃん達が持ってたけど、私は苦手だよ。蛇そのものは好きだけど、革になってるところを見るとなんとも言えない気分になるんだよね……。


「ふむ。では何がほしい? 肉や皮でないなら宝石か? 少し飛べば人間が立ち入れぬ渓谷にごろごろあるぞ」

「漣華さん漣華さん、何もいらないんで帰りたいです」

「むぅ……」


 なんで不満そうな顔すんのさ。


「あの、福丸さんの森で果樹をたくさん植えたんです。美味しい実がいっぱい成ってるんで、食べに来ませんか?」

「桃はあるか?」

「ありますよ。お好きならもっと植えましょうか?」

「うむ。では行こうかの」


 漣華さんが方向を変えて森に向かって飛び始める。よかった、と胸を撫で下ろしたら、ん? と違う方を向かれた。


「どうしたんですか?」

「何やらおるな。寄り道するぞ」

「は? 寄り道?」


 何がいるって? どこに行くの?

 私が確認する前に、漣華さんは魔法陣を描き上げて飛び込んでしまった。




 ▷▷▷▷▷▷




 漣華さんが庭って呼んでる場所に出るかと思ったら違った。眼下は杉みたいな針葉樹林が広がっていて、その密集具合は地面が見えないほどだ。


「今の、ユニークスキルじゃなかったんですか?」

「ユニークスキルには違いないが、入口と出口の二種類の魔法陣をくっつけたのじゃ。そうすれば一度の羽ばたきで遥か先へと行けるからのう」


 はぁ~、凄い。あれ、でもそれって……。


「漣華さん、私達今どこら辺にいるんです?」

「ぺリアッド町から山を2つ越えたところじゃ」


 一瞬でそんなに移動したの?! ひとっ飛び以上だな……。


「ほれ、あそこを見よ」


 漣華さんに言われて目を向ければ、私達がいるのと同じ高さに影が4つ飛んでいた。

 遠過ぎてはっきり見えないけど、3対1で戦ってないか?


「あれは騎竜隊じゃな」

「騎竜隊?」

「ユランというドラゴンとワイバーンの中間に位置する魔物を調教して乗りこなす騎竜兵からなる王国騎士団の一角じゃ。敵対しておるのは……アンピプテラじゃな」


 漣華さんが近づいてくれて、二種類の魔物の姿が見えた。

 3頭で組んでいる魔物ユランは翼と前脚が一体化したドラゴンで、それぞれが鞍をつけて騎竜兵を1人ずつ乗せている。アンピプテラはコウモリの翼が生えた蛇で、10メートルぐらいはありそうだ。

 アンピプテラが奇声を上げて1頭のユランに絡みつく。ユランは辛うじて拘束から逃れた翼で飛び続けるけど、高度はどんどん下がっている。一緒に捕まってしまった騎竜兵はユランの背中とアンピプテラの腹に挟まれて身動きができない。

 残る2頭と2人が魔法で助け出そうとするけど、特殊な鱗なのか火も風も効いていない。


「あれ大丈夫なんですか?」

「さあのう。アンピプテラは昔は臆病な魔物じゃったが、魔法を跳ね返す鱗を持つ者が現れ始めてから狂暴になった。並みの魔力持ちでは太刀打ちできん」


 そう言って漣華さんは大きく息を吸い込んだ。


「ほぉーーーーーーーーーおおおおおおおおん」


 漣華さんが吠えた。

 レッドドラゴンの咆哮とは全然違う、鐘の音みたいに腹の底に響く太い音。

 これってもしかして龍の啼き声?

 騎竜隊とアンピプテラがこっちを向く。捕まえていたユランを離したアンピプテラが威嚇しながら向かってきた。


「ちょっと! こっち来てますよ?!」

「そうじゃな」

「そうじゃなじゃなくて!?」


 めっちゃブチギレてんじゃんどうすんのあれ?!

 あ。


「安心せい。妾がぱぱっと」

「これやってみる!」

「……は?」


 マジックバッグから竹筒を取り出して水を両掌にかける。そして叫んだ。


「水神さんお願いします! あの魔物止めて!!」


 握り締めた掌が熱くなると、牙を剥いていたアンピプテラは一瞬で凍りついて、そのまま針葉樹の海に落ちていった。


「……え?」

「……なんと」


 木や枝が折れる派手な音がここまで聞こえてくる。私達、というか漣華さんを見て青ざめていた騎竜兵達は口をぽかんと開けていた。


「……死んだ?」

「……どうじゃろうな。行ってみるか」


 漣華さんは旋回しながら森に降りていった。

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