第37話 何事ですか?
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今さらですが、無花果の名前をモナからモラに変えました。よろしくお願いします。
床のささくれを直すためのネムネの樹液もマーニア夫妻の店に売ってたから買わせてもらって、商人ギルドに向かう。
イニャトさんとダッドさんが受付に行くのをマイス君達と見送った後、売店で売ってた苺飴をみんなにプレゼントした。もちろんイニャトさんの分もあるし、ダッドさんとラミラさん、お手伝いしてるロイ君とナーヤちゃんの分もマイス君に預けてある。
町のギルドとあって、フアト村とは規模が違う。だけどカウンターの配置とかは同じだ。
「冒険者ってランク分けされてるんですか? AランクとかBランクとか」
歴戦の猛者みたいなおじさんパーティーが通り過ぎるのを見てニャルクさんに聞いた。
「もちろんですよ。それぞれの冒険者パーティーはギルドから与えられているランクと同ランクか下のランクの依頼しか受けられにゃいんです。1人で行動している冒険者もいて、その冒険者が望めば個人にもランクが与えられるんです」
「じゃあ一匹狼のSランク冒険者とかいるんですか?」
「いますよ。1番上のランクがSSランクで、ギルドに5人しか登録されてにゃいそうです」
うっわ、何それめっちゃ格好いい。
「ちにゃみにフクマルさんとレンゲさんはSSランクの魔物ににゃります」
「……さいですか」
ヤバイのと仲よくなったもんだな。
「まあ、神々が見守った戦争で大暴れした方々ですからね。当然といえば当然です」
苺飴を食べ終えたニャルクさんが、私とマイス君達の棒を受け取って捨てに行ってくれた。マイス君達はにこにこ笑ってる。ふとイニャトさん達の方を見たら、ギルドの職員らしき男の人と何やら話している。
何か不備があったのかな? と思っていたら、深めに被っていたフードを引っ張られた。
「は……?」
振り返れば、イニャトさん達と話してる人と同じ制服を着た男の人が驚いたような顔で私を見下ろしていた。
え? その表情私のもんだと思うんだけど? 何してくれてんの?
ペリアッド町に来てずっと被ったままだったから、マイス君達も私の髪に驚いてる。見せてなかったもんな。周りにいた商人とか冒険者達も目を真ん丸くしてこっち見てるし。いやいや、じゃなくて。
フードを被り直して、ニャルクさんを呼ぶ。不穏な気配を感じ取ってくれたのか、駆け足で戻ってきてくれた。
「どうしました?」
「この人にフードを取られてしまって……」
「にゃんですって?」
ニャルクさんがキッとギルド職員を睨みつける。ギルド職員は慌てた様子で走り去っていった。
「イニャト! 登録は済みましたか?!」
ニャルクさんが叫ぶように聞けば、パッと振り向いたイニャトさんとダッドさんが駆け寄ってきた。
「さっき終わったところじゃよ。にゃんじゃあそんにゃに叫んで」
「ニャオさんがここの職員にフードを取られてしまったそうです」
「にゃんじゃと?」
「一旦出ましょう。ダッドさんも、いいですか?」
ステアちゃんがダッドさんに説明したのか、驚いた顔で私を見ながら頷いた。
足早に出口に向かっていると、カウンター奥のドアから冒険者上がりみたいなおじさんが出てきた。たぶんギルマス。もう1つのカウンター奥のドアからもちょっとぽっちゃりなおじさんが転がり出た。商人ギルマスかな?
冒険者ギルマスが何かを叫ぶと、近くにいた数人の冒険者達が出口を塞いでしまった。
「何何何? なんなんですこれ?」
「わかりませんよ!」
「お前さんに用があるようじゃのう。儂らにもお前さんのことを聞いてきよった」
「私にはないんですけど??」
冒険者達が私達を囲うように円を組んで距離を詰めてくる。2人のギルマスもすぐそこだ。
何も悪いことなんてしてないんですけど? ちょっと異世界から喚ばれただけの言葉が通じないただの一般人ですけど? どうしたらいいのこれ?
冒険者ギルマスが冒険者達の円の隙間からこっちに入ってきて、私の目の前に立つ。節くれ立った手が伸びてきて、フードを掴もうとした瞬間、ギルド内に魔法陣が浮かび上がった。
ガタガタ、ゴトゴトと椅子とテーブルが押し退けられて、落ちた皿が何枚も割れて破片が飛び散る。武器を構えた冒険者達は口をあんぐりと開けて、真っ青になって後ずさった。
「ふむ、狭いな」
ぐるり、と建物内を見回した漣華さんが、不満そうに鼻を鳴らした。




