第335話 どこまで?
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「「「「「「「ただいまー!!」」」」」」」
収穫作業が一段落ついて、昼ご飯の準備を始めた頃に仔ドラゴン達は帰ってきた。
「おかえりー。今日はどうやった?」
「今日は大物だよ! シーサーペントを獲ってきた!」
「なんて?」
黄菜が得意気に胸を張った。うん、ほんとになんて言った今?
「キイニャよ、儂の気のせいでにゃければシーサーペントと聞こえたんじゃが……」
「気のせいじゃないぞ。ほら」
紫輝が橙地の首にかかってた大きいマジックバッグから狩った魔物を引っ張り出した。いやいや、全部出さなくていいから。
「本物のシーサーペントですねぇ……」
「疑いようがないね……」
『おっきいー』
「ばっふばっふ!」
「グルミャウ!」
ニャルクさん達も苦笑いしちゃってる。草を食んでた百子は木の陰に隠れちゃった。シーサーペントを狩ってきちゃうなんて、海まで行ってきたのか? かなり遠いぞ?
「山を越えた先の平原で狩るつもりだったんだけど、空を飛んでたら魔法陣が浮かび上がったんだ。セキレイが向こう側を覗き込んだらウルスナ姉ちゃんがいてね、シーサーペントがいるから狩ってみないかって聞かれたから狩ってきた!」
「そうやったんやね……」
嬉しそうだね青蕾。私ゃあんた達の交遊関係の広がり具合に笑うしかないよ。
〖ウルスナってば、ずいぶんこの仔達を気に入ったみたいね〗
「ウルスナ姉ちゃん優しかったよ。海の魔物についてたくさん教えてくれたの。それと、これもくれたんだよ?」
そう言って、藍里が自分の首に下げたマジックバッグを逆さに咥えて振ると、拳よりも一回り大きいサイズの石がごとんと出てきた。
「これは?」
「千年珊瑚の死骸だって。森に帰ったら川に入れてやれって言われたの。そこのせせらぎに入れてきていい?」
珊瑚だったか。見た目軽石だから石だと思ったよ。
〖それ……〗
「構わんよ。見分けがつかんくにゃらんように、目印を用意しておくといいぞ」
「「わかったー」」
珊瑚を咥えた藍里が緑織と一緒に我先にと駆けていった。入れ替わりに美影さんと勇啼さんがゆったり歩きながらやってくる。ククシナさん、今何か言いかけた?
「おかえり、私達の虹。いい獲物ね」
「うむ、さすがだ」
美影さん達嬉しそう。でも巣立ちの話をするんだよね? 既に憂鬱なんだけど。
「ククシナさん、さっき何か言おうとしました?」
小声で聞いてみると、ククシナさんも顔を寄せてきた。ククシナさんの肩にはそのさんが乗ってる。清ちゃんも私の体を駆け登ってきた。
〖あの珊瑚、ウルスナの魔法がかけられてるわ。もちろん害があるものじゃないけど〗
「え? ウルスナさんが?」
なんの魔法? それ、福丸さんの結界の中に入ってきていい物だったのかな? もう遅いけど。
「嫌な感じはしなかったよ。なんか、ちょっとむず痒かった」
「そうだねぇ。変な感覚だったよ」
清ちゃんとそのさんも何か感じ取ったのか。私にはわからなかったな。
ちらっと目を横に向けてみれば、食事の準備を再開ひたアースレイさんとシシュティさんが見えた。そこに兄弟猫も加わって、仔ドラゴン達の獲物の話をしてるのが聞こえる。まさか森でシーサーペントを見ることになるとは思わなかったよね。
「妙な気配がしたと思ったら、ウルスナさんの魔法でしたか」
大量の林檎を抱えた福丸さんが歩いてきた。微笑んでる。よかった、怒ってない。
〖フクマル、妹がごめんなさいね? 後で注意してくるわ〗
「いえいえ、お気になさらず」
シャリシャリと、林檎の瑞々しい音がする。福丸さんの頭に飛び移った清ちゃんがおねだりすれば、福丸さんは小粒の林檎を選んで清ちゃんにわけてくれた。そうだよね、大きい林檎だと清ちゃん食べにくいもんね。……大きい林檎はあげたくないとか、そんな理由じゃないよね?
「わたくしの結界に異状はありません。目くじらを立てるほどではありませんよ」
〖そう言ってもらえるのは嬉しいけど……〗
「それでも一言言っておくべきだよ。こういうことはきっちりやっておかないと」
「ぼくもそう思う」
うーん、確かに物事は初めが肝心とは言うけどね。でも今回みたいなことってまたあるのか? あっちゃ困るんだが。
「ランリ達、どこに行ったの? 話があるの」
そら来た、巣立ちの話だ。
「せせらぎの方に行ったぞ。すぐに帰ってくるって」
「そう。セキレイ、呼んできてくれる?」
「いやだから、すぐに来るってば」
「ママ、どうしたの?」
「なんか雰囲気違うよ?」
「お腹空いてるのか? ご飯前だけど、おいらがイニャトと作ったドライフルーツ食うか?」
仔ドラゴン達が美影さんに群がるのを、勇啼さんは少し寂しそうに眺めてる。やっぱり辛いよね、別れなんてさ。
「ダイチ、私は大丈夫。あなた達に話があるの」
「話? 話って何」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
首を傾げた橙地のセリフを遮って、藍里と緑織の悲鳴が聞こえてきた。何? 何事?
「おやおや、何があったんでしょう?」
〖行ってみましょうか?〗
悲鳴がしたわりにはみんな落ち着いてる。結界の中だし、結界の主である福丸さんが慌ててないからね。
「行かんでいい。じきにここへ来る」
「あ、漣華さん。政臣さんも」
空が陰ったと思ったら、政臣さんを乗せた漣華さんが降りてきた。なんか呆れた顔をしてる。政臣さんはにこにこ笑ってるよ。
「ママー! パパー!」
「大変大変たいへーん!!」
緑織と藍里が全速力で走ってきた。飛んでこない辺りかなりパニクってるな。
「どうしたんだ?」
「何かあったの?」
自分達の背後に隠れた2人を、勇啼さん達が首を回して見下ろす。青蕾達女の仔組は緑織達の左右にぴったりくっついて、赤嶺達男の仔組はみんなを庇うみたいに3人並んで立ちはだかった。
藍里達が走ってきた方からガサガサと音がする。ニャルクさん達もこっちに来た。尻尾を振って近づこうとしたバウジオの背中を福丸さんが押さえる。行っちゃ駄目だよ?
「……嘘やん」
木々の向こうから這い出てきたのは、凄く見覚えのあるモノ。それを見た赤嶺達が、あっ! って声を上げた。
「リオウじゃん!」
「何やってんだよ?!」
「どうやって来たんだ?」
じりじりと伸びてくるクラーケンの、璃桜の触腕を男の仔組が鼻でつつく。黄菜達も駆け寄った。ククシナさんのため息が聞こえてくる。
〖さっきの珊瑚の死骸が原因ね〗
「珊瑚の死骸?」
緑織達がせせらぎに沈めに行ったやつだよね?
〖あれに空間を繋げる魔法がかけられてあったのよ。水に沈むことで発動するみたい〗
「福丸さんの結界魔法に干渉しちゃってないですか?」
〖そんなへましないわ〗
そっか。それならいいけど。
「璃桜、久しぶり。何か用事?」
触腕の先っちょを握りながら聞けば、触腕は果樹の方にするすると伸びていった。
「璃桜、食べたいんじゃない?」
「食べたいのか……」
この前たくさんプレゼントしたから、気に入ってくれたんだね。
「ニャオさん」
ん? どしたの美影さん?
「話し合い、後にする。リオウが帰ってから」
「そうですねぇ。楽しそうだし、水差しちゃ悪いですよ」
突然の来訪だったけど、赤嶺達嬉しそうだもんね。もうちょっと待ってあげよう。……福丸さん、しれっと林檎の木を庇わないの。




