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第327話 懐かしい顔?

ご閲覧、評価、ブックマーク、いいね、誤字報告、ありがとうございます。


次は余話を更新予定です。

 研究室の中は、ザ・研究室って感じで凄く散らかってた。本は山積みで、書類は机にも床にも散らばってる。ところどころにはインクが染みを作っちゃってるよ。


『○△? □□◎✕▽?』


 ガレンおじ様が声をかけるけど、返事はない。物を踏まないように気をつけながら部屋に入らせてもらったけど、誰の姿もなかった。

 ため息が聞こえてくる。ガレンおじ様からだ。部屋の惨状に呆れてるらしい。確かにこれは酷い。


「出かけてるのかな……」


 クッションも上着も、仮眠用っぽい毛布も放りっぱなしだ。片づけてもいいかな?

 せめて上着ぐらいはかけようと思って持ち上げたら、なんか重い。……この上着、中身入りだな。ぐったり、というか、ぐっすり寝てる。髪がぼさぼさだ。


「ガ、ガレンさーん……?」


 持ち上げてしまった、たぶん研究室の主を下ろせないまま呼ぶと、こっちを見たガレンおじ様がぽかんと口を開けた。それと同じタイミングで、上着の中身がもぞとぞと動き出す。


『✕✕~、▽□✕……?』


 目ぇ擦ってる場合じゃないよ。副団長が目の前にいるのよ? ……て、え?


「ヴァルグさん?」


 ぼさぼさ頭の顔は、サスニエル隊隊長のヴァルグさんと同じだった。


「いや、もしかしてヴェイグさん? て、転職したんですか……?」


 双子だから弟さんかも。え? ヴェイグさんだったらこれからの納品はどうしたらいいの? 続けた方がいいのかやめていいのかどっちなのさ?


『✕○□~、✕……zzZZ。……!! ◯◎◯◎〜♪』


 ……いや、どっちでもないな。顔が同じなだけで別人だ。あの2人はこんなテンションじゃないもの。そういえばイニャトさん、ヴァルグさん達三つ子って言ってなかったか? この人末っ子か? そうなのか? 名前は確か……、ヴォレグさんだったな。

 私に気づいて一気に覚醒したたぶん研究室の主は、キラッキラな笑顔で握手してきた。で、人間の手と違う感触に驚いて、またキラキラし始める。それからは翼の皮膜を引っ張ったり角の長さを計ったりと忙しなく動かれてちょっと怖かった。尻尾のつけ根を調べようとした時はさすがに拒否したし、ガレンおじ様も止めに来てくれたけど。


『✕✕△!! □✕△!』

『✕◎▽□✕! ✕✕!!』


 ノックもなしに激しく扉が開かれたと思ったら、ヴァルグさんとヴェイグさんが駆け込んできた。で、散らかってる部屋の物に躓いて仲よく転ける。両手で1人ずつ抱き止めてやれば、絶句、って顔で見上げられた。


『○、◎△□? □▽?』

「お久しぶりですヴァルグさん。ヴェイグさんも、お元気そうで何より」


 苦笑いしながら挨拶すれば、ヴァルグさん達はパッと立ち上がった。まじまじと頭の先から爪先まで眺められる。うん、視線が無遠慮過ぎる。

 咳払いが聞こえてきた。わざとらしいそれに振り返ると、ガレンおじ様が険しい表情を浮かべてる。ビクッと体を震わせたヴァルグさんとヴェイグさんは、ヴォレグさんに駆け寄って両側から頭をひっぱたいた。


「おお、息ぴったり」


 お説教が始まる。身内ならではの連携だね。叩かれたヴォレグさん、なんか爆笑してるけど、叩かれた場所が悪かったのか?

 ふと視線を感じて扉を見れば、これまた見知った顔がいた。


「あ、ルシナさん」


 サスニエル隊の副隊長のルシナさんが、真ん丸に見開いた目で私を見てた。返事がない。


『……☓▽☓?』


 私の姿に驚いてらっしゃる。上司が身内を叱ってることもあって、研究室に入っていいのか決めあぐねてるみたい。

 ヴァルグさん達の方を確認すればまだお説教中だった。たぶん、私に迷惑をかけるなって言ってるんだと思う。ガレンおじ様は参加こそしてないけど、じーっと三つ子の様子を眺めてる。こりゃ長引くかな。




 ▷▷▷▷▷▷




 結局、ヴォレグさんが兄2人に両脇を抱えられて謝罪に来たのは30分ぐらい経ってからだった。恐る恐る入室してきたルシナさんとドライフルーツを食べてたからお裾分けすると、しょんぼり顔から一転笑顔になった。両脇の2人が羨ましそうにしてたから、未開封の瓶を1人1ずつ手渡せば凄く喜んでくれた。もちろんガレンおじ様にもプレゼント。お疲れ様です。


『✕◎▽、□○□▽◎?』


 身振り手振りで、ヴォレグさんが何かを伝えてくる。私の翼を指差したり、散らばってた書類を広い集めて見せてきたり。調べさせてくれって言ってるんだろうな。

 研究所員は他にもたくさんいるだろうにヴォレグさんを宛がってくれたのは、ヴァルグさん達と面識がある私に配慮してくれてのことだよね。うん、知らない人にいろいろ調べられるのはちょっと、いや極力ご遠慮願いたいもの。

 正面に立つヴォレグさんに背を向けて、部屋の物にぶつからないように翼を広げてみせる。調べていいよーって言いたかったんだけど、伝わったかな?


『~~~○◎○~!!』

「ぁいたっ?!」


 背中に衝撃があった、ら、腕が首に回ってきた。違う違う、調べていいって意味なの。抱きついていいなんて言ってないの。首元は手足みたいに鱗に覆われてないんだから苦しいってば。


『✕✕▽! □✕!!』

『△▽✕✕✕?!』

『✕▽✕□? □✕??』

『……✕』


 兄2人はヴォレグさんを引き剥がしに来て、ルシナさんはどうしたらいいかわからずに右往左往してる。ガレンおじ様、ため息ついてないで止めてくれません? あなたじゃなきゃ止められないと思うんですけど。

三つ子の名前ですが、もう少し差をつければよかったと今更ながら後悔。3人一緒に書くと間違いそう(笑)

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