第34話 町外れのお店
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漢数字で表記していたところをアラビア数字に変換予定です。少しずつ変えていきます。
鼠耳の男の子はマイス君で、女性はやっぱりお母さんでラミラさんというらしい。
マイス君にお店まで先導してもらいながら、鼻をすするラミラさんの背中を撫でつつ、ニャルクさん達に翻訳してもらう。
「マイス君達のお店は無農薬が売りで、住宅地から少し離れた場所にある自宅の敷地内で育てた果物や野菜を売って生計を立てているそうです」
「じゃが、ここ数ヶ月町内の店で質のいい物が安く売り出される為に、買いに来る客が減ってしまったんじゃと。そこで町の中央に近い場所で売ろうとしたが、もともと店を構えておる者達から反対を食らったらしい」
「まあ、お店側からしたら商売敵を簡単には受け入れにゃいですよね。でもそのせいで収入がにゃくにゃって、日々の生活に困ってしまっていたようです」
なんとまあ。
「それで、マイス君は食べる物を探して町に出てきたところ、ニャオさんに林檎をもらったそうです」
話が区切れたところで、マイス君達の自宅兼お店に辿り着いた。
白っぽいレンガと赤い屋根の可愛らしいお家に、収穫した物を置く棚とレジ。広々とした土地の農園だけど、ところどころに草が生えてたり物が落ちてたりして、手入れが行き届いてないように見える。
「客足が遠退いて、他の仕事を少しずつ始めてるからにゃかにゃか手が回らにゃいそうです」
「土はいいのに、残念じゃのう」
ラミラさんに案内されてお邪魔させてもらう。家の中は少し埃っぽくて、そこにマイス君と同い年ぐらいの子どもが4人いた。
『○◎□~!』
『✕□〜……』
『▽△✕!?』
『□◎△◯?』
笑顔で出迎えてくれる女の子と、泣いてる男の子と怒ってる男の子、我関せずの女の子だ。
「にゃんと、五つ子か」
「これは食費が大変ですね」
「ばっふ!」
よくよく見てみれば確かに顔が似てる。ガタガタと音がして、奥の部屋から頬が痩けた男の人が出てきた。
「旦那じゃな」
「ああ、お父さん」
目を細めて私達を見るお父さんにラミラさんが話しかける。林檎を1つマジックバッグから出して、お父さんに差し出した。
『……?』
「僕達が売りにきた林檎です。食べてみてくれませんか?」
「美味いぞ~?」
「ばっほい!」
林檎と私を交互に見た後、遠慮がちに受け取って齧りついたお父さんは、カッと目を見開いた。
子ども達にも林檎を配る。お父さんの様子を見ていたからか、なんの疑いもなく齧りついて、みんな同じように驚いていた。
「気に入ったみたいですね」
「当然じゃ。美味いからの」
果汁の1滴もこぼすまいと果肉に啜りつく子ども達が、もっともっとと集まってくる。バウジオが間に入ってくれて、揉みくちゃにされずに済んだ。
『◎◎○△、△○△!』
マイス君が熱弁すると、お父さんが目をキラキラさせ始める。
「待たんかお前さんら。勝手に話を進めるでにゃい」
イニャトさんがピシャリと言った。
「さっきも言ったが、お前さんら、これを買い取る金があるんか? 儂らはこれをそこらの果実と同じ値で卸すつもりはにゃいぞ」
確かに、家や店の様子から値段のいい品を買い取る余裕があるとは思えない。お金が関わる以上、半端なことはできないもんな。とはいえ、この状態の家族を放っておくのは気が引ける。卸す側のイニャトさんの言い分もわかるけど、でもなぁ……。
「あ……」
一気に暗い顔になった夫婦と、泣きそうなマイス君達の視線が私に集まる。イニャトさんが首を傾げた。
「にゃんじゃ? どうしたニャオよ」
「あの、こうしたらどうでしょう?」
私が説明して、ニャルクさんがラミラさん達に翻訳してくれると、マイス君が大声と右手をあげた。表情から見てたぶん賛成してくれてる。
渋るイニャトさんをどうにかこうにか説得して、私達は準備に取りかかった。




