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第311話 奇妙な群れ

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「ただいまー。何話してるの?」


 おお、青蕾が帰ってきた。紫輝と藍里もこっちに来てる。何か見つけたかな?


「おかえり。ちょっとこれからのことで話しよったよ。それで、なんかあった?」


 聞いてみたら、藍里と青蕾は首を横に振った。こっちはなんもなし、か。紫輝は?


「僕が行った方には魔物の群れがいたよ。しかも様子が変なんだ。中央にいたのはグリフォンで、その周りをドラゴンが囲ってるんだよ」

「グリフォンを囲うドラゴン? グリフォンが襲われよるんやなくて?」

「うん、どっちかっていうと従ってる感じに見えたよ。そのグリフォンも、僕達が今までに狩ってきた奴とは雰囲気が違うんだ」


 雰囲気が違うとは、穏やかじゃないな。


「ソノ、ドラゴンがグリフォンの言うこと聞くなんてあるのかな? あたし、グリフォンなんかについていきたくないよ」

「普通はないさ、ランリ。心配しなくていい。シキや、その妙なグリフォンのところに連れていってくれないかい?」

「わかった。ニャオ、背中に乗るか?」

「うん、頼むわ。清ちゃんはどうする? 自分で飛ぶ?」

「どうしよっかな……」

「私が乗せる!」

「じゃあ青蕾に乗るね」


 肩から降りた清ちゃんが青蕾の体を駆け登った。私も紫輝に跨がる。そのさんは勇啼さんにしがみついてるニャルクさんの尻尾に絡みついた。


「ちょ、ソノさん? イサニャさんのとんがりに巻きついてくれませんか? 尻尾はちょっと、むずむずするというかにゃんというか……」

「変なこと言うんじゃないよニャルク。あたしにはイサナの棘は太過ぎるんだ。とてもじゃないけど巻きつけないよ」

「尾の方ならまだ細い棘があると思うが……」

「そんなとこに巻きついてたら吹き飛ばされちまうじゃないか。拾いに来てくれんのかい?」

「ぬかるみでなければ行こう」

「ぬかるみでも来なよあんた!」


 そりゃそうだよね。


「大丈夫だよ。ソノが落ちたらあたしが拾いに行くからね」

「ありがとねランリ。でもまずは落ちないようにニャルクの尻尾に絡みついとくよ」

「やめてくれません?」


 ニャルクさん、決定事項みたいなんで諦めましょう?




 ▷▷▷▷▷▷




 紫輝の先導でグリフォンの群れの方に向かったけど、結構な距離を飛ぶことになった。そんなに時間をかけずに戻ってきたのにこんなに移動してたのか。体が育った分スピードも体力も上がってたんだね。お前達の成長が嬉しいよ。


「ほら、あそこだ」


 紫輝が止まって、正面の空中を睨んだ。確かにドラゴンが群れで飛んでる。仔ドラゴン達よりも少し大きいぐらいかな? うん、ここが町とか村の近くじゃなくてよかった。


「あれ? グリフォンは?」


 グリフォンの姿が見えない。あれも小さい魔物じゃないのに、どこにいるんだ?


「あそこだよ。ほら、真ん中ぐらいにいるドラゴンの背中」


 顎で示した紫輝の言う方を見れば、他のドラゴンに守られるみたいに飛んでる1体の背中にグリフォンがいた。物すっごい寛いでらっしゃる。あくびなんかしちゃってるんだけど、あれどういう状況?


「にゃ、にゃんにゃんですかあれ? にゃんであのドラゴンはグリフォンを乗せてるんですか? グリフォンは乗っちゃってるんですか? 初めて見るんですけど??」

「あんなのあたしも初めてさ。まーあ奇妙だね」


 そのさんでも初めてか。これは貴重な経験だな。……じゃなくてさ。


「どうしましょう? あいつらの目的はなんでしょうか?」

「この近辺には人間が住む場所はない。実害が出る可能性は少ないだろうけど、かといってほっとくのもねぇ」

「狩っちゃう?」

「待って藍里。もうちょっと様子を見てみようよ。何か動きがあるかも」


 意気込む藍里を清ちゃんが止めた。ら、でっかいブレスが飛んでいった。

 風圧で髪が乱れる。私だけじゃなくて、紫輝と藍里と青蕾も風に揉まれて、危うく地面に落ちるところだった。


「にゃあああぁぁああぁぁぁぁっ!?」

「ちょいとイサナ! 何やってんだい?!」

「何だと? 狩るのではなかったのか?」


 あんたかい勇啼さん。


「狩る前にどう動くか様子を見るってたった今こいつらが話してたじゃないか! なのに全滅させるなんてどういうつもりだい?!」

「そうだったのか。すまない、聞いていなかった」

「怖かった……。生きた心地がしにゃかった……」


 ああ、ニャルクさんの毛が逆立っちゃってる。


「もうパパ! びっくりするじゃんか!」

「凄い……、魔物の群れが一撃だ……」

「私もあれぐらいできるようになるかな?」


 怒ってるのは藍里だけか。


「すまない、お前達。怪我はないか?」

「それは大丈夫だけど……」

「せっかく狩るんならあたしも狩りたかったのに!」

「パパだけずるい。次は僕達が行くからね?」

「ああ、任せよう」


 呑気に話してるけど、あれどうすんの? 黒焦げになったドラゴン達とグリフォンが地面に落ちていくんだけど。無視? 無視なの?


「そのさん、あれどうします?」

「はあ……。とりあえず降りよう。魔物の死骸を回収するんだ。あたしが調べるから。イサナ、地面に降りとくれ」

「それは無理だ。真下の地面には大きな亀裂がある。俺が降りればさらに地面は割れて、死骸を呑み込むだろう」

「それは困る。ランリ、背中に移らせておくれ」

「わかった」


 藍里が近づくと、勇啼さんからそのさんが跳び移った。私も降りよう。降りられない勇啼さんと放心してるニャルクさんには周りを見張っててもらおう。


「あれ? 青蕾と清ちゃんは?」

「下にいるよ」


 藍里が教えてくれて、下に目をやれば、泥だらけの青蕾が地面の上でもがいてた。さっきのブレスの風圧で落ちたのか。迎えに行かないと。




 ▷▷▷▷▷▷




 地面の亀裂に片足が嵌まってもがいてる青蕾と、助けようと右往左往してる清ちゃんを救出してから落ちた群れの方に向かって、まずはグリフォンの死骸を確認した。

 見た目からして異質な部分は感じない。紫輝達がたまに狩ってくるグリフォンとなんら変わらない。こいつがなんでドラゴンなんかを従えてるんだ? なんて不思議に思ってたら、そのさんが死骸の上に飛び降りた。

 毛並みの中を縫うように這い回ってる。それを見た清ちゃんもグリフォンに飛び乗って、くんくんとにおいを嗅ぎ始めた。

 1分もしない内に、そのさんが何かを見つけた。尾先で清ちゃんに指示を出す。

 近寄った清ちゃんが、グリフォンの毛並みの中から前足で掴み上げたのは、魔物のものとは異なる、細くて黒い毛束。

 明らかに、私の髪の毛だった。

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