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第306話 冬到来

ご閲覧、評価、ブックマーク、いいね、誤字報告、ありがとうございます。

「えっと、ドライフルーツと果実は充分もらったし、ジュースとジャムもたくさん買った。ペリアッド町の“伝書箱”の登録番号も確認済み……。ああんもう! ほしい物が多過ぎて何が足りにゃいのかわかんにゃい!」

「お手紙いただければいつでも送りますよ?」


 福丸さんの調子がよくなってからも森でのんびり過ごしてたミレーニャさんだったけど、初雪がちらつく頃にはさすがに帰らないとってことになって、現在荷造り中。新しいマジックバッグをもう1つ追加購入して、これでもかってぐらいうちの商品を買い込んでる。王都でお世話になったことと、ダンジョン《トレーシャの雫》を教えてくれたことのお礼にかなりの量の果実を渡した後だったのに、全然足りにゃいわよ! なんて騒ぐもんだから困った困った。


「ミレーニャさん、ほどほどにしにゃいと食べ切る前に腐らせちゃいますよ?」

「ニャルク、このあたくしがそんにゃヘマするわけにゃいでしょう? ちゃんっと食べ切ってみせるわ!」

「太るぞぉ……?」

「お黙りイニャト!?」


 こらこら、喧嘩しないの。


「グルミャウ?」

「ばっふ?」

「ああ、芒月にバウジオ。気にせんでいいよ。ただのじゃれ合いやから」

「「じゃれてにゃい!」」

「ニャオや、誤解を招く言い方はやめておくれ」


 だってそうにしか見えないんだもの。


「ゴロゴロゴロゴロ」

「ちょ、ちょっとノヅキ、あんまり頬擦りしにゃいで。倒れちゃああああ!!」


 あれま、ミレーニャさん転がってっちゃった。体格差があるなんてもんじゃないからな。


「ノヅキ、それ以上は駄目ですよ。あなたの前足だと簡単に彼女を踏み潰せてしまうんですから」

「フクマル、しれっとえぐいこと言うんじゃないよ」

〖ミレーニャ、ノヅキのお手手に隠れちゃえる大きさだもんね。踏まれないよう気をつけてね?〗

「今さらだわククシニャさん……」


 ほんとにね。もう帰るって時に言われても。


「ミレーニャ、いつ帰るの?」

「セイライ、今日の昼過ぎって言ってたじゃん」

「聞いてなかったのか?」

「私、うとうとしてたの見たよ」

「なあなあ、次はいつ遊びに来るんだ?」

「面白いダンジョン教えて!」

「今度は僕も行くからな?」


 ぞろぞろと仔ドラゴン達がやってきた。その後ろには美影さんと勇啼さんがついてきてる。


「私達の虹。ミレーニャさんの邪魔したら駄目」

「お前達。遊びたい気持ちもわかるが、やめなさい。彼女にはやらなければならない仕事があるのだから」

「「「「「「「はーい、ママ、パパ」」」」」」」


 うーん。赤嶺達、立派に育ったとはいえまだまだ仔どもだな。親に素直に従うなんて。この仔ら反抗期って来るのかな?


「おーい! ミレーニャー!」


 お、清ちゃんが戻ってきた。いいのがあったかな?


「あらキヨちゃん。どこに行ってたの?」

「これを拾いに行ってたんだ! あげる!」


 急ブレーキをかけるみたいに、地面をえぐりながら清ちゃんは降りてきた。優雅さの欠片もないな。龍なのに。


「これはにゃあに?」


 頭を下げた清ちゃんの角に、小さな麻袋が結びつけてある。それどうやって結んだの?

 麻袋を受け取ったミレーニャさんが、慎重に口を開けていく。中の物を落とさないように逆さにすると、ころん、と1粒肉球に落ちた。


「これって……」

「神宝石だよ。それはトパーズだね」

「漣華さんに、ミレーニャさんに渡す用の神宝石を拾う許可をもらったんです。で、清ちゃんに選んで持ってきてほしいって頼んでたんですよ」

「加工は王都でしてもらってね? 漣華もニャオ達が持ってる神宝石は全部王都に持ってってたからさ」


 ミレーニャさん、神宝石から目を離せないでいるよ。さすがにいきなり過ぎたかな。


「わ、わ、渡すってことは、くれるってことでいいの? で、でも、こんにゃに貴重にゃ物をいただくわけには……」

「いいんですよ。ミレーニャさんにはお世話になったんで」

「そりゃああにゃたが王都にいた時はそれにゃりにお世話はしたつもりよ? だけどこっちに来てからはあたくしの方が世話ににゃりっぱにゃしじゃない。フクマルさんの毒に関しては全然役立てにゃかったのに、神宝石までもらおうだにゃんて……」


 うん、ミレーニャさん、それはもういいんだ。

 福丸さんの毒は蒼い林檎を食べ続けてたら治ったっていう説明で納得してもらったけど、本当はバレンドの黄樹はあったんだから。ちょっと訳ありでみんながたどり着けなかっただけなんだから。ミレーニャさんのおかげなんだからいいの。


「受け取ってください。この森に来た記念として、ペンダントトップでも腕輪にでもしてくださいな」

「……ピアスにするわ」


 もう決めたのか。さては受け取った瞬間から考えてたな?


「ミレーニャの好きにしていいんだよ。もうミレーニャの神宝石だから」

「金に困れば売るというのも手じゃのう」

「高値がつきますよ。神宝石にゃんで」

「お黙り兄弟猫! 売るわけにゃいじゃにゃい!」


 シャーッ! って威嚇しながらミレーニャさんは神宝石を麻袋に戻してマジックバッグに突っ込んだ。そうだね。いざって時は換金してもいいね。このタイミングで言わないけど。そこまで馬鹿じゃない。


「なあキヨちゃん、レンゲ姉ちゃんとマサオミおじさんはどこに行ったんだ?」


 赤嶺が清ちゃんに聞いた。確かに姿がない。一緒に神宝石を拾いに行くって言ってたのに。


「ちょっと調べたいことがあるからって、神宝石を拾った渓谷の向こうの方に飛んでいったよ。僕だけ先に帰ってきたんだ」

「調べたいこと? 気になりますねぇ」


 福丸さんが前足を鼻先に当てた。魔力を探ってるのかな? 漣華さん達、どうしたんだろ。


〖ほら、もういいから早くお昼ご飯食べちゃいなさい。ミレーニャがいつまでも出発できないじゃないの〗


 そうだったそうだった。お昼ご飯食べてから王都に戻るんだよね。


「アースレイ達、ご飯の準備できたかな?」

「焼き肉にするって言ってたよね?」

「お肉大好き!」

「パパ、僕達が狩った魔物の肉も焼いてくれるって言ってたから、たくさん食べてね?」

「ママもだよ? ママもいっぱい食べてね?」

「楽しみだ」

「ありがとう」

「……ニャルクさん、イニャトさん、早くシシュティさん達のところに行きましょう。絶対肉足りない」

「そうですね。急ぎましょう」

「大食漢が多いと大変じゃわい」


 全くだよ。まあそんな食事も楽しいけどね。

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