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第294話 一休み

ご閲覧、評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。

 食事の準備をしてると黄菜達が帰ってきた。周辺に魔物はいないらしいから、とりあえず安心だね。まあセーフエリアには入ってはこれないんだけどさ。

 用意したのはアメリカンドッグだ。豚系の魔物を赤嶺達がたくさん狩ってきたから解体してもらって、ソーセージにしたものに衣をつけて揚げたんだけど、畑で採れたトマトとこっちの世界の調味料で作ったソースをかけてある。


『◎○! △○~♪』

「ほれ、美味いのはわかったから落ち着いて食べんか。喉に詰まらすぞ?」

『◎◎○△○、□○◎?』

「これはニャオさんのところの自家製だからどこにも売ってにゃいわよ?」

『✕▽?!!』

『✕▽?!!』

「ねえねえお兄ちゃん達、乾杯しようよ乾杯!」

「ミオリもキヨちゃんも咥えろよ。乾杯しようぜ!」

「ちょっと待ってー」

「乾杯は食べ始める前にするものだよ?」

「細かいこと言うなよ。ほらかんぱーい!」

『◎◯〜!』

『◎◯〜!』


 ……打ち解けるの早くない?


「ずいぶん馴染みましたね……」

『敵ではないとわかってくれたし、何よりダイチ君達から歩み寄っているからね。若者が集まったパーティーだから、種族さえ考えなければ彼らは親しくなれるさ』


 種族さえって、それは横に置いたら駄目なんでは? ドラゴンぞ? 橙地達。


「君達、食べ終えてからでいいから何があったのか説明してくれないかい?」


 アメリカンドッグを2本平らげたアースレイさんが聞いた。アースレイさんは私の隣を陣取って、反対側にバウジオを待機させてるからさっきまでの不機嫌さはない。

 アースレイさんの質問に、箸休めの林檎ジュースを飲んでた男性冒険者が手を挙げた。


『✕○□、□✕✕◎……。○□▽』

「そうか……。ニャオさん、彼らはどれだけ下ってもボス部屋にたどり着けなくて、途方に暮れたまま12階で全員の意識が途切れたんだって。無意識のまま気づけば13階で、怖くなってここまで駆け下りたはいいけど、魔力も体力も尽きかけてへとへとになってセーフエリアを探してたらダイチ達に見つかったらしい」

「ここは地図にない階層だし、不安だったでしょうね」

『ここからは私達が共に行くからね。あと2階分下ればボス部屋だ。ボスもこちらに任せてほしい』

「ここまで来てと悔しく思うじゃろうが、今回のボスはニャオ達に譲るがいい。今は生きて帰ることだけを考えよ」

「次にダンジョンに行くにゃら、ここみたいにたまにしか冒険者が立ち入らにゃいようにゃ場所は避けた方がいいわね。内部がどんにゃ変化をしてるかわからにゃいのは身をもって学んだでしょう?」

「頻繁に人が出入りしてるダンジョンなら変化にも気づきやすいってことだよね?」

『そうだよキヨちゃん。慣れない内は安全なダンジョンで経験を積むべきだ』


 経験豊富な面々が言えば、《レントル・ラージュ》のみんなは涙ぐみながら頷いた。


「なあなあ、ちょっと昼寝してかないか? おいら眠くなっちゃった」


 ふわぁ、とあくびをしながら橙地が言った。


「休憩なしで走ってきたもんなぁ。アースレイさん、外は何時ぐらいです?」

「もう夜だよ」


 お? 夜? そんなに経ってたのか。


「それにゃら今晩はしっかり休んで、明日の朝最下層を目指そうではにゃいか。もともと儂らは2日かけて踏破する予定じゃったんじゃし、悪い案ではにゃいと思うが」

『そうだね。私達は大丈夫でも、《レントル・ラージュ》のみんなが大変だろうから、ゆっくり寝てもらおう。ここはセーフエリアだから魔物も入ってこない。ここ以降休める場所もないからね』

「杖のギルマスも待ってるし、急ぐに越したことはないけど、そのせいで怪我をされたら困るしね」


 橙地じゃないけど、あくびを見てたら私まで眠くなってきた。昼寝じゃなくてガチ寝したい。


「念の為見張りを立てた方がいいかしら?」

「それならぼくが起きとくよ。まだ眠くないし」

『私も起きているよ。一晩寝ずに過ごすなんて、エルフには造作もないことだからね』


 まじか。強いなエルフ。


「それじゃあ毛布を配りましょう。人数分持ってきてるんで」

「貸して。僕が配ってくるから」


 そう言うや否や、アースレイさんはマジックバッグから取り出した毛布をパーティーの方にさっさと持っていってしまった。そんなに近づいてほしくないのか。あからさま過ぎる……。政臣さん、その微笑みやめて。




 ▷▷▷▷▷▷




 腹這いで眠り始めた緑織のお腹に体を預けて瞼を閉じる。アースレイさんは隣で寝てる橙地を枕にして、イニャトさんは私の膝。傍で丸まってるバウジオの上にはミレーニャさんが丸まってる。鏡餅だな。

 黄菜は仲よくなった女性冒険者2人とお喋りしながらうとうとしてた。男性冒険者達は羨ましそうにしてたけど、寄りかかる度胸はないみたい。

 お腹に頬っぺたを預けてくるイニャトさんがあったか過ぎて、意識が遠退いてくる。寝れるーと思ったらいつぞやみたいに景色が見えてきた。

 目の前に黄樹がある。1本だけじゃなくて何本も。ダンジョンの中じゃなくて、外の黄樹だ。まだ地上に生えてた頃なら、何百年も前の景色のはず。

 枝の間を駆け回る茶色い影がある。クエシュ属だ。さっき見た奴と体の色が違う。個体差か?

 クエシュ属は1体だけじゃなくて、4体いた。全員が茶色だ。顔も穏やかで、襲ってきた分身みたいな凶暴さは感じられない。仲間がいるから安心し切ってるのかも。

 1体のクエシュ属が黄樹の花の匂いを嗅いだ。いい匂いなのかうっとりしてる。他のクエシュ属も真似をして嗅ぎ出すと、黄色を吸い取ってるみたいに全員の毛色が変わり始めた。

 茶色だったクエシュ属が黄色に染まっていく。全身が黄色になったクエシュ属達は、枝間を飛び交って遊び始めた。

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