第29話 お世話になります!
ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。
5分も歩かない内に開けた場所に出た。苔だらけの石は見当たらないし、地面もしっかりしてる。福丸さんが前足でそこを指した。
「ここなら水辺も近いですし、わたくしの寝床の川向かいなので大抵の魔物は近寄ってきません。よろしければここにテントを張られてください」
「いいんですか?」
「はい。お隣さんになっていただければわたくしも嬉しいです」
安心して眠れる場所に、豊かな環境。魔物に襲われる心配もないなんて、私にとっては願ったり叶ったりだ。
「ニャルクさん達はどうですか?」
足元を見れば、ニャルクさん達がキラキラした顔で鼻をクンクンさせていた。
「とてもいいです! こんにゃところに住めるにゃら最高ですよ!」
「林檎に桃に蜜柑、ククルにモラにシュテム……。ああ、どんにゃ果実も育てられそうじゃ!」
「ばっほいばっほい!」
「気に入ったみたいです」
嬉しそうなみんなに私も嬉しくなって福丸さんを見上げれば、とても優しい顔をしていた。
「では決まりですね。これからよろしくお願いいたします、ニャオさん」
「……よろしくお願いします」
あんたもそう呼ぶんかい。
▷▷▷▷▷▷
日が暮れ始めた頃、福丸さんは見回りに行くと言って森の中に消えていった。私達がいる初めての夜だから、念には念をってことらしい。ありがたやありがたや。
残された私達はテントを張った後、イニャトさんに木の苗を1本ずつ渡された。
「これを好きにゃところに植えるがよい。ガジューという木で、幹は太く枝が広がるように育つからの。枝間に寝床を作るのに丁度よいんじゃ。儂の魔力を込めてある故、数日で立派にゃ成木とにゃるぞ」
福丸さんがいるから安心とはいえ、地面にそのままな寝るのは嫌なのかな?
みんなと離れ過ぎないように、陽当たりのいい場所を選んで穴を掘る。苗を置いて土を被せてから、水をあげようと竹筒の蓋を外して手を止めた。
ユニークスキルって、川とか海の水じゃなくてもいいのかな? ちょっと試してみるか。
竹筒から水をチョロチョロ流しながら、もう片方の掌に当てつつ土にかける。
家を造るのに丁度いい木に育ちますように。
作業を終えてから夕飯作りに取りかかる。といっても、フアト村で買った携帯食料とスープぐらいしかないから結構質素だ。
「明日からまた狩りをしましょう。やっぱり肉が食べたいし」
「儂らはパイアを食べたことがにゃいからのう。どうにかして捕まえてみたいもんじゃ」
「僕はスパルニャが気ににゃります。本で読んだことがあるんですが、見事にゃ金色の羽をしているんだとか」
スパルナって、話を聞く限り鳥っぽいけど、だったらあの木の実を使えばうまく捕まえられるかな。家の木が育ったら根元で何本か育ててみよう。種は取ってきてるしね。
スープを飲み終わった頃、福丸さんがエアレーっていうヤギみたいなでっかい魔物を取ってきて一騒動起こってしまった。手放しで喜んでたのはバウジオだけ。半狂乱でながーい角を齧ってたよ。
ようやく家造りに取りかかれます(笑)




