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第270話 役目

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「ニャオ、もういい?」

「うん、確認できた。ありがとな」

「じゃあ王都から出るね?」

「頼むわ」


 大きくなった清ちゃんに跨がって王都を一通り見回ってから、城壁の外を目指す。

 意識を失くしてる時に見た光景には漣華さんと美影さんがいた。そして見たことのない白いドラゴンが2体。片方は漣華さんとどことなく似てて、もう片方は厳つい顔だった。


「ねえニャオさん、どこに行くの?」


 後ろからお腹にしがみついてるミレーニャさんが、飛ばされないように帽子を押さえながら聞いてきた。


「仲間のところです。王都から出ないといけないんで、門の近くで降ろしますね」


 深夜だけど門番はいるよね。申請しないまま出ていったらお尋ね者になっちゃうかもしれないからしっかりやっとかないと。


「待って待って、待ってよ。王都から出てどこへ行くの? 夜に行かなきゃいけにゃいの? 危にゃいわ」

「今すぐじゃないといけないんです。急がないと間に合わない」

「急がにゃいといけにゃいんにゃら、どうして王都を見て回ったの? 何か探してたの?」


 見えた光景はもう1つあった。王都のところどころで光る石が割れるっていうもので、直感でこれは現在の出来事じゃなくて少し未来なんだと思った。


「ミレーニャさん、王都中に等間隔で置かれてる石って何かあります?」


 そのさんから習った気配を探る方法で、清ちゃんの背中から王都全体を見てみれば、一定の距離を開けて円を描く異物を見つけた。それが光る石なんだろうけど、なんの石だ?


「石? 要石のことかしら。王都の内部と外部に置かれてる物で、魔物の侵入を防ぐ為の大切な魔石にゃの」


 ということは、その要石を壊せる奴が近づいてるってこと? だとしたら、私は王都に残った方がいいのか? 漣華さんはもちろんだけど、美影さんもそこそこ強いからそこらの魔物相手に遅れを取ることはまずないはず。漣華さんに似たドラゴンはたぶん弟のゾォガって奴だし、もう1体のドラゴンは美影さんと仲いい雰囲気だったし……。どうしよう……。


『◎✕! □□✕!』


 ん? アーガスさんの声がするな。どこからだ?


「ニャオさん、副隊長さんが追ってきてるわ」

「え? 空を?」


 どうやって? っとミレーニャさんを振り返れば、後ろの方を前足で指してた。あ、騎竜隊と一緒についてきてる。じゃあ丁度いいや。


「清ちゃん、アーガスさんの隣を飛んでくれる?」

「わかった!」

「ミレーニャさん、アーガスさんに伝えてもらっていいですか? 王都の外にある要石を調べるから出ますねって」

「申請するんでしょう? 申請するわよね?」

「アーガスさんから許可をもらえればそのまま出ます」


 漣華さん達の方に行くか、王都にとどまるか決め切れない今、ともかくここの安全を確認したい。後で怒られたり罰金払えって言われたりするかもだけど知ったことか。出るったら出るぞ。

 ミレーニャさんがアーガスさんに説明してくれてる間に城壁が近くなってきた。探索の範囲を広げる。城壁の中にある要石よりも強い反応を示す物が、やっぱり円を描くように配置されてる。うん、外のも無事だね。

 門が間近になると、ぽかんとした顔でこっちを見上げてる門番達が見えた。清ちゃんがほんのちょっと高度を下げる。


「門番さーん、ぼく達お外に行ってくるねー! すぐ戻るからねー!」

「ギルドカード見せにゃきゃ受けつけてくれにゃいわよ?!」


 ごめんねミレーニャさん、そんな余裕ないわ。


「降ります? 城壁の上なら飛び降りれそうですけど」

「降りるんならゆっくり飛ぶよ?」

「……一緒に行く」

「いいんですか? 申請は?」

「あにゃた達に連れていかれたって言うからいいわ」

「ええー……」


 こっちのせいにするんかい。まあいいけど。

 門番達に会釈して、城壁を通り過ぎる。要石がある場所に向かおうとしたら、首筋の産毛が総毛立った。


「清ちゃん避けて!」

「わかった!」

「えっ、何? んにゃぁぁぁぁぁぅぅぅぅっ!!」


 長い体をくねらせて清ちゃんが蛇行飛行する。後ろからはアーガスさんと騎竜隊の怒号が聞こえてきた。この圧、覚えがあるぞ。


「ほう、死角からのブレスを避けたか」


 見下したような声が降ってきた。こっちも聞き覚えがある。


「それなりの場数は踏んどるけぇな。舐めてかからんでくれる?」


 清ちゃんが空中で振り返る。ミレーニャさんがガタガタと震えて、騎竜隊は城壁の上に降り立った。


「私がここにおるってわかってきたんか? シラド」

「小童ごときが我を呼び捨てにするとは……。無礼者めが」

「妹さんからの許可はもらっとるよ」


 苛立つシラドに茶化すように言ってやれば、想像通り威嚇された。気が短いなぁ。

 堂々とした様子でシラドが地面に降りる。少し離れたところに清ちゃんも降りた。


「ユゼのもとへは行かせん。我が相手になろう」


 ここで? それは困る。


「もう少し離れようや。王都の真横ぞ?」

「気にしてやる義理はない」


 まずいな。要石はユルクルクスの攻撃を防げるのか? 防げなかったら大変なことになるぞ。


「私が気になる。移動に応じんのなら、あんたは無視して漣華さんのところに行かせてもらう」

「我が許すとでも?」

「許しなんぞいらん。あんたが人間を気にせんように、私もあんたを気にせず向かうだけやけな」

「ならば貴様が去った後に人間共を滅ぼしてやろう。この程度の結界をやぶることなぞ我には容易いぞ」


 そう来たか。ちくしょうめ。


〖私の結界はどうかしら?〗


 声がしたと思ったら、背後から首にゆるりと手が回された。後ろを見れば、いつもと同じ微笑みを浮かべたククシナさんがいる。

 魔法陣が浮かび上がって、ミレーニャさんの姿が消える。反射的にアーガスさんがいる方に目を向けたら、城壁の上でミレーニャさんが騎竜隊の隊員に抱き抱えられてた。移動させてくれたのか。助かる。


「……野良精霊か」

〖知っててくれて嬉しいわ。はい、結界のできあがり〗


 城壁ごと囲むように、ククシナさんの結界が張り巡らされた。騒ぎを聞きつけた騎士団の団員達が城壁から出てくるけど、結界から外には出られないみたいで立ち往生してる。あ、エルゲさんとイヴァさんもいるな。シラドを凄く警戒してる。そりゃそうか。


〖これで王都は大丈夫。さ、暴れましょう?〗

「暴れるー!」

「楽しそうですね」


 いい状況では全くないんだけどね。

 マジックバッグから取り出した“バンパイアシーフの短剣”を抜いて、弓に変える。漣華さん達はきっと大丈夫だ。私はこっちを無事に終えよう。

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