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第27話 水神について

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 魔法陣を通り抜けた先は、離れ小島が浮かぶ湖のほとりだった。かなりの広さがあるけど、こんなのつくれるんだ。


「ほれ、こっちに来い」


 魔物に呼ばれて湖のすぐ近くまで行くと、離れ小島に石が置かれているのが見えた。

 墓石……?

 視力はよくも悪くもないからあんまり見えないけど、なんかそんな雰囲気があるな。

 そんなことを考えながら石を眺めていたら、魔物が顔を寄せてきた。


「名を名乗れ」


 名前を知りたいならまず自分から名乗れ、なんて漫画の常套句は使わない方が身の為だな。


「儂らもかの?」


 イニャトさんが聞けば、当然だろう、と魔物が頷く。ニャルクさんが背筋を伸ばした。


「僕はニャルク。エメラルド王国の生まれです」

「儂は弟のイニャト。こやつはバウジオじゃ」

「ばっふ!」

「私は星峰直央。異世界の日本から来ました」


 名乗っていくと、魔物と熊が順番に顔を見下ろしてくる。


「わたくしはベアディハングという魔物です。あなた方のように個体を示すものは特にありませんが、人間達からはシウァやナヌークと呼ばれることがあります」

「妾は見ての通りドラゴンじゃ。クラオカミ様の御力で同胞とはちと違った姿となっておるがのう」


 魔物が誇らしげに言った。そりゃいいけど名前は?


「では、僕達はあにゃた方をにゃんとお呼びすればよいのでしょう?」

「好きに呼んでくれて構いませんよ。皆さんそうされてますから」


 そうは言われてもなぁ。熊、熊、熊……。


「……福丸」

「フクマル? 何か意味がある言葉ですか?」

「誰よりも幸福って意味です」


 ごめんなさい、実家近くで飼われてた大型犬の名前です。


「いい名前ですね。では皆さんはわたくしをフクマルと呼んでください」

「はい、よろしくお願いします、フクマルさん」

「よろしくのう」


 兄弟猫と福丸さんが握手をしていると、おい、と魔物が声をかけてきた。


「妾はなんと呼ぶ?」

「え? あなたもですか?」

「早う呼べ」


 こっちもか~。でも犬って感じじゃないんだよね。ドラゴン、龍、竜……。


「じゃあ、漣華で」


 魔物の体を見て、これだ、と思った。


「レンゲとな?」

「あなたの鱗にいろんな色が反射するのが、川面に落ちた花びらみたいに見えるから、さざなみのはなって意味で漣華です」


 うん、見た目通りの名前だ。うちの田んぼによく咲いてた花も蓮華だし、響きも悪くないでしょ。


「聞いたか! 妾はレンゲじゃぞ!」

「よろしくお願いしますね、レンゲ。わたくしはフクマルです」


 昔からの知り合い相手に名乗り合うのってどうなんだろ。今までなんて呼んでたのかな。


「あの、聞きたいことがあるんですけど」


 楽しそうなところを中断するのは申し訳ないんだけど、確認したいことがあるんだよね。


「漣華さんは異世界の水神様の加護をもらったって言ってましたよね? それって神様同士は世界が違っても交流があるってことですか?」


 まず知りたいのはここ。もし交流があるなら元の世界に戻れる可能性だってあると思うんだけど。


「いや、そうではない。隣接している世界の神ならばまだしも、遠く離れた世界の神とは創造神ですら語らうことはできぬと聞く」

「神々は御自身が属する世界の神ですからね。そこを離れることは基本できませんし、万が一離れてしまえば御自身への信仰心のない世界へ行くことになります。そうなれば神は神としての形を保てなくなってしまうんです」

「自身を神と認識せぬ者達の前では、神も当たり前のように吹き流れる風と同じじゃ。信仰心あってこその神ぞ」


 そっかぁ、じゃあ私はこっちで生きてくしかないってことかな。


「妾が異世界の神の加護を得られたのは、こちらの世界に召喚された人間が加護を既に持っていたからじゃ。そしてその人間はヤオヨロズの神がいるという世界から来た者でな。己が認めた人間を拐われて怒った水神が、同じ水神に自身を引っ張り戻すよう頼んでこの世界まで来たらしい」

「わたくし達が生きる世界には、水神は一柱、火神も一柱、雷神も一柱と、1つの属性には一柱しか存在しません。しかしその人間の故郷では、水神と言っても雨を司る神や川を司る神、果てには田畑を司る神までいると聞いて驚きました」

「400年前に喚ばれた異世界人に加護を与えていたのがクラオカミ様でな。その者を連れ戻せないと知り、守るならば加護を授けると妾に仰られたのだ」


 ほぁ~、そんなことがあったんだ。え、でも待ってよ。私神職とかじゃないんだけど。生まれだって普通の家だし。


「私、元いた世界でも神様に関わるようなことしてないんですけど、加護があるんですか?」

「あるぞ。ほれ」


 漣華さんが軽く首を振ると、目の前にステータスがぽんと出てきた。お下品教会だと何も書いてなかったのに、今は少し文字が書かれてる。


「ほう、称号が〔水神の祠守〕、ユニークスキルが〈水神の掌紋〉、そして水神の加護持ちですか」


 福丸さんが覗き込んでくる。巨体が覆い被さってくるともの凄い圧だ。


「確かに近所の川の水神さんにお供えとかしてましたけど、祠守なんて大層なものじゃないですよ」

「どのような規模であれ、祀られる神が認めれば加護は与えられるのじゃ」


 はぇ~、そんなもんかね。

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