第3話 喚んどいて……
読んでいただきありがとうございます。
おじさん達を押し退けたお爺さんが、杖の石を女の子の額にかざすと光る板のようなものが浮かび上がって、その中に煌めく文字が綴られていく。あれって異世界小説でよくあるステータスを確認するやつかな。
それを覗き込んだおじさん達が色めき立って、女の子の肩をしっかりと掴んだり、顔を近づけてにかっと笑ったりしてる。
……場所が場所なら完全にセクハラだな。女の子完全に引いちゃってるよ。
次に男の人。同じくステータスが浮かぶけど、そこに走る文字の煌めきは女の子より少ない。
おじさん達の反応と言えば、うんうんと頷いたり、何か考えたりと様々だ。
『✕✕○△』
『□○○✕□……』
どうやら、女の子は大当たり、男の人はそこそこって感じかな。
そして最後に私。正面に立ったお爺さんはまあまあ背が高くて、ずっと見上げてたら首が痛くなりそうだ。
『……』
あれ、始まらないな。
お爺さんはしわくちゃの顔でじぃっとこっちを見下ろしたまま動かない。おじさん達がざわつき始める。
なんとなく目をそらせないまま1、2分が経って、ようやくお爺さんは私の額に杖をかざした。
『○△……』
ぽわっと光る板が浮かぶ。真下から見て初めて板の中が淡い光で区切られていることに気づいた。職業とか、保有スキルとか、称号がかかれる欄だろうな。緊張する……。
『……』
「………」
『…………』
あれ? 何も出ない?
『……はぁ』
お爺さんがため息をついた。……ため息はわかった。
『✕✕▽』
杖を下ろしながらお爺さんが言えば、ステータスが靄のように霞んで消える。
お爺さんが離れるのと入れ替わりに近づいてきた猫耳おじさんに手を掴まれて、強く引っ張られた。
「痛っ! ちょっと痛い! 痛いって!」
あまりの痛さに声が出るけど、猫耳おじさんはお構いなしに引きずっていく。
扉をくぐって階段を上がり、長い廊下をずるずるずるずる……。不思議と誰にも出会わなかった。正直ありがたい。
立ち止まったと思ったら、さっきくぐった扉より立派な扉があった。猫耳おじさんが大袈裟な身振りで叫ぶと扉が勝手に開いていく。
魔法で開けたってこと? それとも魔法でしか開かない扉?
「うわぁ……」
扉の向こうの景色につい声が出るけど、感動したからじゃない。
シンメトリーに造られた庭は確かに見事だけど、装飾が最悪。
まず地面が金色。眩し過ぎる。
花壇は大理石みたいな石を組んであるけど、継ぎ目が金色。ついでにそこに咲く花も金色。なぜ。
銅像ももちろん金色。手入れされてる木の幹も金色。ぶら下がる実も金色。
しまいには噴水から吹き出す水までわずかに金色。
……下品。下品が過ぎるよここ。
猫耳おじさんに引っ張られて金色の道を進むと、これまた金色のでっかい門が見えてきた。
……こういう時の嫌な予想は当たるものだね。
『✕□✕▽○! ✕○!!』
ろくな抵抗もできないまま、門の外に放り出されて両手をつく。狙ったかのように転がっていた石が刺さって血が滲む掌に顔を歪めている間に、門は固く閉ざされてしまった。
……と、思ったらわずかに開いて何かがぽんっと放られる。
それが地面に落ちると同時に門が閉まって、走り去る足音がする。もう開くことはないな。
「バッグ?」
土を払って、血がつかないよう気をつけながら放られた物を拾い上げれば、少しくたびれた茶色のバッグだった。
異世界だし、マジックバッグかもしれない。くれるの? これ。
「てゆーか、ここどこ?」
閉ざされた下品な門の前には左右に延びる道しかない。森の中の奥深くって感じだ。
「どーすりゃいいのよ……」
太陽は高い位置にある。でも、見える範囲に村はおろか、民家もない。
詰んだわ、これ。