第229話 トラブル
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夕ご飯はガルネ騎士団に招待してもらった。テント生活だから凝った物ではなかったけど、それでもペリアッド町で売ってる携帯食料とは比べ物にならないくらい美味しかった。
四景のララカに来てすぐに魔虫狩りに飛び出したから、騎士団やサスニエル隊の人達とまともに顔を合わせたのはこの時が初めてで、ヴァルグさんとルシナさんにもやっと再会できた。元気そうで何よりだけど、ヴァルグさんを見るとヴェイグさんの豪快な笑顔がちらついて笑いそうになって仕方がない。隠してたつもりだけど速攻でバレて頭をワシワシされた。
食事のお礼にと、大量に持ってきてた果実を出せば凄く喜ばれた。ユーシターナの時に差し入れしたサスニエル隊のみんなはもちろん、ガルネ騎士団のみんなも群がるように食べてた。なんでもアシュラン王国の御中元であるエジュカの時に食べたみたいで、陽気な隊員がちょっと期待してたって言ってるってアースレイさんから耳打ちされた。喜んでもらえてよかったよ。
「ニャオさん、マサオミさんからの言伝てですが、明日は夜明けと共に討伐に出てほしいそうです」
騎士団員達への林檎講義を終えた福丸さんが、私達のところに戻ってくるとそう言った。
「ずいぶん早いんですね」
「ええ、ニャオさんのおかげで四景のララカは夏本来の姿になりましたが、まだこの土地に住むべきではない魔物が多数残っています。早朝から動くモノもいるので、それの討伐をお願いしたいそうです」
「わかりました。アースレイさん達はどうします? 行きます?」
「もちろんだよ。ねえ姉さん」
『◎○』
Sランク昇格がかかってるもんね、そりゃ頑張るよね。
「赤嶺達は? 一緒に行く?」
「もちろん行くぞ!」
「最近早起きしてるから余裕だもんね!」
そうかいそうかい。こりゃあ頼もしいね。
「それじゃ、歯磨きとうがいして早く寝ろうな。寝坊助は置いてくぞ?」
「言われてるぞーダイチー」
「起こしてくれよ」
「自分で起きなよー」
ぶー、と頬を膨らませる橙地に、近くにいた騎士団のみんなが笑ってた。最初はめちゃくちゃ警戒されてたけど、だいぶ打ち解けてくれたみたい。ドラゴン達も一緒に行くって事前に知らせてはいたけど、実際うちの仔らを見た騎士団員達の、ほんとに来たよ、的な目はしばらく忘れられそうにないな。
▷▷▷▷▷▷
「ニャオさん、ニャオさん起きて」
バウジオと清ちゃんと一緒にテントで眠ってたら、美影さんの控えめな声に起こされた。外はまだ暗い。夜明けはまだだろうに、どうしたの?
「美影さん、どうしたんです?」
清ちゃんを起こさないようにバウジオの背中に乗せて、起きてしまったバウジオの頭を撫でてからテントを開けると、不安げな顔の美影さんがいた。
「キイナとシキが行ってしまったの」
「行ったって、どこに?」
「四景のララカに。止める間もなかった。ごめんなさい」
わーお、予想外のトラブル発生だ。
「何かあったんですか? 他の仔らは?」
〖みんな寝てるわ。起きたのはあの2人だけよ〗
あ、ククシナさんこんばんは。
〖クァーディーニアにキイナ達を追いかけてもらったわ。フクマルはマサオミとガレンを呼びに行ってる。あなたはどうする?〗
「クァーディーニアさんを追います。黄菜達を連れ戻さないと」
何がいるかわからない場所に、ドラゴンとはいえ仔どもだけで入っていいわけがない。夜なんか特に。
〖シキが魔物の気配に目を覚まして、隣で寝てたキイナを誘って飛び出していってしまったの。ほらあの仔、ソノに周囲の気配の探り方を習ってるじゃない?〗
「それで気づいたんですね」
慣れない土地だし、敏感になってたわけか。まさかこんなところで仇になるとは。
「私も起きたけど、呼び止めたり声を上げたりしたら他の仔達を起こしそうだった。そうなればみんなシキ達を追いかけてしまう。だから止められなかった」
「そうですね、赤嶺達なら追いかけるでしょうね」
きょうだい同士の絆が強い仔らだもの。危ないとわかってる場所に2人だけで行かせないよ。
「バウジオ、お前は清ちゃんと残ってくれる? 何がおるからわからんけぇ、絶対についてきたらいけんよ?」
「くぅーん……」
「うちらは大丈夫やけぇ、な? 清ちゃんを頼むで?」
「くぅん。わっふ」
うん、いい返事。
音を立てないようにマジックバッグを取って、美影さんを振り返る。
「美影さんも残ってください。赤嶺達をお願いします」
「うん、見張っとく。ニャオさん、2人をお願い」
はい、任されました。
「ククシナさん、行きましょう」
〖うん、気をつけてね〗
了解でっす。




