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第225話 メンバー

ご閲覧、評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。

「おーい、依頼書が来たっぽいぞー」


 お、来たか。ずいぶん早いな。

 ガレンおじ様と再会した翌朝、みんなで朝ご飯を食べてたら“伝書小箱”の近くにいた橙地が言った。先に食べ終えてたニャルクさんが取りに行ってくれた。


「確かにガレンさんからですね」

「ニャルクよ、読んでくれるかの?」

「ええ、ちょっと待ってくださいね」


 テーブルに戻ったニャルクさんの前にハーブティーを置く。猫舌対策で少し冷まし済みだ。


「えーっと、四景のララカに来てほしい人は、ニャオさんとアースレイさんとシシュティさんで、可能にゃらミカゲさん達ドラゴン組もできれば、と書かれてますね」

「何? ミカゲ達もか?」


 なんと。昨日はそれは聞いてなかったな。


「私? 私も行く?」

「あたし達も?」


 美影さんと黄菜が揃って首を傾げる。さすが親子。


「まあ、お前さんらは収穫に参加せんからよかろう。ニャオを助けてやっておくれ」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」


 仔ドラゴン達も前は参加してくれてたけど、体が大きくなってからは収穫しようとすると翼やら鱗やらがぶつかって収穫前の果実に傷をつけることが多くなっちゃったから、控えてもらってるんだよね。まあ傷入りの果実はジャムとかジュースみたいな加工品とかで売るんだけどさ。お徳用袋に回してもいいし。でも今回ヴェイグさんが卸してくれって言ってきたのは果実そのものがメインだから、余計にお手伝いは頼めないんだなぁ。


「頑張るぞー!」

「セキレイも来るのか?」

「もちろん行くぞ!」

「抜け駆け禁止だよ?」

「みんなで行くのに抜け駆けも何もないだろ?!」


 紫輝達め、まだ禁足地のこと根に持ってるな? そろそろ許してやりなさいよ。


『◎○△□?』

「はい? マサオミさん、どうしました?」


 ハーブティーに蜂蜜を垂らしてた政臣さんが話しかけると、ニャルクさんは目を真ん丸にした。


「ニャオさん、マサオミさんも行くと言ってますが……」

「政臣さんもですか?」


 あらびっくり。こういうことには参加しないかと思ってた。この森に来てから蜂蜜集めか釣りぐらいしかしてるとこ見たことないもんな。


「でも危険ですよ? 異国の魔物が大量発生してるんですから、残ってた方がいいかと……」

「それは問題ないでしょう」


 相変わらず日課の林檎の食べ比べをしてた福丸さんが言った。口の端に欠片がついてるぞ?


「マサオミさんは戦時中も活躍された方ですから、足手まといにはなりませんよ。同行を許可しても損はないでしょう」

「そうですか。あ、でもヴェイグさんに納品予定の蜂蜜はどうします? あれもかなりの量注文されてますけど」

「それも大丈夫ですよ。マサオミさんは毎日大量に集めてますから、それこそ物置木に入り切らない数が溜まっているんです。マジックバッグにしまってあるから気づきにくいでしょうけど」


 そうなんだ。じゃあ安心だね。


「あ、ちなみにわたくしも行きますので」

「ばっふばっふ!」

「何? フクマル殿とバウジオも行くと言うのか?」


 今度はイニャトさんが目を丸くした。まあ私もだけど。


「バウジオ、あんたも来るん?」

「ばっほい!」


 千切れるんじゃないかって勢いで尻尾振ってらっしゃるよこのわんこ。何がバウジオをこんなに駆り立てるのか……。


「ニャルクさん、イニャトさん、バウジオをお借りしても?」

「それは構わんが……。うーむ、フクマル殿まで行くとにゃれば、さらに人手が減ってしまうのう。どうしたものか……」


 確かに、福丸さんは赤嶺達みたいな鱗じゃないから果実に傷をつけることはないし、手先も器用だから梱包を手伝ってもらうこともあるくらいだもんな。てか福丸さんまでついてきたら収穫できる人が兄弟猫だけになるんじゃない? それはさすがに人手が足りなさ過ぎないか?


「それについては問題ないぞ」

「あ、漣華さん。おかえりなさい」


 朝ご飯も食べずにどこ行ってたの?


「そなたらがおらぬ間、妾が収穫を手伝おう」

「漣華さんが?」


 今まで手伝ってくれたことないのに?


「でもどうやってですか? 赤嶺達ですら鱗で傷つけちゃうのに、漣華さんはもっと体が大きいじゃないですか」


 漣華さんみたいなデカブツが果樹の中に頭を突っ込んだら枝が折れるぐらいじゃ済まないよ。


「果樹に近づかずとも果実は採れる。ほれ」


 そう言った漣華さんが首を振れば、1本の桃の木が揺れて果実がばらばらと落ちた。でも地面に触れる前にふわりと浮かび上がって、テーブルの上に綺麗に並んだ。


「浮遊魔法を使えばこんなものよ。妾ならば収穫なぞ朝飯前じゃ」

「凄い、もうこんなに採れた」


 本当に凄いな。今度から納品に間に合いそうになかったら漣華さんにお願いしよう。


「あたしは残るからね。こいつは何かしらへまをしそうだから見張っとくよ」


 のん木にぽっかり空いたうろから顔を覗かせたそのさんが言えば、漣華さんは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 魔石を取り戻してから、そのさんの定位置はのん木のうろになった。あの中で旦那さんの魔石を抱くようにとぐろを巻いて微睡んでる。なんか微笑ましい。


「へまとはなんじゃ。貴様、いつも一言多いぞ」

〖ねえ、私も行っていい?〗


 威嚇してる漣華さんの頭に肘をついたククシナさんが聞いてきた。


「ええ、もちろんですよ」

〖ありがとう。いろんな魔物が見られるなんて楽しみだわ〗


 この依頼を楽しみだなんて思える人は少ないでしょうね。


「ふむ、では森に残るのは儂とニャルクとレンゲ殿とソノ殿か。……だいぶ少にゃいが、レンゲ殿の協力があればにゃんとかにゃるじゃろ。キヨや、お前さんはどうする? ついていくか?」

「まうー!」

「行きたいみたいですね」


 はいはい、一緒に行こうね。


「アースレイさん達、今日の午後には森に戻ってくるんでしたっけ?」


 アースレイさんとシシュティさん、防具を新調するって言って、夜明け前に町に行っちゃったんだよね。店開いてるのかね? どんな素材にするんだろう?


「行き同様、妾が迎えの魔法陣を描く約束をしとるからのう。喚ばれればすぐに迎えに行くわい」

「はい、お願いします」


 まあ、帰ってからのお楽しみだね。何か食べてくるだろうから、デザートでも用意して待ってようっと。

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