第22話 階下へ
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夕方の森を捜し歩いてもイニャトさん達は見つけられなかった。途中ワーウルフとかゴブリンの群れに遭遇したけど、ニャルクさんが風魔法と土魔法で応戦してくれて助かった。
本来なら魔物を倒すとアイテムが落ちるらしいけど、拾ってる余裕がないから無視して進む。そうこうしてる内に下の階に続く新しい洞窟を見つけた。
「また降りますか?」
「降りましょう。イニャト達も僕達が見つからにゃければ降りるはずです。そうすれば最後は地上に続く転送エリアがありますから、外で出会えますよ」
言い切ってしまえるところを見るに、戦闘面でもかなり信頼してるみたい。実際ニャルクさんも風魔法でワーウルフの首ちょっきん、土魔法でゴブリンぺしゃんこにしてたもんな。
下の階は草原だった。春先みたいな気持ちのいい風に、ダンジョンの中だということを忘れてしまいそうになる。
「ニャオさん、見てください」
前足で指された先には全身が青銅色の鳥がいた。
「ステュムパリデルです。銅質の羽が特徴の魔物で、毒系の魔法か武器しか効きません。幸いこっちには気づいてにゃいですから、迂回して進みましょう」
魔物の知識なんか持ってないから素直に頷く。迂回し終えたところに猪みたいな魔物がいた。
「あれはパイア。突進攻撃が得意で、獲物を見つけると一直線にゃ魔物です」
「見るからに速そうですね……。逃げられる相手ですか?」
「無理ですね」
そんなきっぱり言わなくても……。
「にゃのでこうします。そいやっ!」
ニャルクさんが土魔法で作った塊をパイアに向かって投げる。こっちに気づいたパイアが土埃をあげて突進してきた。
「ここでそぉい!」
右前足を掬い上げるように、下から上に振り上げたニャルクさんの足元から土の壁が伸び上がって、ガゥゥゥゥゥゥゥン、と鈍い音がした。
「このように、応戦するんじゃにゃくて障害物で遮ってやると自滅します」
なーるほど、勉強になります。あ、でも待って、目の前で頭潰さないで血抜きは慣れてるけど原型がなくなるのはちょっと違うというかあぁぁぁぁぁぁ……。
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次の階に進むと沼地で、点々としてる浮島を木の板が繋いでいるのが見える。
「ここ、狙われたら逃げ場なくないですか?」
「そうですね。ニャオさん、すぐ後ろをついてきてください。何か出てきたら風魔法で追い払いますから」
「お願いします」
ニャルクさんはともかく、自分が乗ったら浮島は沈むんじゃないかと不安だったけど、意外と平気だった。短剣を胸元に構えて周りに目を凝らす。濁った水中には大きな魚影がうようよいるけど、襲ってはこないみたい。
「こういう場所は魚やトカゲ、蛙系の魔物がよく出ます。中でも厄介にゃのが長鳴き蛙で、騒音に近い鳴き声を集団で上げ続けて獲物の動きを鈍らせてから食べに来ます」
「集団で?」
「はい、集団で。手から足から頭から、違う長鳴き蛙が噛みついてきて捥がれます」
「捥がれちゃいますか……」
心底関わりたくない。というか、蛙は雨蛙以外は苦手なんだよね。
「まあ、長鳴き蛙がそんにゃ狩りをするのは鈍足だからであって、逃げようと思えば走って逃げられますよ。隠れダンジョンには高ランクの魔物は出現しにくいですから」
それならまだ安心かな。この先の浮島が私の体重に耐えられればの話だけど。
そこからは割りとスムーズに進むことができた。案の定出てきた長鳴き蛙は数が少なかったから余裕で逃げられたし、水面を走れる水駆けトカゲはニャルクさんの風魔法でぽーんと飛んでいった。
10個以上の浮島を渡り続けた後、ようやくしっかりした地面に立つことができてほっとする。ここには洞窟じゃなくて地面そのものに穴が開いていた。覗けば螺旋階段みたいな道が下の階に伸びている。
「ここから降りれそうですね。行きましょう」
「はい。あ、ランプいりま、す? え?」
あまりの暗さにマジックバッグを開けようとしたら、足首を何かに掴まれた。見下ろせば、藻にまみれながら沼から這い出てきた女の人が、腐った目で私を見上げていた。




