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第203話 清ちゃん?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。


次は余話を更新予定です。

「うわぁ……」

「なんとまあ……」

「すっげー!」

「まうー!」

『……、……』

『……、……』

『……、……』

『……、……』


 目的地に着いたはいいけど、果たしてここにテントを張っていいものか……。

 木々を抜けてたどり着いた目的地は真っ黒焦げだった。でもかなりの時間が経ってるのはすぐにわかる。焦げて立派な幹がなくなった木の根本からは新芽が出てるし、地面からも草が生えてる。


「ここ、何があったんでしょう? 普通じゃないですよね?」

「魔物が戦ったんだろうね。何かまではわからないけどさ。でもかなりの大きさだ」


 大きな魔物が2体ぐらい戦って、木々を薙ぎ倒して火を吹いてって感じかな。相当暴れたんだな。


『◎○、▽✕?』

『◎○◎✕』


 マーニガンさんとレアリアンドさんが地図を見ながら何か喋ってる。地図の写しは2枚もらえたから、二手にわかれて行動するってこともできるだろうけど、それは最終手段だな。まだそこまで追い詰められてない。そのさんも反対するだろうしね。


「ここは避けた方がいいでしょうね。他のところを探しましょう」


 そう言って探索してみようとしたら、そのさんが頬をつついて止めてきた。


「いや、ここにしな。今日と明日はここを中心に近場を調べてみるといいよ」

「でも、ここって危なくないですか? これだけ派手に魔物が暴れたような場所なら、魔力の残り香みたいなのに他の魔物が寄ってきません?」

「むしろ逆さ。その魔物の残り香のせいで何も近づかなくなってるよ。ほら、新しく芽吹いた植物が踏み荒らされてないのがその証拠さ」


 確かに、ここに来るまでにはいくつかの魔物の足跡を見かけたけど、この焦げ跡には見当たらない。禁足地の中の数少ない安全地帯の1つってとこかな。まあ完全に安全ではないけどさ。


「グランディオ達もそれでいいってさ。ソノに従うって」

「そっか、じゃあ早くテントを張ろうかね」


 雨は降りやまないし足元水浸しだしで悪条件だけど、とにかく濡れなくて済む空間がほしい。赤嶺も拭かないと。てかこの仔テントに入るかな?


「まうー?」


 おっと、清ちゃん急に飛びつかないで。危ないぞ?


「これキヨ。あたしがいるんだから気をつけな。その爪で腹を掴むんじゃないよ?」

「まう」


 清ちゃん、こっちの言葉は通じてるっぽいけど、どういう風に聞こえてるんだろ。ちゃんと文章として理解できてるのかな。今度アースレイさんに聞いてみよう。


「なあ清ちゃん、もうちょっと赤嶺の背中におってくれる? 今からテント張らんといけんけぇ、肩に乗られとるとちょっと動きづらいわ」

「まう?」


 テントって言ってもわからんか。確か見せたことないもんな。


「えーっと、雨に濡れん為のちっちゃい家を建てるんよ。やからちょっとだけ赤嶺と一緒におっておくれ」


 そう言いながら清ちゃんを赤嶺の背中に戻せば、清ちゃんは首を傾げながら私を見つめた後、空を見上げた。


「まーーーうーーーーーー」


 清ちゃんが可愛らしい声で啼いた。漣華さんみたいな威厳は感じられないけど、清んだ声が空に伸びる。つられて空を見れば、淡い光が私達の頭上を覆い始めてた。


「何何何、何これ何これ何これ??」

「キヨちゃん何してんの? ねえニャオ、これ何?」

『✕▽▽□○?』

『○△▽?』

『☓▽、☓◯??』

『☓……』


 掌紋に似た紋様にどんどん覆われていく。淡い光はある程度広がったら地面の方に下りて、ドーム型になって止まった。


「結界だねぇ」


 光り続けるドームをまじまじと見ながらそのさんが言った。


「結界? 清ちゃんが結界を張ったんですか?」

「今の見てただろ? キヨの結界さ」


 マジで? 清ちゃん結界なんて張れるの? 凄過ぎる。


「あたしが知ってる結界とは全く違うものだけどね。加護をくださってるミクマリノカミ様の力を使ったんだろう。フードを取ってみな」


 フード? なぜに? とか思いながらフードを取れば、雨が降ってこない。光のドームが雨をはじいてる。


「清ちゃんあんた、私が雨がどうのこうのって言ったけぇ結界張ってくれたん?」

「まうー!」


 聞いてみれば、清ちゃんは赤嶺の背中の上でドヤ顔をした。凄いでしょ? って言わんばかりに胸を張ってる。可愛い。


「凄いなぁ清ちゃん! ありがとう!」

「まぅーまうっ!」

「よし、今の内にテントを張り終えた方がいいね。滑らないように気をつけな。キヨ、疲れたらすぐに結界を解くんだよ。無理しちゃいけないからね」

「まうー」

「セキレイ、あんたはキヨのこと見てるんだよ。何か変だと思ったらすぐに言いな」

「わかった!」


 うーん、清ちゃんの思わぬ能力を発見してしまった。これは今後も役に立ってくれるだろうね。


「そのさん、これって魔物の侵入を防ぐこともできるんですかね?」

「さあねぇ。でももしできたとしても、今はやらせない方がいい。こういう魔法は、……細かく言えば魔法じゃないけど、この手の術は使い慣れない内は無理をさせないってのが普通なんだ。初めの内に結界を壊される感覚を味わってしまったら、後々張りづらくなるらしいからね」


 なるほど。それならテントを張り終えたら一旦結界を解いてもらって、練習がてら短時間で何度か張り直してみてもらおうかな。食事の時とか、寝るまえの30分とかさ。


「清ちゃん、急いでテント張るけぇ無理はせんでな? ニャオと約束で?」

「まうー」


 頭を撫でてやると、グルグル喉を鳴らしながら擦りつけてきた。こんなに小さいのに立派に水神さんの力使えるんやね。私も精進せねば。

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