第195話 ユニークスキルの強み
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「お前さんのことじゃ。行くにゃと止めてもどーーーせ行くんじゃろ?」
「わかり切ってますねぇ」
食後、満腹になったタイミングを見計らってウルスナさんからの神託のことを話せば、顔をぐしゃっと歪めたイニャトさんにジト目で睨まれて、ニャルクさんにため息をつかれた。
「禁足地っていうのは聞きましたけど、どうしても行かないといけなくて……。ククシナさんに会って話さないと」
「しかし、ククシニャという精霊は狂暴と聞く。お前さんで相手にできるのか?」
「漣華さんもついてきてくれるって言ってくれたし、頼まれたからにはやらないと。何もしないまま、できませんでした、とは言えませんから」
そう言えば、定位置でくつろいでた漣華さんが頷いた。
「確かに、ククシナは異質な精霊じゃ。しかし妾のユニークスキルならば通用するじゃろう。例え結界に閉じ込められたとて逃げ出せる」
「根拠はあるんですか?」
「クァーディーニアの件でわかっておるとは思うが、ユニークスキルには精霊とて干渉しづらいのじゃ。特に妾やフクマルほどの魔力を持つ者が相手ならばなおさらのう」
へえ、そうなんだ。確かにクァーディーニアさん、入ーれーてって念話で福丸さんに言ってから入れてもらったって言ってたもんね。
「フクマルのユニークスキルが精霊さえも拒めるように、妾のユニークスキルは精霊の結界すらも突破できる。ククシナなど恐るるに足らぬわ」
「漣華さん、私は話をしに行くんですよ? 戦うんじゃないんですからね?」
だから牙を剥くのをやめてください。倒したいんじゃないんだから。
「おお、そうであったな。気をつけねば」
「ですが、用心するに越したことはないですよ」
耳だけこっちに向けて林檎を食べてた福丸さんが言った。
「ククシナの姿を見た者はほとんどいません。わたくしやあなたでさえ名前を聞く程度なんです。どのような能力を持っているのかわからないんですから、警戒すべきです」
「わかっておるわ」
フンッ、と鼻を鳴らして漣華さんがそっぽを向いた。
「ん? なんじゃその顔は」
漣華さんが不機嫌そうに言った。声をかけられたのは食器を片づけてくれてたレアリアンドさん達だ。
『▽……、▽□✕? □□✕△?』
レアリアンドさんが恐る恐るって感じで漣華さんに何か聞くと、グルルルル、と唸り声が出た。
「じゃからそう言っておるじゃろうが。こやつは近々ククシナのもとへ行く。ウルスナからの神託を受けてな」
『✕▽、□✕✕!』
おお、ノザリエさんが割って入ってきた。いつもグランディオさん達の背中に隠れてるのに、珍しい。
「あの、ノザリエさん達はなんて言ってるんです?」
「危険だからやめさせて、行ったら駄目って言ってるよ」
ずっと考え込んでたアースレイさんが言った。隣でシシュティさんも頷いてる。そういえば、ククシナさんは獅子獣人に子どもが産まれにくくなる呪いをかけた張本人だったっけ。
「僕も反対だね。ククシナの森は王都のギルドが禁足地と定めた場所なんだ。立ち入って帰ってこなかった冒険者や商人は数え切れないほどいるからね」
「禁足地なのに、そんなに人が入ってるんですか?」
「未知の森だからね。珍しい物を見つけて一攫千金を狙う馬鹿が多いんだ。そしてその森に入った連中が携帯用の“伝書小箱”で助けを求めても王都は動かない。禁足地に入った方が悪いんだから」
そりゃそうだ。で、私はそこに向かうってわけだね。
「ニャオさん。レンゲさんがついててくれると言っても、絶対に安全とは言えないよ。ククシナの森はそういう場所だから。それでも行くんであれば、ギルドに事前に知らせた方がいい。王都とペリアッド町、両方にね」
「ギルドに? 止められません?」
「もちろん止められるさ。だけど君は神託を受けてるんだから、そっちが優先される。この場合、ギルドもある程度は後援してくれるはずだよ」
後援? 入る準備を手伝ってくれるってこと?
「禁足地なのに、ギルドが手伝ってくれるんですか?」
「普通はしない。だけど君の目的は金じゃなくて、神託を受けた上で務めを果たすことだからね。前例はないけど、神託が最優先されるだろうよ」
そっか、まあ人間が定めた禁止事項と神託なら優先されるのは後者だよね。
「ともかく、明日ギルドに行って斧のギルマスにこのことを話すんだ。そうすれば王都のギルドに手紙を送ってくれるだろうから、その後は返事待ちだね」
「そうですね。じゃあ明日行ってみます」
うーん、大事になってきた。でも漣華さんの言う通り、黙って行かなくてよかった。こんなの後になってばれたらそれこそ大目玉じゃ済まなかっただろうな。
「しかし、ウルスニャ殿はにゃぜお前さんに行けと言うたのじゃろうにゃあ?」
「さあ、わかりません。何を話せばいいのか聞いてみても、思うままに話せ、としか言われなかったし」
「そうか。まあウルスニャ殿も考えがあってのことじゃろうが、うむ、禁足地……。禁足地か……」
イニャトさん、唸り始めちゃった。心配してくれてるんだろうね。でも行かないなんてことはできないから、許してね。ちゃんと帰ってくるからね。
……そういや赤嶺と清ちゃんどこ行った?




