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第20話 さらば青空

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

前話を少しずつ変更させてもらってます。書こうと思って抜けていたところがあったり、口調を整えさせてもらってますので、よろしければご確認ください。

話の大筋は変えてませんのでご安心ください。

「にゃんふふんふふ~ん♪」


 鼻歌を歌いながら独特なダンスを踊るイニャトさんを眺めつつ、捕まえたばかりの鶏の首を落とした。


「樹木魔法って歌が必要なんですか?」

「あれはイニャトの癖ですよ」


 落ちた鶏の首を拾ったニャルクさんが教えてくれた。イニャトさんが持つスキルは樹木魔法で、種さえあればどこででも木を育てることができるらしい。周りの木を使って魔物を追い払うことも可能だけど、かなりの魔力を使うんだとか。

 鶏の首を少し離れたところに掘っておいた穴に埋めたニャルクさんが戻ってくる。


「ニャオさんの短剣いいですね。捌くのに丁度いい」

「ええ、いい相棒です」


 気に入ってるからこそ、褒められたら嬉しい。


「ですが、フアト村で見た時と刀身の色が違うんですけど、何故です?」


 青緑に戻った短剣にニャルクさんが首を傾げた。


「謎です」


 とりあえず、にっこり笑っておく。


「ニャールクー、ニャーオー、終わったぞ~」

「ばっほばっほ!」


 呼ばれて振り返れば、太った幹と青々と繁る葉、真っ赤な果実が見えた。


「見てみよ! このうんまそうにゃ林檎! さっすが儂じゃの~」


 林檎の下で小躍りするイニャトさんと、嬉しそうに走り回るバウジオ。負けじと鶏を掲げて見せた。


「こっちももうちょっとですよー。待っててくださいねー」

「イニャト、林檎の種の予備はありますか? 切らさにゃいようにしにゃいと」

「わかっとるわい」


 その日の昼御飯は醤油味の焼き鳥とフアト村で買った簡単スープ。器に入れて温めるだけのスープは当然いい味だし、醤油は出汁醤油みたいに味がついてたから肉を漬け込むだけでいい感じになった。

 1人だった時は焼いて食べるだけだったから、凄く美味しく思える。

 火を点けるのもニャルクさんが魔法石でやってくれた。火魔法が使えない人用の魔法石が店やギルドで扱っていて、魔力が切れたら有料で補充もしてくれるみたい。

 イニャトさん曰く、魔法がない世界から来た人間でもこっちでは魔力を得るらしく、私がテントを立てられたのも魔法陣が反応したからで、そういう道具は高値でもそこそこ売れるんだとか。


「レイエル町まであと4日ぐらいですかね?」

「そうじゃにゃ。まぁ急くことはにゃかろう。川魚は逃げんて」


 林檎を齧りつつ、イニャトさんと地図を確認する。今いるのは大きく迂回する道の手前で、この後は片側に山を見ながら進むだけだ。


「イニャト、ニャオさん、林檎を集めてきますね」

「あ、手伝います」

「いえいえ、僕だけで大丈夫です。休んでてください」


 そう言って、ニャルクさんはイニャトさんが生やした林檎の木に向かった。持っていったのは私のマジックバッグだ。


「生やすのは儂、収穫はニャルクの仕事にゃんじゃよ」

「ばっふばっふ!」


 焼き鳥を食べていたバウジオが吠える。妖精と魔物のミックスだからアレルギーはないらしい。好物はまさかのチョコレート。


「ぅにゃにゃっ?!」


 突然ニャルクさんの悲鳴が聞こえてきて、飲みかけた水が気管に入って噎せてしまった。


「ぬぉぉぉっ?! お前さん何をしよる?!」

「ばっふ!!」


 イニャトさんとバウジオが走り出す。口を拭いて林檎の木を見れば、なんとニャルクさんの下半身が地面に沈んでいた。


「ニャルクさん!」


 急いで駆け寄るけど、林檎の周りの土が異常に柔くて全員足を取られてしまった。


「何か、何か掴む物は?!」

「そんにゃもんにゃいぞ! 見よ! 儂の木まで沈みよる!?」

「キャンキャンキャンッ!!」

「みんな落ち着いて! 何か抜け出す方法はーーああっ、ニャルクさん!?」


 あれでもないこれでもないと騒いでる間に、ニャルクさんの頭が見えなくなった。


「ニャルク! ふぶっ!」

「キャィーーン……」


 イニャトさんとバウジオまで沈んでしまった。引き上げようにも自分自身が動けない。どうしようもない。

 なす術もないまま、私も地面に沈んでしまった。

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