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第193話 1つずつ

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「ただいまー」

「戻りましたー……」


 サニガン町の人達に頭を下げて魔法陣をくぐれば、ペリアッド町の杖のギルマスの部屋だった。当たり前だけど。


『◎○! △◎△!』


 私が抱えてたプレゼントを見た商人が笑顔になる。水神さんにお願いして乾かしといてもらっててよかった。


「ご迷惑おかけしました。誕生パーティーに間に合いますか? ……って、聞いてもらえる?」


 普通に声をかけたけど、通じないよな。頼んだ赤嶺。


「ニャオよ、それは問題ない。そなたらがサニガン町に行っている間に正しい場所に繋げ直した。今回は本人に確認させたから大丈夫じゃ」

『◎○♪』


 あら、そうだったの?


「それと、商人よ。妾の魔法陣をくぐることを許そう」

『✕△?!』

「妾の不注意故の騒動じゃからな。娘のパーティーに行ってやるといい。そうじゃな、日付が変わる前に迎えの魔法陣を作ってやる。それをくぐればギルドの受付に戻れるようにしよう」


 おお、漣華さん太っ腹。つかその魔法陣くぐるのに許可っているの? 私達いっつも軽くお願いしてるけど。


「レンゲ姉ちゃん、俺達いつも魔法陣くぐってるけど、次から聞いた方がいいのか?」


 私が思ってたことと同じことを聞く赤嶺の頭を、漣華さんは鼻でつついた。


「そなたらは気にするな。存分に使うがいい」

「いいのか?」

「妾がいいと言っておるのじゃ。使え使え」


 うーん、でっかいドラゴンがちっちゃいドラゴンを構う光景は微笑ましいな。ギルマス達はちょっと距離取ってるけど。


「ほれ、何をしておる。さっさと入れ」


 くるっと商人の方を見た漣華さんが急かすと、商人はペコペコ頭を下げながら魔法陣をくぐっていった。魔法陣が消えると、また新しい魔法陣が描かれる。


「セキレイ、先に森に戻るがいい」

「俺だけ? ニャオは?」

「少し話がある。終われば帰す」


 ん? 話? なんぞや?


「俺も残る!」

「ならん。大人の話じゃからな」

「ケチ!」

「全く、わがままな仔じゃな。言うことを聞いてくれたら好きな魔物を狩っていいぞ」


 漣華さんがそう言えば、赤嶺はピクッと反応した。


「なんでも?」

「うむ、なんでもじゃ」

「クラーケンも?」

「クラーケンじゃと? うーむ、若い個体ならば許そう。成体はまだ早いからの」

「……わかった。じゃあ先に帰る」


 赤嶺、あんたさっきのことまだ怒ってるね? ほどほどにしなさいよ? ……漣華さんには念の為違う海に連れてってもらおう。


「じゃあニャオ、俺帰っとくから、早く帰ってこいよ」

「わかったよ。美影さん達にすぐ帰るって伝えといてな」

「はーい」


 赤嶺がくぐった魔法陣を閉じた漣華さんは、違う魔法陣を描き直して顎でしゃくった。こっちに入れってことか。


「それじゃあ、失礼します」


 杖のギルマスに頭を下げて魔法陣をくぐると、前に来た神宝石の渓谷に出た。来るのは2回目だな。

 渓谷を覗き込んでたら、でっかい魔法陣が光って漣華さんが出てきた。チンアナゴじゃない。


「さて、ニャオよ。誰と会った?」


 あ、バレてる。


「えっと、サニガン町の海に落ちて、ウルスナさんに会いました。海の精霊の」

「あやつか。で、何を言われた?」

「ククシナさんっていう精霊と話をしてほしいって頼まれました。手が空いてからでいいからって」


 なんの理由があるのかは教えてもらえなかったけど。


「ククシナか……」

「はい、ご存知で?」

「教えんかったか?」


 え? 何を?


「ククシナは獅子獣人達に呪いをかけた、従う神を持たぬ異質な精霊じゃ。住む森は禁足地となっておる」


 ……そんな話聞いたっけ?


「その頼み、受けたのか?」

「あ、はい。受けました……」

「面倒なことになったのう……」


 はあ、とため息つかれた。申し訳ない。でも頷かないと海の底に沈められそうだったんだもん。


「あの、そこって私が入ってもいい場所なんですかね?」

「さあのう。妾もその森には立ち入ったことはない。フクマルもな」

「ええー……」


 大丈夫なのか? 行っていいのかそこ? 私にも子どもができにくくなる呪いかけられるの? まあ今んところそんな相手いないけど。いやまあ、アースレイさん達はとりあえず置いといて。


「引き受けたのであれば行かねばなるまい。精霊の頼みは神託なのじゃ。それをなかったことにするのは神に喧嘩を売るようなものじゃからな」


 わーお、罰当たり。


「うーん、場所が場所だから、行くなら私1人で行きます。ニャルクさん達にもあんまり知らせたくないな……」


 絶対心配されるし、止められる。それでも行くって言おうもんならついてきそうだ。それは避けたい。


「何も言わずに行くことは妾が許さぬ。あの者達からの信頼をなくすことになるぞ」

「う……。それは……」

「連れていかぬのであればはっきり言え。その時は妾がついていってやる」

「……でも、ククシナさんって獅子獣人を呪い続けるぐらいの力を持った精霊なんですよね? 相手にするの大変なんじゃあ……」

「そのような奴に1人で挑もうとしておったのはそなたじゃが? それに、ククシナ程度に臆する妾ではない」


 ……そっか、そうだよね。漣華さん強いもんね。


「じゃあ、お願いしてもいいですか?」

「もちろんじゃ。しかし今はヴェイグへの納品を優先せい。あやつのところに行くのはそれからじゃ」


 はーい、了解です。1つずつ片づけましょう。

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