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第186話 納品

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 ヴェイグさんへの初めての納品は私も同行することにした。レストラン・ロナンデラのオーナーに倣って、最初ぐらいは顔を会わせないとね。

 受け渡し場所は杖のギルマスの部屋になった。通常は専用の部屋がギルドに用意されてるみたいなんだけど、取引内容が特殊だからってことでこうなったらしい。

 漣華さんからもらった袴を着てきたんだけど、町のみんなからまあ見られたね。和服はこっちの世界に定着してないみたいだから仕方がないっちゃ仕方がないけど、ついてきた赤嶺と緑織と紫輝がドヤ顔してた。なぜ?


『◎○、△○♪』

『▽△、□○◎?』

『◎○◎〜!』


 イニャトさんとヴェイグさんが卸しの内容を確認してる横で、杖のギルマスと斧のギルマスと、なぜか現れたレドナさんがクッションの上で寛いでる清ちゃんを囲ってワイワイしてる。袴に興味津々だったのに、肩に乗ってた清ちゃんに気づいた瞬間みんなそっちに行っちゃった。私と同じ水神さんの加護を授かったってイニャトさんが説明したら目をひん剥いてたな。


「ニャオさん、そろそろ終わりそうだよ」


 いつもみたいに隣に座ってたアースレイさんに言われた。


「結構早かったですね」

「卸値は決まってたからね。今日は商品の確認ぐらいだよ」


 卸値か。確かハノア農園に卸すのと同じ割引価格で設定してるんだよね。一時的な取引契約だけど、今後に期待してってことらしい。

 今日卸す内容は、林檎が3000玉、シュテムが2000掬い、モラが3個入りを300セット、桃が2000玉、蜜柑は多めに6000袋だ。

 この取引だけで550万エルの収入になるんだから驚きだよね。しかも同じ量をこれからも何度か納品することになるんだから、最終的にいくらになるのやら……。ハノア農園とレストラン・ロナンデラへの納品もあるんだから、今以上に頑張らないと。


「ニャオよ、ちといいか?」

「はい、なんでしょう?」


 呼ばれて顔を向けると、ほくほく顔のイニャトさんとにこにこ顔のヴェイグさんがこっちを見てた。


「ヴェイグが葡萄と蜂蜜も卸させてほしいと言っておるんじゃが、受けてもよいか? というか受けるぞ。卸値はロニャンデラとペニー・ハニーと同じでいこう」

「え? は? ち、ちょっと待ってください、葡萄はまだしもなんで蜂蜜まで?」

「専門外とはいえ商人じゃからのう。儂らが普段どんにゃ品をどこに卸しとるのか調べるのは当然じゃわい。で、蜂蜜も多めにほしいそうじゃから、帰ったらマサオミ殿にどれぐらい卸していいか聞いてみよう」

「いやいやいや、蜂蜜は鈴生りに生る果実みたいにたくさん採れませんよね? 引き受けちゃったら政臣さんの負担になりますって」


 私達の負担も増えるがな。レアリアンドさん達が頑張ってくれてるとはいえ、これ以上増やさない方がいいんでない?


「それは問題にゃいぞ。コーカルゥセイボウ達はこれでもかという量の蜜を毎日集めておるからの。マサオミ殿が魔法も使いにゃがら瓶詰めしておるから、フクマル殿でも食い切れん量が集まっとるらしい。まあ根こそぎ売るわけにはいかんから、要相談じゃの」


 ……あの蜜蜂達、そんなに働いてくれてたんだ。政臣さんも、知らなかったな。今度何かあげよう。蜜蜂には新しい花とかどうかな。いっそ花壇を作って季節ごとの花を植えて……、いや、それじゃあ違う味の蜂蜜が採れるだけだな。


「えっと、蜂蜜はとりあえず置いといて、葡萄はどれぐらいほしいんでしょう?」

「ちと待てよ……。……できるにゃら毎回の納品ごとに4000房はほしいそうじゃ。王都でも人気の高い果実じゃから、多ければ多いほどいいんじゃと」


 遠慮ないなほんと。


「……やれるかはわかりませんが、まずは頑張ってみましょうか。レアリアンドさん達の日給も上げていいですか? 今まで以上に忙しくなるのは確実だから」


 獅子獣人のみんなにはそれぞれ日給として8000エル支払ってる。この世界は1年が14ヶ月あるけど、一月は30日で決まってる、月に5日休日を入れても20万エルが手取りになる。もう少し払いたかったんだけど、みんなからもらい過ぎだって断られたんだよね。もらってくれていいのに。


「そうじゃのう。では日給1万エルでどうじゃ? いきにゃり上げるとまた断られるじゃろうからのう」

「そうですね。で、残業してもらうことがあれば上乗せしましょう。1時間ごとに2000エルぐらい」

「それぐらいがよかろう」


 うん、それで決まり。もし断られるようならグランディオさんのマジックバッグに突っ込んどこう。


「あ、そういえばヴェイグさん、ヴァルグさんに清ちゃんが青くなったのを相談してくれてたんですよね? 結局こっちで解決しちゃったんですけど、ありがとうございますって伝えてもらってもいいですか?」

「……それにゃんじゃがにゃあ」


 ん? なんなのその言い方。なんかあった?

 ちょいちょいっと前足で呼ばれたから体を傾けると、イニャトさんは耳元に顔を近づけてきた。


「ここに来た時、真っ先に礼を言ったんじゃよ。お前さんがアースレイと一緒にキヨをギルマス達に紹介しておる間にのう」

「ああ、そうだったんですね」

「うむ。ヴェイグもよかったと言ってはくれたんじゃが、どうにも歯切れが悪くてのう」

「……まさか、その件でヴァルグさんと喧嘩したとか?」


 もしそうだったら申し訳なさ過ぎるんだけど。え? どうしたらいい?


「理由を聞いても教えてくれんのじゃよ。じゃからニャオ、こやつに渡すと言っておった蒼い林檎の苗木を10本から20本に増やしてもいいかの? 儂頑張って育てるから」

「もちろんですとも。私も手伝います」

「いや、それはいい。お前さんの手を借りるといらん効果がつきそうじゃ。水神様関連のにゃ」

「……ごもっともです」


 水神さん、お願いしたつもりじゃなくても叶えてくれることあるもんね。


「ヴェイグさんが王都に帰る時に、ヴァルグさん宛にお礼の品を預けさせてもらいましょうかね。果実と蜂蜜」

「それがいいじゃろう。あまり深入りはせん方がいい」


 了解です。でもほんと、何があったんだろう。私達のせいで不仲とかになってないよね? さすがにないよね? もしそうならヴァルグさんにも直接謝りに行かなきゃ。その時はまた漣華さんにお願いしよう。

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