第19話 旅立ちは笑顔で
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次は閑話を挟みます。
旅支度の為に屋台やら店やらを回っていたら夕方になった。テントに戻って腹拵えをした後、兄弟猫が買った物を一列に並べていく。
「最低限のポーションは買うたにゃ。あとは携帯食料と、失くした方位磁石」
「毛布もいいのがありましたね。そろそろ寒くなりますから」
「地図はまだまだ使えるからの」
「刃こぼれしたナイフは明日受け取りですよ」
ニャルクさん達が一つひとつ確認しながらマジックバッグに詰めていく。でもちょっと待ってよ。
「ニャルクさん、イニャトさん。それ、私のマジックバッグなんですけど……?」
ニャルクさんが背負っていたマジックリュック? じゃなくて、私のマジックバッグがパンパンになっていく。私へのプレゼントじゃないよね? 毛布3枚あったし。
「にゃんじゃ? 何か足らんもんでもあったか?」
「必要にゃ物があったら言ってくださいね。明日ナイフを受け取る時に買い足しましょう」
「それにしても、これはいいマジックバッグじゃのう。まだ余裕があるわ」
「ほんと、助かりますねぇ」
駄目だこれ。完全に旅の仲間に加えられてる。
「あの、私……」
「ニャオさん、目的はありますか?」
ニャルクさんに聞かれた。
「目的、ですか?」
「どこの町に行こうとか、何をしようとか、そんにゃんじゃよ」
イニャトさんが携帯食料を齧る。
どこに、と聞かれても、地図に載ってる場所しか知らないから目的も何もない。強いて言うなら……。
「人目につかない、安心できる場所に行きたいですね。仙人暮らしがしたい」
今回みたいに、ドレイファガス教が絡んでこない保証はどこにもない。今のところ出会ったアシュラン王国の人達は優しいけど、言葉が通じないから不便はある。
人目につかず、買い物とかの必要な時にだけ人里に下りれば済むような暮らしがしたい。現代日本の仙人みたいな。
「センニンとやらがどんにゃ者かは知らんが、それでも言葉がわからんのは不便じゃろ?」
理想を言えば、イニャトさんにそう返される。
「そこで僕達の出番ですよ」
ニャルクさんが胸をぽんと叩いた。
「僕達の旅の目的は安心して住めるところを探すことなんです。ケット・シーなんで、村の外れでも森の中でも問題ありません」
「のうニャオ、儂らの目的は似とると思わんか?」
イニャトさんがにやりと笑った。
「お前さんは極力人目に触れずに暮らしたい。しかし言葉の面で不便がある。儂らは安住の地を求めて旅をしており言葉はぺらぺら。悪くにゃい条件じゃろ?」
「そりゃあそうですけど、私はお2人に何ができるんでしょう?」
現状では私が兄弟猫相手にできることは1つもない。マジックバッグの容量ぐらいしか役立てないと思う。
「そんにゃもんその内見つかるわい。今はこっちの世界の先輩に甘えるがよい」
「同じ毛色のよしみです。一緒に行きましょう」
同じ毛色って、バウジオのことかな? よだれ滴して寝てら。
「うーん、じゃあ、甘えちゃっていいですか?」
「もちろんじゃよ~」
「よろしくお願いしますね、ニャオさん」
初めてできた旅の仲間。嬉しい。嬉し過ぎる。
その晩は昨日以上にみんなでくっついて眠った。私はバウジオのお腹を枕にして、イニャトさんは丸くなった私のお腹のところに潜り込んで。ニャルクさんはバウジオの尻尾を抱き枕にして。
せっかく仲間に加えてもらったんだから、何か記念になる物がほしいな。明日ニャルクさん達は研ぎを依頼してたナイフを受け取りに行くらしいから、屋台で何か探してみよう。
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お昼前、屋台をいろいろ見てたら商人ギルドの売店でもらったネックレスと似たデザインの物が売ってたから、4つ購入した。身振り手振りでチェーンの長さを変えてもらい、1つずつ袋にいれてもらう。私についてきてくれたバウジオの分はペンダントトップだけ売ってもらって、イニャトさんが用意したらしい首輪にその場でつけてあげた。
集合する約束をしてた公園に行くと、ニャルクさん達がもう来てたから駆け寄ってそれぞれにプレゼントする。ニャルクさんは照れながら、イニャトさんは嬉しそうに受け取ってくれた。
どうやら旅の安全を願う定番のお守りみたいで、つけられてる宝石にはわずかばかりの魔力が込められてるらしい。マジックバッグにしまってた私もその場で身につけた。
もう一晩休んで翌朝、テントを畳んで村の入口に向かう。門番達にはニャルクさんが証明書を出してくれたからすんなり出られた。
「さて、どっちに行くかのう?」
「ここから近いのはレイエル町ですね。1週間ぐらいでしょうか」
「ほう、その町は確か川魚が名産じゃったにゃ」
「最近は天ぷらも話題に上がってるみたいですよ」
「ばっふばっふ!」
前を歩く兄弟猫は地図を見ながら食事の話をしてる。イニャトさんはもちろんだけど、ニャルクさんも結構食べるからなぁ。立ち寄る町や村の名産も楽しみの一つなんだろう。
「お前さんは魚と天ぷらどっちが好きにゃんじゃ?」
「どっちも好きですけど肉が一番です」
「「わかる」」
「ばっほい!」
今まで食べた物とか、見てきた人里の様子を教えてくれる。オレンジの建物しかない町だとか、魔物肉しか出さないのにお手頃価格の穴場のレストランだとか。
ちょくちょく日本で聞いた単語が出てくるから頭がこんがらがることがなくて助かる。
「喋るって楽しいですね」
魚を捕まえようとして川に落ちたイニャトさんがでっかい魚に咥えられて宙を舞った話に笑ってそう言えば、ニャルクさんがふふんと笑った。
「当然です。もっとお喋りしますよ」
「旅は長いからのう。お前さんもいろいろ聞かせいよ」
「もちろんですよ」
日が暮れ始める頃まで歩く予定だ。どれぐらい進めるだろう。
巨木に別れを告げた時には浮かばなかった笑顔で、フアト村を後にした。
ようやく引き籠もりの兆しが見えました(笑)




