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第175話 異常事態

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 収穫作業も3日目になれば、レアリアンドさん達は私達がついてなくても全部こなせるようになった。お試し期間は1週間のつもりだったけど、アースレイさんが本人達に確認したら楽しいって言ってくれたらしいから、早いけど本雇用させてもらった。

 それに合わせて、ヴェイグさんに果実の納品を受けると返事をした。あくまで依頼として受けるだけで、取引契約ではない。取引契約したら定期的に卸す必要があるみたいだから、そんな余裕は今のところないからね。それでもヴェイグさん狂喜乱舞してたけど。ヴァルグさんと同じ顔であんまり暴れないでほしいなぁ。

 て、今日はその卸しの記念すべき1日目だ。


「ニャオよ、マジックリュックはどこかの? ほれ、昨日ヴェイグに卸す品を詰めた、ニャルクのやつじゃ」

「それなら物置木に置きましたよ。取ってきましょうか?」

「んにゃんにゃ、自分で行くわい。お前さんは朝食の準備をしておくれ」

「はーい」


 切ってる途中だったパンに目を戻す。ペリアッド町で人気のパン屋で買った四角いパンだ。デニッシュ食パンみたいな感じで、みんな好きなんだよね。


「ニャオさん、牛乳もらってきたよ」

「ありがとうございますアースレイさん。百子も、ありがとな」

「モォ~」


 搾りたてって、響きからして美味しいよなぁ。実際美味しいんだけど。


「グランディオさん達、今日もいつもの時間に来るんだよね。軽くつまめる物も用意しといた方がいいかな?」

「昨日桃のコンポートを作ったんでそれを出しましょう。お昼はポトフにしますね」

「いいね」


 獅子獣人達は毎日ペリアッド町から森まで通ってきてるから、お昼ご飯と夕ご飯はこっちで食べてもらってる。レアリアンドさんからは獅子獣人の国にある料理も教えてもらえるから結構楽しい。


「よし、できた。じゃあ水神さんの祠にご飯供えてきますね」


 本日の朝ご飯はベーコンレタスサンドとオニオンスープ。水神さんに供える分を紙に包んでっと。


「僕も行くよ」

「いえいえ、私だけで大丈夫ですよ。それより、シシュティさんについててあげてください。1人だと心細いだろうから。あ、お粥作ったんで、食べられそうならよそってもらっていいですか?」


 シシュティさん、昨日の夕方から熱っぽいんだよね。自分の家に帰りはしたけど、今朝になったら熱上がってたし。だから今は私達の家で寝てもらってる。ニャルクさん、政臣さんに解熱剤をもらってくるって行ったっ切りだけど、まだかな。


「そっか、わかったよ。じゃあ水神様の方はお願いするね。でも1人か……」

「なんだいあんた、何が心配なんだい?」


 おろ、そのさん。いつの間に足元に? 踏んじゃうよ?


「フクマルさんのユニークスキルの中だから、魔物とか不届き者の心配はしてないんだけど……。なんか不安で」

「仕方のない子だね。あたしがついてってやるよ」

「お願いします、ソノさん」

「いいさいいさ」


 ……水神さんの祠に行くだけなのに、なんでおつかいに行く子を見送るみたいな雰囲気になってんの? 私ゃ大人だよ大人。福丸さんだけじゃなくてこっちも信頼しなさいよ。




 ▷▷▷▷▷▷




 水神さんの祠まで来ると、せせらぎの水量が少し増えてた。上流で雨でも降ったのかね?


「水神さん、おはようございます」


 挨拶をして、大きい葉っぱをお皿にサンドイッチをお供えする。やっといてなんだけど、ミスマッチにも程があるな。


「ニャオ、あんたに加護を授けてる水神ってのはなんて名前なんだい?」

「さあ、わかりません。実家でも水神さんとしか呼んでなかったので。名前を気にしたことはないですね」

「そこが不思議なんだよねぇ。名前を知らない神を祀るだなんて、こっちの世界じゃありえないよ。あんた、本当に不思議な世界から来たんだねぇ」


 そりゃそうさ。八百万の神の国なんだから。でもほんと、うちの水神さんはなんて名前なんだろう?


「今さら知りようがないですよ。さ、清ちゃんにご飯あげて帰りましょう」

「ああ、そうだね。キヨ、起きてるかい?」


 肩にぶら下がってたそのさんがせせらぎに寄っていく。別の紙に包んでた小さなベーコンの欠片を懐から取り出した。


「清ちゃーん、朝ご飯持ってきたけぇ食べなー」


 呼べば、清ちゃんがにゅるりと石の間から伸び出てきた。うちの仔だから平気だけど、知らない仔がこんな風に出てきたら悲鳴上げそう。


「ほら、お食べ。……え?」

「どうしたんだい? ……は?」


 目の前の清ちゃんの姿に硬直してしまった。早くちょうだいって言うみたいに口を伸ばしてくる。


「なんだいこれは。神の繭ってこんなになったっけ?」


 知らないよそんなの。長生きのそのさんが知らないなら私が知るわけないじゃない。

 体を目一杯伸ばした清ちゃんにベーコンをあげて、石の隙間に戻る前に捕獲する。水玉をイメージして、空中に作り上げて、その中にポイと入れた。


「帰りましょう」

「連れて帰るのかい?」

「もちろんですとも」


 水玉の中でベーコンを食べてる清ちゃんをじっくり見る。おかしい。明らかにおかしい。昨日来た時はこんなんじゃなかった。たった1日でこんなになるなんて異常だ。

 そのさんを肩に乗せる。この時間ならレアリアンドさん達はまだ来てない。

 そのさんを乗せたまま、水玉を腕に抱えて、家まで走った。

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