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第169話 ペニー・ハニー

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

総合評価が1300を超えました! 2000を目指して頑張ります(*>∇<)ノ

「今回の納品分はこれで全部じゃ。確認しておくれ」


 ペリアッド町にある蜂蜜を取り扱うお店、ペニー・ハニーの店内で、イニャトさんが店長のルルさんと話してる。卸すのはもちろんコーカルゥセイボウの蜂蜜で、卸値は小瓶で4000エル、大瓶で7500エルになったらしい。


「ニャルクさん、売値はいくらでしたっけ?」

「えっと、小さい方が5500エルで、大きい方が8500エルですね」


 うーん、やっぱりいい値段だな。前に屋台で買った物よりかなり高い。


「それで売れます? 大瓶って言っても片手で持てるぐらいのサイズしかないのに」

「コーカルゥセイボウの蜂蜜ですからね。それぐらいはしますよ。というより、遠方からの仕入れじゃにゃい分安いくらいです」

「これでも安いのか……」

「あの大瓶だと普通は1万エルは超えますよ」


 マジか~。それ考えたら安い……、いや高いわ。自分じゃ買わんわ。


「ニャオさん、売れるかにゃって考えてます?」

「ええ、ちょっと……」

「その心配は無用ですよ。ほら、外をごらんにゃさい」


 外? ……あ。


「なんですあれ?」


 通りに面した大きい窓から人集りが見える。見えるというか、見られてる。お店の前に群がっちゃってるよ。


「前回納品した蜂蜜はかにゃり評判がよかったらしくて、すぐに売り切れたそうですよ。今回はルルさんが事前に納品日をお客さんに伝えてたそうで、こんにゃことににゃってるみたいです」

「みたいですって、これ私達出られるんですか? 出入り口が人の壁で塞がってますけど?」

「……僕とイニャトにゃらにゃんとか」

「置いてかないで」


 自分達だけ逃げようとしないでよ。




 ▷▷▷▷▷▷




「裏口借りられてよかったですね」

「そうじゃのう。危うく人の波に潰されるところじゃったわい」


 ペニー・ハニーから脱出して、通りの方に回って店内を見てみれば、開店して5分も経っていないのに隙間がないぐらいの人でみっちみちになってた。客層は主婦が主だけど、ちょっとぽっちゃりの男の人も混ざってる。


「凄い人数ですね……。ハノア農園みたいに個数制限設けた方がよくないですか?」

「一応そう伝えてはおるよ。どうするかはルル次第じゃにゃ。ほれ、食え」


 そう言って、イニャトさんが何やら差し出してきた。屈んで受け取れば、蜂蜜の飴だった。


「ルルの店で売っておるハニーキャンディーじゃ。開店前に1袋買わせてもらったんじゃよ」

「ありがとうございます、いただきますね」

「イニャト、僕にもください」

「ほいさ」


 そんな話をしてたら、空から羽ばたく音が聞こえてきた。


「あー! ニャオ達だけなんか食べてる!」

「おいらもほしい!」

「あたしもー!」

「俺も食べたい!」

「もちろんやるとも。ほら、儂の前に並べ」


 空から下りてきた仔ドラゴン達が一列に並ぶ。周りにいた町民達は慣れた様子でスペースを空けてくれた。


「イニャト、これ何?」

「ハニーキャンディーじゃよ。噛まんで舌の上に置いておけ。長く味が楽しめるからの」

「甘ーい」

「美味しいねー」

「もっとほしい!」

「ダイチ、噛むにゃと言ったじゃろうに……」


 イニャトさんと仔ドラゴン達のやり取りを、ニャルクさんと町民達がにこにこしながら眺めてる。確かにこれは微笑ましい。


「セキレイ達、ハーネスにゃしで町に入れるようににゃってよかったですね」

「そうですね。ギルマス達が許してくれなかったら飛べないままですもんね」


 本当によかったよ。カルカナの祭の時は諸々の事情でつけられなかったし、サルヴァロンの時はそもそもつけてたら警備にならなかったしで、許可なしでハーネス外してることが多かったけど、この間斧と杖のギルマスが正式に認めてくれたんだよね。まあこの仔らが人馴れしてるっていうのが一番の理由だけどさ。


「この後はバウジオのところに行くんですよね?」

「その予定です。バウジオがウェアウルフ達のところに行ってるから、お迎えと様子見に」


 ウェアウルフ達とブラックドッグ達、ちゃんと仕事できてるかね? 警備として町に残してはいるけど、あの仔らの主人は私達ってことになってるから確認しとかないと。


「先にギルドに寄りますか? シシュティさん達を迎えに行きます?」

「いや、そっちは後にしましょう。冒険者仲間と情報交換したいって言ってたから、あんまり早く行って中断させちゃうと申し訳ないし」

「そういえば、そんにゃこと言ってましたね。ではやっぱり先に獣舎ですね」

「はい」


 アースレイさん達、冒険者なのに冒険に出てないからな。本人達がいいならいいけど、たまには遠出とかしたいんじゃないのかな。今晩聞いてみようかね。


「ぉお~い、ニャルク~、ニャオ~」


 なんとも情けない声が聞こえてそっちを向けば、イニャトさんが仔ドラゴン達に囲まれて揉みくちゃにされてた。


「ねーねー、この飴もっと食べたい!」

「イニャト~、もう1個ちょうだいよ~」

「ケチケチすんなって」

「これ、やめんか! 儂を囲むでにゃい! 出せ!」

「くれるまで出さないよーだ」

「やめんか馬鹿たれ!」


 なんとまあ、遊ばれちゃって。まるで鳥葬……、いや、でっかい花だな。うん、あれは花だ。7色の花びらの花だ。


「助けましょうかね」

「そうですね。我が弟にゃがらさすがに哀れです」


 言うねぇニャルクさん。

 ぶーぶー文句を言う仔ドラゴンの輪からイニャトさんを救出して、獣舎の方に向かう。さて、もふもふのうちの仔らの顔を見に行きましょうか。

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