第165話 サルヴァロンの巣
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「えっぐ……」
サルヴァロンがどんな見た目か聞かされてはいたけど、実際目の前にしたらそんな言葉が出た。でも私悪くない。見た目で判断したら駄目って先生にも親にも言われたけど、そんなんどうでもいいぐらいえぐい。えぐ過ぎる。
蛸っぽい触手が生える上半身と、馬の脚と魚の尾びれからできてる下半身って言ってたけど、顔はただれた老人みたいだし指は3本しかないし、髪? たてがみ? はヘドロがこびりついてるみたい。うーん、壮絶にキモい。
「ニャオー、あいつら気持ち悪いぃ……」
「近づきたくないよぅ……」
あらら、黄菜と藍里はあれはアウトみたい。女の仔だもんね、やだよねあんなの。それに引き換え……。
「凄く広ーい! 楽しいねー!」
「どこかに繋がってたりするのかな? 後で行ってみようぜ」
「ミオリー、手伝いいる?」
「大丈夫! シキー、みんないたー?」
「まだ見つからなーい。手が空いたら手伝ってー」
「「「「わかったー!」」」」
なんとも呑気なもんだね。サルヴァロンの巣は蜂の巣をつついたみたいな騒ぎになってるっていうのに。
巣は水中にある洞窟の空気溜まりで、そこに人間の女の人達が数人連れ込まれてた。てっきり水中戦になるものだとばかり思ってたから、少し拍子抜け。でもノザリエさんがいることを考えると、空気があるところでの戦闘で助かった。
女の人達の中に、レアリアンドさんは見当たらない。私達が魔法陣を通ってここに来た時、思いっ切り悲鳴を上げられたんだよねぇ。
「切ないなぁ……」
助けに来たってのに、あの反応は切な過ぎる。でもこんなに人間が拐われてるとは思わなかった。岩肌の石に魔力があるのか、少しだけ光ってるから完全な闇ではないけど、怖かっただろうねぇ。それに……。
「遅かったか……」
壁沿いに積み上げられた、3つの山。人骨だ。サルヴァロンに喰われた男の人だろうな。でもそのどれもがからっからに乾いてる。喰われた直後の骨がないってことは、グランディオさんとマーニガンさんは無事なはずだ。
女の人達は、男の人達が喰われるのを間近で見たのかもしれない。ただでさえあんな異形に連れてこられて恐怖でいっぱいなところにそんな光景を見せられたら、狂っててもおかしくないよな。見たところ、そんな風な人はいないけど。あと腹が膨れてる人もいない。こっちは間に合った、かな?
「ペリアッド町じゃあ見かけない顔ばっかりだな。黄菜、藍里、あの人達にどこから来たか聞いてもらえる?」
「「いいよー」」
走っていく2人を見送って、刀に変えた“バンパイアシーフの短剣”を握り直す。振り返り様に薙ぎ払えば、サルヴァロンの頭が1つ落ちた。
「ヒィィィイイイイィイィイイィィィッ!!」
地面に転がった仲間の頭を見たサルヴァロンが、なんとも言えない気持ちの悪い奇声を上げた。岩壁に反響して耳が痛い。向かってきたそいつの首も落としてやれば、続こうとした2体が足踏みする。
「警戒するんはいいけど、こっちしか見とらんのは賢くないなぁ」
言い終わるのと同じタイミングで、赤嶺と橙地がサルヴァロンに飛びつく。不気味な妖精達を地面に押し倒した赤嶺達は、その喉笛を喰い破ってにっこり笑った。
「ニャオ、もうちょっとで半分だぞ!」
「おいらの方がたくさんやっつけた!」
「何言ってんだよ、俺の方が多い!」
「おいらだって!」
「はいはいはいはい、喧嘩せんの。まだ半分以上もおるんやろう? やったらちゃっちゃと倒して漣華姉ちゃん達のところに戻ろうや」
「今日の晩ご飯何?」
「んー、そうやなぁ。贅沢にステーキにするか」
「「やったー!」」
ステーキで喜ぶとか、まだまだ仔どもだねぇ。毎日肉食ってるだろうに。
「ニャオー、こっちに横穴があるよー」
呼ばれて振り返れば、紫輝がぽっかり空いた横穴の隣に座ってた。ノザリエさんが警戒しながら奥を覗き込んでる。もしかして、あの奥にレアリアンドさん達いるのかな?
「橙地、紫輝とノザリエさんと一緒に横穴を調べてもらえる? ここにおる人達の中にレアリアンドさん達は見当たらんし、もっと奥に閉じ込められとるかもしれん」
向かってきたサルヴァロンに刀の切っ先を向けながら言った。衝撃があったから目を向けると、串刺しになったサルヴァロンが身悶えてたから、刀を振り下ろしてすっぽ抜いて、首を斬り落とした。その顔の至近距離はキツい。
「わかった。けどニャオ達は大丈夫か?」
「俺がいるから大丈夫だって。キイナ! ランリ! サルヴァロンは俺達とニャオでやっつけるから、お前らは人間達頼むぞ!」
「「はーい」」
「すぐ終わらせるから待っててねー」
「人間のみんなー、ちょっとだけ我慢ねー」
緑織と青蕾か言えば、身を寄せ合ってる女の人達が何度も頷いた。その左右に、黄菜と藍里がぴったりくっつく。近づく奴には容赦なしって顔しちゃってまあ、頼もしい。
「橙地も紫輝も気をつけて。ノザリエさんを頼むで」
「任せろ!」
「頑張る」
意気込んだ橙地がノザリエさんを促して横穴に入っていく。こっちを振り返ったノザリエさんは、お礼をするみたいに頭を下げて、橙地を追っていった。
「さて、お前達。やることはわかっちょるな?」
しんがりを務めた紫輝の背中が見えなくなってから、赤嶺達に聞いた。
「うん、ちゃんとわかってる!」
「サルヴァロン達をやっつけて、人間達を地上に帰す!」
「シキ達が帰ってくるまでに終わらせる!」
赤嶺、緑織、青蕾が返す。
「手加減はいらん。1匹残らずやっつけぇ!」
「「「おー!」」」
軍配変わりに刀を振れば、仔ドラゴン達がサルヴァロンの群れに突進していった。勝機は九割九分こっちにある。油断さえしなければ手こずる相手じゃない。
刀を握り直して、黄菜に狙いを定めていたサルヴァロンの首を斬り落とす。そこここから断末魔が上がる。難しいことじゃない。
大丈夫。私達ならやれる。




